ハンス・ゲオルク・ガダマー
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ハンス・ゲオルク・ガダマー(ガーダマー) (Hans-Georg Gadamer, 1900年2月11日 マールブルク - 2002年3月13日)は、ドイツの哲学者。解釈学(Hermeneutik)と名づける、言語テクストの歴史性に立脚した独自の哲学的アプローチで知られる。
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[編集] 生涯
ブレスラウ大学、マールブルク大学、フライブルク大学で哲学等を学び、マールブルク大学で、ナトルプのもと博士学位を取る。その直後に(1923年)フライブルクでハイデガーと出会って新カント派から離れ、フライブルクからマールブルクに赴任したハイデガーの指導を受ける。1928年に、ハイデガーの強い影響を受けた教授資格論文『プラトン問答術的倫理学』を提出(1931年刊行)。同じマールブルク大学で私講師として教え始め(1947年員外教授)、1939年にライプツィヒ大学に招聘されて正教授となる。1947年にフランクフルト大学に移り、1949年からヤスパースの後任として退官までハイデルベルク大学教授を勤めた。2000年の誕生日にはハイデルベルク大学で本人出席の上、生誕100年式典が行われた。
[編集] 思想
第三帝国時代にしばらくハイデガーから離れていたガダマーであるが、1940年代末に、ふたたびハイデガーの強い影響圏に入り込んだ。ハイデガー哲学は、シュライエルマッハー、ディルタイ等のロマン主義的・歴史主義的な解釈学がかかえる問題に対して決定的な意義をもつという認識を、ガダマーはそのときもっていた。そして1950年代初頭、彼は一書を書く決意をし、9年をかけて、自身のそれまでの研究や講義を集約する形で、1960年に『真理と方法』として刊行される原稿を練り上げていった。
『真理と方法』の第二部で、ガダマーはそれまでの解釈学に代わる新しい解釈学をうち立てた。ロマン主義的・歴史主義的な解釈学は、テクストないし歴史的出来事をその時代から理解すべきだという歴史的意識の要求に従って、形式的な解釈学的循環図式をテクストや歴史に適用し、理解する者の歴史性を否定してしまった。しかし、ハイデガーによれば、理解(了解)は有限な人間存在の存在様式として、それ自身歴史的なのである。人文科学での理解、過去から伝承されたテクストの理解は、ロマン主義的・歴史主義的解釈学が考えていたように、現在と現在に由来する先入見を排して、時代を飛び越えて、成立時のテクストとかその著者の心情とかを再構成することではない。理解は過去が現在に媒介(橋渡し)される出来事、過去から伝わったテクストの意味への参与である。理解が媒介・参与である以上、テクストの内容を現在に生かす適用は、理解においていつもすでに起きていると考えなければならない。テクストそのものの意味を捉えたあとで、それをあとから自らの状況に適用するのではないのである。この理解をガダマーはまた、プラトンの問答術に従って、問いと答えの弁証法としても記述した。まず、過去から伝承されたテクストが解釈者に語りかけ、問いかける。テクストの内容の真実性に動かされ、解釈者にとって自明で無意識であったもの(先入見)が自明性を失う。これによってはじめて、解釈者は、自らの先入見を吟味し、テクストに問いを立てるようになる
ガダマーの哲学的解釈学に対するハーバーマスの批判(1967年)とそれに続く彼との論争は、ガダマーの名を一躍世界に知らしめた。ハイデルベルク大学退官(1968年)後も、ガダマーはハイデルベルク大学で教え続けると同時に、アメリカやヨーロッパの諸大学で呼ばれて多数の講演や講義を行うことになった。ところで、社会科学からの挑戦とも言うべきハーバーマスの批判によって、ガダマーはその解釈学の人文主義的な狭さを弁明し克服するように強いられ、その結果、彼の解釈学は人文科学論から、言語に媒介された世界経験についての理論へと重心をシフトさせた。
だが、これは『真理と方法』では未展開であった第三部の言語論の発展と言える。『真理と方法』後のガダマーは、『真理と方法』で行ったシュライエルマッハーやディルタイの解釈について、その専門の研究者から批判を受けると、自己の解釈を弁明しなければならないこともあった。だが同時に、言語論を発展させるとともに、退官前後からツェラーンなどの現代詩を解釈することにより、自身の解釈学を具体的事例に耐えられるより洗練されたものとし、また、『真理と方法』での適用論を1980年代に実践哲学論として展開した。
[編集] 著作
- Wahrheit und Methode: Grundzuge einer philosophischen Hermeneutik (1960)
- 『真理と方法』法政大学出版局(部分訳)
- Kleine Schriften (1967)
- 『哲学・芸術・言語──真理と方法のための小論集』未来社
- Philosophische Lehrjahre: Eine Ruckschau (1977)
- 『ガーダマー自伝──哲学修業時代』未来社
- Gedicht und Gespraech (1990)
- 『詩と対話』法政大学出版局
[編集] 関連思想家
- マルティン・ハイデッガー
- ポール・リクール
- ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル
- フリードリヒ・シュライエルマッハー
- ヴィルヘルム・ディルタイ
- エルンスト・カッシーラー
- ハンス・ブルーメンベルク
- ユルゲン・ハーバーマス
- ジャック・デリダ
- ジャンニ・ヴァッティモ