ゼロの焦点
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『ゼロの焦点』(ぜろのしょうてん)は、松本清張の長編推理小説。1958年3月号から1960年1月まで『宝石』に連載し、光文社から刊行された。
昭和33年の12月。結婚したばかりの妻を残し、男が失踪。残された妻はその後を追い、北陸へ旅立つが、そこで見たものは夫の隠された一面と、そして時代に翻弄された女たちの、悲しい運命だった。
松本清張の多くの作品と同様、社会情勢が事件の背景・動機として組み込まれている。
清張自身は、代表作のひとつであると考えていた。
目次 |
[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
板根禎子は26歳。広告代理店に勤める鵜原憲一と見合い結婚した。紅葉が盛りを迎えている信州から木曾を巡る新婚旅行を終えた10日後、憲一は、仕事の引継ぎをしてくると言って金沢へ旅立つ。 しかし、予定を過ぎても帰京しない憲一。禎子のもとにもたらされたのは、憲一が北陸で行方不明になったという、勤務先からの知らせであった。 急遽金沢へ向かう禎子。憲一の後任である本多の協力を得つつ、憲一の行方を追うが、その過程で彼女は、夫の隠された生活を知ることになる。
[編集] 主な登場人物
- 鵜原禎子(旧姓板根):本作品の主人公。新婚後間もなく夫が失踪し、行方を追う。
- 鵜原憲一:禎子の夫。広告代理店「A広告社」の北陸支店元主任。引継ぎのために出張し、そのまま失踪。
- 本多良雄:憲一の同僚。「A広告社」北陸支店主任(憲一の後任者)。禎子に協力し、憲一の行方を追う。
- 鵜原宗太郎:憲一の兄。
- 室田儀作:「室田耐火煉瓦株式会社」代表。
- 室田佐知子:室田儀作の妻。
- 田沼久子:室田儀作の部下。
- 曽根益三郎:田沼久子の内縁の夫。
[編集] 作品の背景
事件の背景に、日本が占領下にあった時期に、米兵相手に売春行為をしていた女性(作品のなかでは「パンパン」とも表現される)らの存在がある。彼女らが過去の忌まわしい経歴を隠そうとする必死の願望が、作品中で重要な意味を持ってくる。
ヒロインがろくに相手のことも知らぬまま見合い結婚することは、作品発表当時ではごくあたりまえの感覚であった。しかし、現代では受け入れがたい考えであり、当時の感覚を知らなければ作品そのものも奇異に感じられる。
[編集] 出版における問題点
新潮文庫版のカバー裏表紙に記載されたあらすじに、物語の過半にいたって明かされる事実が書き込まれてしまっており、ネタバレが惜しまれる。