コボルト
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コボルト (Kobold, kobalt) はドイツの民間伝承に由来する醜い妖精、精霊である。 コーボルト、コボルドとも表記する。コボルトはドイツ語で邪な精霊を意味し、英語ではしばしばゴブリンと訳される。
最も一般的なイメージは、ときに手助けしてくれたりときにいたずらをするような家に住むこびとたちというものである。彼らは家事をしてくれたりもするが、住人の人間にいたずらをして遊んだりもする。もうひとつあるコボルトのイメージは、坑道や地下に住み、ノームにより近い姿である。
[編集] コバルトとの関係
コバルトは1737年 、ゲオルグ・ブラント(Georg Brandt、スウェーデン)により発見されたが、コバルトという名称と元素記号は、コボルトに由来する。コバルト鉱物は冶金が困難なため、16世紀頃のドイツでは、コーボルトが坑夫を困らせる為に魔法をかけて作った鉱物と信じられていたからである。
[編集] ファンタジーにおけるコボルト
コボルトは剣と魔法を題材としたファンタジーの小説やゲームにも登場する。『ダンジョンズ&ドラゴンズ』では、臆病だが残酷な、小柄で犬に似た頭部を持つ人型生物とされている。うろこを持ち、頭には角が生えており、爬虫類とされているが、犬のような外観という側面が強調された結果、その後に続いた多くのロールプレイングゲームで「体毛のある」犬のような人型生物という表現もされるようになった。
日本においてもこの姿で描かれることが多く、輸入物のロールプレイングゲーム『ウィザードリィ』シリーズにおいては、ファミコン移植版を担当した末弥純のイラストレーションで狗頭そのものであるように描かれ、このイメージが支配的になった。
コバルトの鉱物にまつわる伝承が反映されてか、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』では有能な鉱夫とされる。『ソード・ワールドRPG』などの背景世界であるフォーセリアにおいては銀を腐らせるという言い伝えを持ち、新ロードス島戦記においては、腐銀を釉薬に用いた陶磁器を交易品とする描写がある。『アルシャード』では、ミスリル(銀秘石)をコバルト(蒼魔石)に変えてしまう魔力を持つとされている。
ちなみにファンタジーのモンスターとしてのコボルトは、英語読みでコボル「ド」と表記されることが多い。ロールプレイングゲームが知られ始めた昭和末期にはロールプレイングゲームを紹介する書籍などにおいてコ「ポ」ルドという誤記も見られたが、周知が進むにつれ消えていった。
映画「帝都物語」では、地下鉄工事を妨害する鬼がトロッコに乗って地下鉄トンネル内に出現するが、大柄ではなく鋭い鉤爪のある猿のような姿であり、地下や坑道に住むコボルトまたはゴブリン(コボルトも含む英語での広義の「goblin」)のイメージから、そのような鬼の姿・生態が創作されたと思われる。