クォークグルーオンプラズマ
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クォークグルーオンプラズマ (Quark-Gluon Plasma) とは、高温・高密度状態において存在すると予想されているクォーク及びグルーオンからなるプラズマ状態である。
[編集] 概要
量子色力学による理論計算によると、核子の密度が低い場合は 150~200MeV (約1012K)、ゼロ温度では通常の核子の密度の10倍程度の高密度状態では、多体効果によりその系はクォークとグルーオンからなるガス状態になると予想されている。
クォークグルーオンプラズマはビッグバン後の初期宇宙(高温状態)、あるいは中性子星の内部で実現されていると考えられている。これらをそのまま地球上で再現することは不可能で、高エネルギーの重イオンによる衝突で瞬間的に高温高圧を発生させ、実験的にクォークグルーオンプラズマを作ることが出来ると考えられている。
ブルックヘブン国立研究所の巨大加速器RHICでの実験結果は、様々な新現象を明らかにしたが、それらがQGPで説明できるという決定的な証拠はまだない。これらの新現象はQGPが完全流体であると仮定した模型計算と矛盾しないとされている。 これまでは、いわゆるプラズマと同様なある程度粘性をもった流体では無いかと憶測されていた。 今後のRHICの実験および次期計画であるLHCでのALICE実験でのさらなる研究によって量子色力学に基づく理解を得ることが期待される。
[編集] 高エネルギー重イオン衝突実験
これらの実験は1980年代から行われている。
- アメリカ、ローレンス・バークレー国立研究所 (LBL) のベバトロン (英語: Bevatron)
- ドイツ、重イオン研究所 (GSI) の重イオン・シンクロトロン (独語: SchwerIonen-Synchrotron, SIS)
- アメリカ、ブルックヘブン研究所 (BNL) の強集束シンクロトロン (英語: Alternating Gradient Synchrotron, AGS)
- ヨーロッパ、CERNのスーパー陽子シンクロトロン (英語: Super Proton Synchrotron, SPS)
- アメリカ、BNLの相対論的重イオン衝突型加速器 (英語: Relativistic Heavy Ion Collider, RHIC)
を用いて行われており、現在もGSI、CERN、BNLで実験が行われている。
また、次期計画として
- ヨーロッパ、CERNのラージ・ハドロン・コライダー(英語: Large Hadron Collider, LHC)
を用いた実験が2007年開始を目標に準備中である。
[編集] 外部リンク
- QGP探索実験に参加している研究室へのリンク
- 「完全な流体の発見」に関するプレスレポート