テクニカルエンジニア (エンベデッドシステム)
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テクニカルエンジニア (エンベデッドシステム)(略称エンベデッド、もしくはES)とは、情報処理技術者試験の一区分であるテクニカルエンジニア (エンベデッドシステム)試験に合格した者に認定される資格である。
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[編集] 概要
この資格は、システムエンジニアの中でも主にエンベデッドシステムの設計開発担当者を対象としている。 合格率は例年ほぼ10~13%程度と、情報処理試験の中ではやや高い。この区分は高度情報処理技術者に含まれている。 この区分は1996年にマイコン応用システムエンジニア試験として登場した。その後2001年に現在の名称に変更された。試験導入時より受験制限は一切ない。
組み込みシステムの分野は、国内産業に対する重要度や技術者の需要が年々上昇しているにも関わらず、職業訓練や資格、スキルパスの策定などの面での整備が遅れていることから、既存の数少ない公的資格として注目を集めている。 (情報処理試験の中で受験者数が増加傾向にあるのは、情報セキュリティアドミニストレータと当試験のみである)。
[編集] 試験
例年、4月の第3日曜日に春期情報処理技術者試験の一区分として行われる。
午前試験は多岐選択式、午後試験は記述式と論述式(事例解析)に分かれている。
[編集] 午前
マークシート式で55問出題され、全問解答しなければならない。エンベデッドシステムを重視する区分だけに、アセンブラやハードウェア、半導体素子などの知識を問う問題が多い。
[編集] 午後I
4題出題される。そのうち3題に解答しなければならない。ハードウェアに関する問題が2題、ソフトウェアに関する問題が2題である。そのうち2題(例年、ハード・ソフト1題ずつ)は必須問題として全受験生が解答しなればならない問題である。あとの2問から1題を選択して解答する。試験時間は90分であり、時間的余裕はまずない。
[編集] 午後II
2題出題され、そのうち1題を選択して解く。エンベデッドシステム製品の設計開発に関する問題が出題される。実際の製品に即した問題が出ることが多く、問題を解くのが楽しいとまで言われるほどである。
[編集] 試験の評価
情報処理技術者試験の中ではハードウェア知識や回路素子などが重点的に出題される唯一の区分である。そのためか理工系、しかも電気電子やメカトロニクスに関する教育を受けた者しか受験しないと言われており、それを実証するかのように情報処理試験の中では受験生の数が最も少ない区分である。また高度になればなるほど文系が有利だと囁かれる情報処理技術者試験の中で、理工系以外お断りとも言えるこの区分は、理系SEの間で人気が高まっている。
その一方、試験内容が実態に合っていないという批判も多い。知識だけを問う午前試験に関しては「知識の整理に有効」と評価する人もいるが、明らかにエンベデッドと関係のない出題も多い。午後I試験は非常に悪評が高い。問題の内容は、あるシステムの説明を読んで、設問に答えるというものである。その説明は意図的に分かり難くしており、分かり難くした説明から出題者の出題意図を推測するだけの問題になっている。実際の現場では、分かり難い仕様書は仕様書を書いた担当者と話し合うのが普通であり、実務の何を想定しているのか意味不明である。さらに経験豊富な技術者ほど多くの実現方法を思いつくのでかえって混乱しやすいが、問題文の出来が悪くて出題者の意図を絞り込むのが難しいという意見もある。しかも解答時間が無意味に少なく「問題文の速読試験にしかなっていない」と揶揄する声も多い。午後II試験も午後I試験と似たような内容であり、問題文が午後Iよりも長く時間も十分にあるという点が異なるだけである。以上のことから、この試験の有効性を疑問視する人が多い。