スカイダイビング
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スカイダイビング (Skydiving, Parachuting) は航空機などで空へ昇り地上へ落下するスカイスポーツ (競技)。
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[編集] 概説
航空機で高度1000m-4000m程度まで上昇後に跳び出し(EXIT)一定の高度まで降下(自由落下、フリーフォール)したらパラシュートを開いて着地する。
一般的にはスピード感やスリルを楽しむレジャーと思われがちで、日本のテレビではバラエティ番組の罰ゲームのイメージが定着しているが、実際には落下により発生する風を利用して身体をコントロールしたり、パラシュートの操縦技術を競うスカイスポーツの一種である。
スポーツとしては、1952年にユーゴスラビアで第1回世界選手権が行われたのが始まりと言われている。現在では各国、各地方での大会の他、ワールドカップも行われている。
また、第2のオリンピックと言われるワールドゲームズの一種目「パラシューティング」として競技も行われており、日本人女性選手もフリースタイル競技で銀、銅メダルを獲得している。
[編集] 一般的なスカイダイビングのイメージとその実際
命綱もなく速いスピードで落下するさまと、もしパラシュートが開かず地面に叩きつけられたら、という想像が未経験者の恐怖をたいへん煽るスポーツである。初心者はインストラクターに体を固定して2人でとぶ「タンデムジャンプ」なら恐怖感を和らげてスカイダイビングに慣れることができる。
例えば、体重60kgの人が高度3000mから落下したと仮定した場合、重力加速度を9.8m/s2とすると、地上に打ち付けられるときの速さはおよそ毎時871㎞である。ただし、空気抵抗などは無視して計算している。実際は空気抵抗と重力加速度が釣り合い、速度は時速200キロメートル程度で安定する(ベリーフライ(俯せの体勢)の場合。フリーフライと呼ばれる体勢では、より空気抵抗が少なくなるため時速300キロメートル程度になる場合もある)。
しかし、空中では自分の落下速度との比較対象となる建物等が周囲にないため、強烈な風圧を感じるもののスピード感はほとんど無く、体験者は「強い風に乗って空に浮かんでいる感じ」という感想を漏らすことが多い。
ちなみに、パラシュートが開く瞬間に上昇すると考えている向きも多いが、エアカメラマンが落下しながらパラシュートによって減速するスカイダイバーを映す映像による錯覚であり、実際に上昇することはない。
一般には人間が自由落下すると自然に頭部が下なるように思われがちだが、実際には意図的に姿勢をコントロールしない限り仰向けで腰部を折り曲げた状態で水平方向に回転しながら落下する。頭部を下にした自由落下はフリーフライを習得する際の重要項目にもなっている。
[編集] 事故について
パラシュートが働かなければ、ほぼ間違いなく死亡事故となるため、通常はパラシュートはメイン(主傘)とリザーブ(予備傘)の2つを装備するなど、器具には幾つも安全対策が施されている。たとえ上空で意識を失ったとしても、自動的に危険な高度を察知してパラシュートを開く装置もある。また、リザーブパラシュートは有資格者がその使用の有無に関わらず一定期間毎に点検する等の制度も整備されている。
実際にはパラシュートを開こうとしたのに全く開かなかったと言う事故はほとんど発生しないが、パラシュートが絡まって墜落したり、着地時に激しく転倒して負傷するなどの事故は発生している。しかしその原因としては、不注意や技量の未熟な者が無謀にも高度なテクニックに挑戦するなど、気をつければ防ぐことの出来る事故がほとんどである。
事故率については総ジャンプ数の把握が困難なため正確な統計がないが(一説には重傷を負う事故が1000回に1件、死亡事故は5万回に1件程度といわれている)、米国内での死亡数が年間30名前後である。世界での数値としては年に60名程度の死亡が把握されている。一般に被訓練生の死亡事故は少ない。一旦事故が起きた場合激しい衝撃が身体に加わり脊髄損傷など重大な身体障害を受ける可能性が高い。
[編集] 競技について
- アキュレシーランディング(精度着地)
- パラシュートの操縦精度を競う競技。競技中の風の状況を読みながらパラシュートをコントロールして地上に置いたターゲットにどれだけ近く着地できるかを競う。スカイダイビング競技の中では最古参の部類に入る。ターゲットの中心はデッドセンターと呼ばれる直径3cmの円であり、一般的には靴の踵でそこにタッチすることを目指す。デッドセンターを踏めれば、計測は0cmとなる。世界大会レベルではデッドセンターを踏めるのは当然のスキルであり、順位は誰が先にデッドセンターをはずすかという争いとなる事も多い。
- フォーメーションスカイダイビング
- 4~16人のチームで一定の時間内で幾つの隊形(フォーメーション)を作れるか、そのスピードと正確さを競う。競技は、通常試合の前日に競技課題表の中からくじ引き方式により、1ラウンドの課題を決める。その組合せと順序は数十万通りとなり、大会の度に各チームは戦術を練る必要がある。採点はヘルメットにビデオカメラを装着したスカイダイバーが競技者と一緒に降下して撮影した映像で審判が判定する。このカメラマンはチームの一員として構成され、その撮影テクニックも採点に影響するため、空中での撮影技術も競技の重要な要素となる。
- ちなみに、フォーメーションスカイダイビング競技は、スポーツの世界では珍しく男女の区別なく行われる競技で、男女混成のチームも珍しくない。
- フリースタイル
- 演技者とカメラマンのペアでフリーフォール中に規定演技や自由演技を行い、その技術や正確さ、芸術性を競う空中の新体操かフィギュアスケートとも言える競技。
- スカイサーフィン
- スケートボード状の板(サーフボード)を足部に装着し、サーフィンのように空中を滑空する競技。回転や移動など、フリースタイル同様の技術を求められる。
- フリーフライ
- 比較的新しい競技。フリースタイルと違い、個々人の回転や移動といったテクニックではなく、二人組みのペアがお互いの足と足を合わせるなど特定の「形」を演じ、その速さと正確さを競う。単純に垂直姿勢(椅子に座ったような姿勢、立った姿勢、逆さまの姿勢)で自由落下するだけの遊びもフリーフライに含まれる。
- キャノピーフォーメーション
- 自由落下ではなく、パラシュートを開いた状態で特定の「形」を演じる競技。わざと失速して素早く移動したり、足で相棒のパラシュートにしがみつくなどのテクニックを使用する。失敗するとパラシュートが絡まる恐れがあり、危険度が高い。
- スープ(SWOOP)ランディング
- 小型の高速パラシュートで、着地寸前に勢いをつけて地上すれすれを水平に滑空する着地技術。上級者は数十メートルもの距離を滑空する。