バルカン (惑星)
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バルカンは水星の近日点移動を説明するために19世紀に仮説された惑星。 水星よりも更に太陽に近い軌道をとっているものとされ、熱いと思われローマ神話の火の神ウルカヌスに因んで命名された(英語読みからの日本語表記はバルカン。占星術用語としては、高炉星と訳されることもある)。
当時、天文学界は外惑星の軌道の摂動から海王星の存在を予言することに成功したところであり、水星軌道の問題も同様に解決できるのではないかと考えられた。(1846年、パリ理工科大学の天文学講師ユルバン・ルヴェリエがバルカンの存在を提唱した。ルヴェリエはまた天王星などの軌道の摂動から海王星の位置を予測し、それをもとにヨハン・ガレが海王星を発見した。)
その後、幾つかのバルカンの存在を示唆する観測結果は報告されたものの、決定的で再現性ある報告はなくバルカンの存在は否定的に考えられるようになった。
結局、水星の近日点移動は、アインシュタインの一般相対性理論の登場で最終的に解決された。
以降、バルカン仮説は科学の仮説としての地位を失ったが、そのユニークな説はSF作家(ことにスペースオペラの作家)に好んで使われることがある。