キンゼイ報告
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キンゼイ報告(きんぜいほうこく、Kinsey Reports)とは、アメリカの性科学者・昆虫学者、アルフレッド・キンゼイ(Alfred Kinsey)が発表した、人間の性行動に関する報告書。
1948年に発表された『Sexual Behavior in the Human Male』(邦題: 『人間に於ける男性の性行為』)と、1953年に発表された『Sexual Behavior in the Human Female』(邦題: 『人間に於ける女性の性行為』)から成る。
キンゼイ報告を大きく取り上げたのは学会の外のマスコミであった。その結果、革新・保守、左翼・右翼が社会道徳の観点から擁護派、批判派に分かれて論争を繰り返した。擁護派はキンゼイ報告に対する批判は保守・右翼からのみの道徳的反発であるかのように主張する傾向にあった。
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[編集] 性行為に関する報告
[編集] 同性愛
キンゼイの報告によると、成年男性の46%が両方の性別の人に性的に「反応した」ことが分かった。また、37%は少なくとも1度以上の同性愛の経験を持っていた。二十歳から三十五歳の白人男性の11.6%は同性愛と異性愛の両方の経験者であった。さらにアメリカの男性の10%が「16歳と55歳の間の少なくとも3年間多かれ少なかれ、専ら同性愛だった」という調査結果がある。二十歳から三十五歳の女性の2~6%は同性愛と異性愛の両方の経験者であり、1~3%は専ら同性愛者であった。
[編集] 手淫
女性の62%、男性の92%は手淫の経験がある。
[編集] 既婚者の性交
既婚者の性交の頻度は、既婚女性のアンケートによると、十代の場合一週間に2.8回であり、三十歳未満では一週間に2.2回、五十歳未満では一週間に1.0回であった。
[編集] 性的虐待
4441人の調査対象女性のうち24%が子供時代に性的虐待を受けており、近親者による性的虐待の体験率は5.5%、父親または義理の父親によるものは1.0%であるという報告がなされ、一時パニックとなった。
[編集] 不倫
全ての結婚した男性の約50%は、結婚生活の間いくらかの婚外の経験があった。女性の26%は婚外交渉を持っていた。
[編集] サドマゾ
女性の12%、男性の22%は、 サドマゾティスティックな話に対する性愛の応答を持った。女性の55%、男性の50%はかまれることに性愛的に応答したと報告する。
[編集] 批判
[編集] 方法論問題
キンゼイ報告は、方法論問題が批判された。「ランダム」であるべきサンプルの内の25%は刑務所(当時から刑務所内での強姦は存在した)にいたことのある前科者、5%は男娼であり、また、タブーである性行為を赤の他人に面接で打ち明けること恥じない人間をサンプルにすれば当然そのようなタブー行為を経験したものが高い割合で存在するのではないか、という意見はレポートの発表当時から学会では存在した。
社会的タブーに関する情報を面接によってサンプリングすること自体が、学術的客観性に欠け、そのようにして集められたサンプルには全体のポピュレーションの傾向を推計する上で何の統計的な意義はないとの批判も、レポートの発表年の1948年にアメリカ統計会(the American Statistical Association)によって発表されている。その統計会のメンバーの一人で著名な統計学者のジョン・タキー(JohnTukey)は「ランダムに集められた3サンプルの方がキンズリーによって集められた300のサンプルよりもマシである」と述べている。タブーに関わる情報を面接によって集めることによる問題点は当時の著名な心理学者(代表例、アブラハム・マズロー)によっても指摘されていた。
これらの批判に対する応答において、キンゼイの後継者は、その意味された汚染のデータを「クリアにする」のに数年を費やした。例えば、基礎的サンプルにおける囚人数から得られた材料全てを除去するなどである。1979年にその結果は示されたがポール・ゲバード(en:Paul Gebhard)の結論(「The Kinsey Data: Marginal Tabulations of the 1938-1963 Interviews Conducted by the Institute for Sex Research」)として、驚いたことに正見積書のうちのいずれもキンゼイのバイアスによって影響を受けなかった。性の話題の討論において、囚人、男娼、及び好意的に参加した人々は同じ統計の傾向があったのである。ただし面接によってサンプルを収集すると、タブーの問題を赤の他人に話すことを躊躇しない人間だけがサンプルになるという根本問題は解決されていない。
だが、1万人以上というサンプルを前にしては批判は迫力を欠いていた。キンゼイを叩いたところで19世紀末以降多くの影響力を持ったヴィクトリアニズムがいかに形骸化しているかを暴露するには十分な調査であった。
[編集] 中立性
最近は彼が両性愛のマゾであり学生、助手、愛人、妻との集団性交を薦めていたこと、親から受けた厳格なキリスト教の教育に反発していたこと。さらに統計手法に通じていたにもかかわらず、キンゼイ報告の内訳がアメリカ社会を反映するものでないということを明確にせず、その後もキンゼイ報告に関するこのような初歩的な誤解を訂正する発言が一切無かったことなどから、キンゼイの研究姿勢そのものの客観性・中立性が信用できないとの意見も存在する。(James H. Jones's biography, Alfred C. Kinsey: A Public/Private Life)
[編集] 映画化
2004年、キンゼイの生涯を描いた映画が製作され、「愛についてのキンゼイ・レポート」の題名で2005年8月に日本で公開された。キンゼイを演じたのは、「スター・ウォーズ」シリーズや「バットマン ビギンズ」に出演しているリーアム・ニーソン。リベラルの視点からの脚本で、キンゼイ報告の問題点、キンゼイの私生活と彼の研究姿勢の客観性の問題について一切触れていないとの批判も存在する。
[編集] 外部リンク
- キンゼイ報告女性篇
- child abuse(英語。キンゼイ報告を含む性的虐待の発生率調査の数々)