クローズド・サークル (推理小説)
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クローズド・サークル(closed circle)はミステリ用語としては、何らかの事情で外界との往来、連絡が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品を指す。過去の代表例から、「吹雪の山荘もの」「嵐の孤島もの」の様にも呼ばれる。アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」が代表作。
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[編集] 概要
もともとは、「犯人は読者が疑い得る人物でなくてはいけない」という推理小説のルールを、より厳密に運用するために生み出されたジャンルである。クローズド・サークルの内外の往来は断たれているのだから、その閉じた輪の中で起こった事件の犯人は、輪の中に閉じ込められた人々の中に絶対にいなくてはならないことになる。犯人にだけ使用可能な秘密のルートがあったというようなトリックは、よほど巧妙に用いるのでなければ多くの場合不評をこうむることになる。
また、現実的な警察機関の介入、組織的捜査や科学的捜査を排して、純粋にロジックによる犯人当ての面白みを描ける利点もあって、いわゆる「本格派」志向の作者や読者から好まれる傾向がある。
[編集] 分類
クローズド・サークルで発生する事件は多くの場合、計画的な犯行である。
やはり多くの場合で、クローズド・サークルの形成まで犯人の計画、あるいは予想によってなされたものである。犯人はなぜそのような状況――限られた容疑者の中に自分も含まれねばならず、また犯行後逃走することもままならない状況下で、ことにおよんだか? もこうしたジャンルの重要な要素となる。
クローズド・サークルが予期せぬ形で形成されたために、犯人が犯行を思い立つというケースも少なくはない。その場合にも、その状況がどうして犯人にとって好都合であったのか? が問われることになる。
計画的に犯行におよんだ後、あるいは計画的ではなく衝動的に犯行におよんでしまった後、予期せずクローズド・サークルが形成されてしまう、というケースの場合、その後の犯人の行動が重要となり、多くの作品の場合それは「犯人の不可解な行動」としてあらわれることになる。
[編集] 種類
- 人為的なクローズド・サークル
- 「下山するために必ず通らなくてはいけないつり橋を落としてしまう」「一台しかない自動車のタイヤをパンクさせてしまう」など。
- 多くの場合こうしたクローズド・サークルをつくりだすのは犯人自身であるが、他者が別の思惑があってつくりだした状況を犯人が利用するケースもある。
- 「決まった日時まで迎えが来ないことになっている無人島に登場人物たちを誘い出す」などの方法もあるが、その場合、犯人としてまず疑われるのがそうしたツアー、イベントを最初に言い出した人物となってしまい、作者としては読者の推理をどう外すかが問われることにもなる。
- 災害などによるクローズド・サークル
- 有名な「吹雪の山荘」や「嵐の孤島」など。
- 犯人にとっても予想外に形成されてしまったクローズド・サークルである場合が多い。
- 「山火事に追い詰められた山荘」や「地震によって倒壊したビルの地下室」など、より深刻な状況下で、「自分の命も危険なその状況でなぜその犯行におよばなくてはいけなかったか?」 殺人事件であれば、「そのままなら当然死ぬはずの人物をなぜあえて殺したのか?」などを問う作品も存在する。