ジクワット
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ジクワット | |
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IUPAC名 | 6,7-ジヒドロジピリド[1,2-a:2',1'-c]ピラジンジイウムブロミド |
別名 | ジクワットジブロミド ダイコート 1,1'-エチレン-2,2'-ビピリジニウムジブロミド |
分子式 | C12H12N2Br2 |
分子量 | 344.05 g/mol |
CAS登録番号 | [85-00-7] |
形状 | 無色または黄色結晶 |
密度と相 | 1.2 g/cm3, 固体 |
融点 | 335 °C (分解) |
出典 | ICSC |
ジクワット (diquat) はビピリジニウム系に分類される非選択形除草剤の1つ。イギリスのプラント・プロテクション社が開発した。除草剤としての利用のほか、ジャガイモの収穫前の蔓枯らしにも使われることがある。原体がイギリスから輸入されて製剤化されている。英語読みにより、ダイコートと発音することもある。臭素塩であるためジクワットジブロミドとも呼ばれる。
土壌に付着すると直ちに活性を失い、木や根は枯らさないため、すぐに種をまいたり作物を植えることができる。
パラコートと同じくアルキルビピリジニウム塩に分類される。化合物としての名称は 1,1'-エチレン-2,2'-ビピリジニウムジブロミドである。
目次 |
[編集] 作用
散布により、植物体内に入ると NADPH という酵素との反応により活性酸素が生じ、細胞の遺伝子の核にある DNA を破壊し、植物を枯死させる。この酵素は動物にもあるため、同じ反応が起こる。
[編集] 毒性
劇物指定で毒性の強い薬剤である。人体中毒症状はパラコートに類似しており、肝腎機能障害、肺水腫へと進むが、パラコートで特徴的な肺線維症はほとんど見られない。一般に致死が早く、腎毒性が高い。
毒性はパラコートの約半分ともいわれている。同じように、特異な解毒剤はない。
パラコートと同じように、手袋形・靴下形感覚等の多発性神経症状を起こすほか、MPP+(シペルクワット)との化学構造の類似性から、パーキンソン病との関係も疑われている。
目立った反対運動が起こらないのは、パラコート程のシェアを持っていなかったことも関係していると思われる。
[編集] ジャガイモの収穫前使用
北海道などではジャガイモを収穫する際には機械で掘り起こすが、効率を良くするため、ジクワットを散布して蔓を枯らしてから行うことが多い。使用時期が早過ぎるとジャガイモ内に輪状斑を生じることがある。またトラクターで散布するため広範囲に霧状に舞うので、周囲の人や家畜にかからないよう細心の注意が必要である。
最近では安全のため日本の農薬メーカーが代替品の普通物(いわゆる毒物・劇物の指定を受けていないものをいう)の製剤を開発し、発売している。
[編集] 製剤
濃度 30% の液剤か、パラコートとの混合剤として販売されている。
- ジクワット30%
- レグロックス
- パラコートとの混合剤
- ウィドール(パラコート 3%、ジクワット 4%。生産中止)
- プリグロックス(パラコート 10%、ジクワット 14%。生産中止)
- プリグロックスL(パラコート 5%、ジクワット 7%。生産中止)
- マイゼット(プリグロックスLと内容は同じ。後にプリグロックスLに名称を統合した)