ゲノムインプリンティング
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ゲノムインプリンティング (英語: genomic imprinting,稀にgenetic imprinting)は、遺伝的刷り込みとも言われる、遺伝子発現の制御の方法の一つである。 一般に哺乳類は父親と母親から同じ遺伝子を二つ(性染色体の場合は一つ)受け継ぐが、いくつかの遺伝子については片方の親から受け継いだ遺伝子のみが発現することが知られている。 このように遺伝子が両親のどちらからもらったか覚えていることをゲノムインプリンティングという。
[編集] ゲノムインプリンティングと疾患
一方の親から受け継いだ遺伝子だけが選択的に発現することは、利用できる遺伝子が一つしかないため受け継いだ遺伝子に欠陥があった場合にそのバックアップがなく、病気になってしまうことがある。 よく知られた例がPrader-Willi症候群であり、15番染色体にある遺伝子(セロトニン受容体かその近傍の遺伝子と考えられる)が父親由来の遺伝子のみが選択的に発現するため、父親の遺伝子に欠陥があった場合に(母親が正常な遺伝子をもっていても)精神遅滞や生殖器の発生異常等の障害をもって産まれる。
[編集] ゲノムインプリンティングの機構
ゲノムインプリンティングは分子生物学的な表現ではDNAのメチル化による転写調節とされている。 DNA配列自体には明らかな特徴がないため全ゲノム中でどの程度の遺伝子がこの作用をうけているのかは分かっておらず、現在知られているものはほぼ全て偶然発見された遺伝子である。