ノープリウス
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[編集] 外見
ノープリウス(Nauplius)を見るための最も簡単な方法は、多分ブラインシュリンプ、あるいはシーモンキーを飼育することである。これらはいずれも甲殻綱鰓脚亜綱無甲目に属するアルテミア Artemiaのことであるが、飼育魚の餌用あるいは愛玩用として市販されている。乾燥状態の卵を適度な塩水に入れれば、一晩で孵化して赤っぽい色の幼生が多数遊泳するのが見られる。この幼生がノープリウスである。
幼生をよく見れば、小さな腕を動かして泳いでいることが分かる。顕微鏡で観察すれば、先端が幅広い体に二対の腕が伸びており、それらの真ん中に一つだけの眼があることが観察できる。二対の腕のうちの前方のものは第一触角で、単独の棒状、二番目が第二触角で、中途で二分している。また、体の中ほどにはもう一対の付属肢があるが、これは大顎である。つまり、ノープリウス幼生は三対の付属肢だけをもっている。
飼育を続ければ、幼生の体は次第に長くなり、大顎の後方に次第に新たな付属肢が形成されて行く。
[編集] 一般論
ノープリウス(ノウプリウス、あるいはナウプリウスと表記される場合もある)幼生は、甲殻類の最も基本的な幼生の姿である。分類群によってその外見はやや異なるが、たった三対の付属肢のみを持つ。体は楕円形やこん棒状等さまざまであるが、前方にまず枝分かれのない第一触角、その次に二枝型の第二触角、体中央より後ろの側面にもう一対の付属肢があり、これは大顎である。また体前方の中央に一個の単眼だけがある。この眼をノープリウス眼(Naupliar eye)という。また、はっきりした体節は見られない。
この形は、甲殻類の成体で言えば頭部の前半分に当たる。成体の頭部では、この後ろに小顎が二対あり、それに続いて胸部の体節が並んでいる。
この姿から、発生が進むにしたがって次第に体節と付属肢を増加させる。ノープリウス幼生の体の後半に付属肢のもと(原基)が形成される段階をメタノープリウスという。それ以降はそれぞれの分類群によって独特の経過を経て発生が進む。
また、多くの群では一対の複眼を発達させるが、ノープリウス眼を終生持つものもある。ケンミジンコ・カイミジンコなどはノープリウス眼のみで一生を過ごす。
甲殻類の多くの群では、ノープリウスより多くの付属肢を持つ状態の幼生が最初に現れる。それらの群は、より発生が進んだ状態で孵化するものと考えられる。つまり、ノープリウス幼生の時期を卵の中で過ごしてしまうのである。そのような群でも、卵内の発生を見れば、必ず二対の触角と大顎の原基だけが見られる時期があり、これを卵ノープリウスとよぶ。