ハイヌウェレ型神話
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ハイヌウェレ型神話(ハイヌウェレがたしんわ、ハイヌヴェレとも)とは、世界各地に見られる食物起源神話の型式の一つで、殺された神の死体から作物が生まれたとするものである。その名前は、神話学者のイェンゼンが、その典型例としたインドネシア・セラム島のヴェマーレ族の神話に登場する女神の名前から命名したものである。
ヴェマーレ族のハイヌウェレの神話は次のようなものである。ココヤシの花から生まれたハイヌウェレという少女は、様々な宝物を大便として排出することができた。あるとき、その宝物を村人に配ったところ、村人たちは気味悪がって彼女を殺してしまい、死体を切り刻んであちこちに埋めた。すると、彼女の死体からは様々な種類の芋が発生し、人々の主食となった。
この形の神話は、東南アジア、オセアニア、南北アメリカ大陸に広く分布している。それらはみな、芋類を栽培して主食としていた民族である。
日本神話にもハイヌウェレ型の説話が見られ(日本神話における食物起源神話を参照)、東南アジアやオセアニアから伝わったものと考えられる。しかし、日本神話においては、発生したのは芋類ではなく五穀である。よって、日本神話に挿入されたのは、東南アジアから一旦中国南方部を経由して日本に伝わった話ではないかと考えられている。『山海経』には、中国南部にある食物神・后稷の墓の周りには、穀物が自然に生じているとの記述がある。