パロマー天文台
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パロマー天文台(ぱろまーてんもんだい、Palomar Observatory)はアメリカのカリフォルニア州サンディエゴにある私設天文台である。ウィルソン山天文台の南東90マイル(145km)にあるパロマー山に作られている。日本語ではしばしば「パロマー山天文台」とも呼ばれる。この天文台はカリフォルニア工科大学(カルテク)に所属している。2005年現在、天文台には4つの主な望遠鏡:口径200インチ (5.08m) ヘール望遠鏡、48インチ (1.22m) サミュエル・オシン望遠鏡、18インチ (457mm) シュミット望遠鏡、60インチ (1.52m) 反射望遠鏡がある。これらに加えてパロマー試験干渉計 (Palomar Testbed Interferometer) も設置されている。
所属 | Caltech |
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位置 | アメリカ、カリフォルニア州サンディエゴ |
座標 | 北緯33度21分21秒 西経116度51分50秒 |
標高 | 1713 m (5618 ft) |
天候 | (# of clear nights, humidity) |
Web | http://www.astro.caltech.edu/observatories/palomar/ |
望遠鏡 | |
ヘール望遠鏡 | 200インチ (5.08 m) 反射 |
60インチ望遠鏡 | 60インチ (1.52 m) 反射 |
オシン望遠鏡 | 48インチ (1.22 m) シュミットカメラ |
JPL パロマー試験干渉計 | 干渉計 |
スヌープ | 全天カメラ |
目次 |
[編集] ヘール望遠鏡
この天文台の200インチ (5.08m) 望遠鏡は天文学者ジョージ・ヘールの名前にちなんで命名されている。この望遠鏡はカルテクとカーネギー研究所の共同体によって建設され、コーニング・グラス・ワークス社によってパイレックス製のミラーブランクが製造された。完成当時世界最大だったこの望遠鏡は1949年にファーストライトを迎えた。
ヘール望遠鏡はカルテク、ジェット推進研究所、コーネル大学の共同体によって運営されている。[1]
[編集] パロマー天文台スカイサーベイ
パロマー天文台スカイサーベイ (Palomar Observatory Sky Survey, POSS) はアメリカ地理学協会の出資によって行なわれ、1958年に完了したプロジェクトである(最初の乾板は1948年11月に撮影され、1958年4月に完了した)。このサーベイ観測は14平方インチ(6平方度)の青色域(コダック 103a-O)及び赤色域(コダック 103a-E)写真乾板を用い、48インチ (1.22m) サミュエル・オシンシュミット反射望遠鏡を使って行なわれた。このサーベイでは赤緯+90°(天の北極)から-27°までの全ての赤経にわたって、+22等級の感度(人間の肉眼の限界のおよそ100万分の1の明るさ)で撮影された。1957年から1958年にかけて、POSS の撮影範囲を南天に赤緯-33°まで広げた拡張版の撮影が行なわれた。最終的に完成した POSS は937組の乾板で構成されている。
オーストラリアの電波天文学者 J. B. ホワイトオークは同じ撮影機材を使ってこのサーベイをさらに南の赤緯-45°まで拡張した。彼は北天の POSS の対応する赤緯領域と同じ視野中心位置を採用して撮影を行なったが、このホワイトオーク拡張版サーベイは POSS とは異なり赤色域(コダック 103a-E)写真乾板のみからなっている。
2ミクロンスカイサーベイ (2MASS) が完成するまで、POSS は最も広い領域をカバーする広角スカイサーベイだった。スローンデジタルスカイサーベイ (SDSS) が完了すれば感度の点では POSS をしのぐものになるはずだが、POSS は SDSS の約2.5倍の天域をカバーしている。POSS は写真乾板をスキャンしたデジタルデータ形式でも存在しており、デジタル画像としてはデジタルスカイサーベイ (DSS) [2] が、またカタログ形式としてはミネソタ自動乾板スキャナカタログ (Minnesota Automated Plate Scanner (MAPS) Catalog) [3] が利用できる。
[編集] 現在の研究活動
現在パロマーで行なわれている研究プログラムの一つに地球近傍小惑星追跡プログラムがある。
このプログラムでは、2001年秋から始まった、天の赤道付近の帯状領域のマッピング観測を行うパロマーの QUEST 変光サーベイ [4] を利用している。この探索プロジェクトでは2003年夏にパロマーの48インチ (1.22m) サミュエル・オシンシュミット望遠鏡に取り付けた新しいカメラに撮影機材を切り替え、これによる観測結果は地球近傍小惑星追跡プログラムを含むいくつかのプロジェクトで使われている。QUEST の結果を使っている別のプログラムとして、2003年11月14日に(90377)セドナを発見し、その他約40個のカイパーベルト天体を発見しているプロジェクトがある。このカメラを利用しているまた別のプログラムとしては、シュリ・カルカーニによるガンマ線バーストの探索プロジェクトもある。(バースト発生後すぐに反応して減光しつつあるバーストを連続撮影することができるため、このプロジェクトでは QUEST の自動望遠鏡の能力が利点となっている。)その他にリチャード・エリスによる超新星を用いた宇宙の加速膨張のテストや S. ジョージ・ジョルゴフスキーのクエーサー探索なども行なわれている。
このカメラ自体は112個のモザイクCCDによってシュミット望遠鏡の全視野(4°×4°)をカバーするもので、現在天文学の分野で使われているモザイクCCDとしては最大である。
[編集] 外部リンク
- カリフォルニア工科大学天文学講座
- The SBO Palomar Sky Survey Prints
- パロマー天文台の天気
- The Perfect Machine: Building the Palomar Telescope by Ronald Florence, ISBN 0060926708