ジュディス・バトラー
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ジュディス・バトラー(Judith P. Butler, 1956年-)は、アメリカ人ポスト構造主義の思想家。フェミニズム、クイア理論、政治哲学、倫理学の領域に寄与している。カリフォルニア大学バークレー校の修辞学科と比較文学科の教授であり、比較文学科長を務めている。バトラーは、1984年にイェール大学で博士号を取得し、1987年に『欲望の主体――20世紀のフランスにおけるヘーゲル哲学の反応(Subjects of Desire: Hegelian Reflections in Twentieth-Century France)』として出版された。1980年後半、フェミニズムという言葉の一般的な定義に疑問を投げかけるために、西洋フェミニズム理論においてポスト構造主義的な業績を残した。近年の研究では、ユダヤ哲学に関心を持っている。
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[編集] 『ジェンダー・トラブル』
ミシェル・フーコーによって先鞭をつけられたジェンダーとセクシュアリティ研究を大胆に推し進め、バトラーの理論家としての地位を確立した書物である。
バトラーはジェンダーを文化的に規定された構築物だととらえ、生物学的な性(セックス)とは区別されるものと考える。さらに生物学的な性の概念も、文化的なジェンダーの規範によって重層的に規定されたものであり、文化的なジェンダーによって汚染されていない純粋な性というものはありえないと主張する。すなわち、生物学的な定義だとみなされている性の区別は、文化的なジェンダーのパフォーマンスによって構築されるものだとバトラーは述べる。それゆえ、性的な規範は文化のレヴェルでなされる撹乱行為(サブヴァージョン)によって変化することが可能なものだとされる。
バトラーの以上のような主張は、女性に生得的で固有な権利を確立しようとしてきた旧来のフェミニズムに再考を迫るものであった。バトラーによれば、性差は文化的に構築されるものであって、けっして生物学的に規定されるものではないからである。代わりにバトラーが提案するのは、多様なジェンダー・パフォーマンスによって男/女という抑圧的な二項対立そのものを脱構築していくという、撹乱的な性的実践である。
[編集] 著作
[編集] 単著
- Subjects of Desire: Hegelian Reflections in Twentieth-Century France, (Columbia University Press, 1987).
- Gender Trouble: Feminism and the Subversion of Identity, (Routledge, 1990).(竹村和子訳『ジェンダー・トラブル――フェミニズムとアイデンティティの攪乱』青土社, 1999年)
- Bodies that Matter: On the Discursive Limits of "Sex", (Routledge, 1993).
- Excitable Speech: A Politics of the Performative, (Routledge, 1997).(竹村和子訳『触発する言葉――言語・権力・行為体』岩波書店, 2004年)
- The Psychic Life of Power: Theories in Subjection, (Stanford University Press, 1997).
- Antigone's Claim: Kinship between Life & Death, (Columbia University Press, 2000).(竹村和子訳『アンティゴネーの主張――問い直される親族関係』青土社, 2002年)
- Giving an Account of Oneself: A Critique of Ethical Violence, (Koninklijke Van Gorcum, 2003).
- Precarious Life: the Powers of Mourning and Violence, (Verso, 2004).
- Undoing Gender, (Routledge, 2004).
[編集] 共著
- Contingency, Hegemony, Universality: Contemporary Dialogues on the Left, with Ernesto Laclau and Slavoj Zizek, (Verso, 2000).(竹村和子・村山敏勝訳『偶発性・ヘゲモニー・普遍性――新しい対抗政治への対話』青土社, 2002年)
[編集] 共編著
- Feminists Theorize the Political, co-edited with Joan W. Scott, (Routledge, 1992).
- What's Left of Theory?: New Work on the Politics of Literary Theory, co-edited with John Guillory and Kendall Thomas, (Routledge, 2000).
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