ニコラウス・クザーヌス
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ニコラウス・クザーヌス (Nicolaus Cusanus、1401年-1464年11月8日)は、ドイツの哲学者・数学者・枢機卿。
ドイツのモーゼル河畔のクースに生まれる。 ハイデルベルク大学で学び、パドヴァ大学で教会法の博士号を取得。さらにケルン大学で偽ディオニシウス・アレオパギタらの思想に触れる。その後1430年司祭に叙階され、バーゼル公会議(フィレンツェ公会議)では指導的な立場で活躍、高名を得る。東西教会の和解のためにも奔走し、教皇使節としてコンスタンティノープルを訪問。1448年に枢機卿、1450年ブリクセン大司教。1464年トーディにて死去。彼の生涯は教会政治家としての実践と、思想家としての理論が融合した類い希なものであった。
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[編集] 思想
クザーヌスは「知ある無知」や「反対の一致」などという独創的な思想を唱えた。クザーヌスによれば神の本質は、あらゆる対立の統一=反対者の一致である。無限の中では極大と極小(神と被造物)が一致する。すべての被造物は神の映しであり、それぞれの独自な個性を持ちながらも、相互に調和している。中でも人間は自覚的に神を映し出す優れた存在であり、認識の最終段階においては神との合一が可能であるという。
彼の思索は中世の混沌のなかから近代的思考を準備したと高く評価されている。 また、カール・ヤスパースや西田幾多郎など後生にも多大な影響を与えたと言われている。生誕600年を期に日本でも注目が高まり、研究が進んでいる。
[編集] 主要著作
- De concordantia catholica
- 普遍的和合について(カトリック的和合について)
- De docta ignorantia
- 学識ある無知について
- De filiatione dei
- 神の子であることについて
- De dato patris luminum
- 光の父の贈りもの
- De visione dei
- 神を見ることについて
- Trialogus de possest
- 可能現実存在
- Directio speculantis, seu De non aliud
- 観察者の指針,すなわち非他なるものについて
- Complementum theologicum
- 神学綱要
- De venatione sapientiae
- 智慧の狩猟について
[編集] 邦訳一覧
- 『知ある無知』(De docta ignorantia,1440年)岩崎・大出訳、創文社
- 『隠れたる神についての対話』(De dep abscondito,1445年)
- 『神の探求について』(De quaerendo Deum,1445年)
- 『神の子であることについて』(De filiatione Dei,1445年)大出・坂本訳、創文社
- 『可能現実存在』(De possest,1460年)大出・八巻訳、国文社 1987年
- 『非他なるもの』(De non aliud,1462年)松山康国訳:『ドイツ神秘主義叢書7』創文社 1992年
- 『創造についての対話』(De Genesi,1446年)
- 『知恵に関する無学者考』(Idiota de sapientia,1450年)
- 『信仰の平和』(De pace fidei,1453年)
- 『テオリアの最高段階について』(De apice theoriae,1463年):上智大学中世思想研究所監修/『中世思想原典集成17 中世末期の神秘思想』平凡社 1992年掲載
- 『光の父の贈りもの』(De dato patris luminum,1445年)/大出・高岡訳、国文社 1993年
- 『神の子であることについて』『神を見ることについて』(De visione Dei,1453年)
- 『観想の極地について』坂本尭訳/『知恵の狩猟について』(De venatione sapientiae,1463年)酒井・岩田訳:『キリスト教神秘主義著作集10 クザーヌス』教文館 2000年掲載
- 『神の子であることについて』『神を見ることについて』(De visione Dei,1453年)/『観想の極地について』坂本尭訳/『知恵の狩猟について』(De venatione sapientiae,1463年)坂本・岩田訳:『キリスト教神秘主義著作集10 クザーヌス』教文館 2000年掲載
- 『神を観ることについて』八巻和彦訳、岩波文庫 2001年(ほかに、説教と書簡を一つずつ掲載)
- 『神学綱要』(Compendium,1463年)大出・野沢訳、国文社 2002年