クリストファー・ラングトン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クリストファー・ラングトン(Christopher Langton、1949年 - )は、人工生命の研究で知られる情報工学者。1980年代後半、「Artificial Life(人工生命)」という用語を生み出し、"International Conference on the Synthesis and Simulation of Living Systems"(通称、Artificial Life I)という国際会議を1987年にロスアラモス国立研究所で開催した。
ミシガン大学を卒業後、ラングトンはラングトンのアリとラングトンのループという単純な人工生命シミュレーションを作るとともに、セル・オートマトンの複雑さと計算可能性の無次元の尺度であるλ(ラムダ)パラメータを考案した。2状態、1-r 近傍、1次元のセル・オートマトンでのその値はほぼ 0.5 となる。ライフゲームのような 2状態、ムーア近傍、2次元のセル・オートマトンでは、0.273 となる。このλパラメータの研究から「カオスの縁」という用語が生まれた。
ラングトンは、Homer Kelly Mysteries などの著作で知られる作家ジェーン・ラングトンの長男である。
[編集] カオスの縁
カオスの縁(Edge of Chaos)という用語は、1990年にラングトンが生み出した。これは、セル・オートマトン(CA)の振る舞いを評価する変数 λ(ラムダ)のある範囲を指したものであった。λ が変化すると、セル・オートマトンは振る舞いの相転移を示す。ラングトンは、λがある微小な範囲にあるときにセル・オートマトンがチューリングマシンと匹敵する計算能力を発揮することを発見した。同じころ物理学者 James P. Crutchfield らは、ほぼ同様の概念を「カオスの開始; onset of chaos」と名づけた。
この用語は科学界全体(物理学、生物学、経済学、社会学など)で比喩として使われるようになり、秩序と完全な無作為性(カオス)との中間で複雑性が最大となるようにシステムを運用する状態を指すようになった。しかし、この概念の一般性と重要性については Melanie Mitchell らが疑問を呈している。ビジネスにおいてもこの用語が本来の意味とはかけ離れた状況を指すのに借用あるいは誤用されている。
スチュアート・カウフマンは進化の数学的モデルを研究し、カオスの縁近辺で進化速度が最大になるとした。
[編集] 参考文献
- Christopher G. Langton. "Computation at the edge of chaos". Physica D, 42, 1990年.
- J. P. Crutchfield and K. Young, "Computation at the Onset of Chaos", in Entropy, Complexity, and the Physics of Information, W. Zurek, editor, SFI Studies in the Sciences of Complexity, VIII, Addison-Wesley, Reading, Massachusetts (1990) pp. 223-269.
- Melanie Mitchell, Peter T. Hraber, and James P. Crutchfield. Revisiting the edge of chaos: Evolving cellular automata to perform computations. Complex Systems, 7:89--130, 1993.
- Melanie Mitchell, James P. Crutchfield and Peter T. Hraber. Dynamics, Computation, and the "Edge of Chaos": A Re-Examination
- Origins of Order: Self-Organization and Selection in Evolution by Stuart Kauffman
[編集] 外部リンク
- Explanation of Langton's Lambda
- The Swarm development group
- "The Edge of Chaos" - 批判
- ちえの和WEBページ:コンピュータ偉人伝:クリストファー・ラングトン
カテゴリ: 1949年生 | 情報工学者 | コンピュータ関連のスタブ項目