ヒットポイント
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ヒットポイント(Hit Point , HP)はゲーム内のプレイヤーキャラクターやノンプレイヤーキャラクターが持つ体力や耐久力、生命力を数値データとして表現したものである。類義語としてヘルス・ポイント(Health Points)、ライフ(Life)等がある。
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[編集] 解説
「Hit Point」を直訳すると、「打撃点」や「命中点」といったところであろうか。例えばHPが100あるなら、99単位の打撃が命中しても耐えられるが、100単位以上の打撃では倒れる耐久力を持つことを表す。1単位の打撃がどの程度のものなのかはゲームによって様々である。根本的に相対点と見る(HP100なら100分率)ほうが合理的な場合もあり、この場合最大HPが多ければ多いほど1単位の打撃は小さな物となる。成長する事でよりダメージを受けなくなるわけである(後述)。
ゲームにもよるが、通常、ヒットポイントは相手の攻撃を受けて負傷した時などに低下する。ほとんどのゲームでは減少したヒットポイントを再び増やす、即ち「回復」する手段が用意されており、回復用のアイテム(通常は薬品が多い)や魔法、宿屋などが代表的である。
多くの場合、0になるとそのキャラクターは死亡した状態になり、戦闘中・移動中とも、一切の行動ができなくなる。蘇生を前提とした死を忌避(後述)する一部のゲームでは、「HPが0でも死んだわけではない」という意味合いで「戦闘不能」「意識不明」などの表現が用いられることもあるが、一切の行動ができなくなるという点では全く同じで、ゲームをプレイするにあたっては死亡の概念があるゲームとほとんど変わりがない。
単位は定義されておらず、値の上限は任意に設定されるのが一般的である。最初のロールプレイングゲーム、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に既に基本的なコンセプトは見られ、以来この系統のゲームのほとんどで採用されている。
日本ではコンピュータRPGの『ドラゴンクエスト』が登場し大ヒットして以来、この概念が広く知られるようになった。ゲームに親しんだ世代では、現実の健康状態や体力をヒットポイントで表現するジョークも通用する。
[編集] 最大ヒットポイント
その時点でそのキャラクターが持っているヒットポイントの最大値(上限値)を最大ヒットポイントといい、MHP(Max -)と略すこともある。基本的に最大ヒットポイント以上に数値が上昇することはない。
多くのゲームでは、キャラクターの成長(レベルが上昇する等)に従いそのキャラクターの最大ヒットポイントも上昇する。つまり、そのキャラクターはより強い攻撃に耐えられるようになるということである。「レベルアップにより、キャラクターの肉体が強化され、より多くの量のダメージに耐えられるようになる」とする解釈と、「レベルアップにより、キャラクターがより高度な防御術を身につけることによって、1単位あたりのダメージ量を減らし、結果としてより大きな単位の攻撃に耐えられるようになる」とする解釈がある。ただし定数値のヒットポイント回復効果が存在した場合、後者の解釈は苦しいものとなってしまう。例えばHPが10倍になれば、同じ回復手段を使用したときの回復量が最大ヒットポイントの比率では以前の10分の1になるからである。
[編集] 戦闘以外によるHPの減少
HPは敵からの攻撃以外に、プレイヤーズ・キャラクターの様々な状態異常(ステータス異常)によっても消耗する。
- 状態異常の例
- 毒や病気に蝕まれている
- 疲労が蓄積してきている
- 空腹
- 未知の呪いに掛かっている
これらの状態異常が起きている時には歩くだけでHPが徐々に低下していくようになっているゲームもある。また、時間の概念のあるゲームでは歩かなくても時間と共にHPが低下していくものもあり、これは様々な要因によってプレイヤーズ・キャラクターが徐々に衰弱していく様子を表現したものである。
その他にも罠にかかったり、毒や棘の上を歩行したり、敵対的な人物を会話すること等によってもHPは失われる場合がある。その際HP減少とは別に上述したステータス異常に冒されることもある。
[編集] 死亡後の処置
ヒットポイントが0になった状態は「死亡」あるいはそれに類する状態とされるが、蘇生が可能なゲームがほとんどである(後述)。たいていの場合、ゲーム中に蘇生を行うための施設が設けられている。魔法やアイテムなどを用いることができるゲームもある。
テーブルトークRPGの中でも極めて高いリアリティを持つゲームでは、あまりにも大きなダメージを受けた場合に、「HPが最大値まで回復しなくなる(上限値にも永久的なダメージを被る)」という表現を行っているものも見られる。これは、肉体が著しく損傷し、完全に元通りに蘇生させることが不可能になった様子を表現したものである。
同様に、死亡時に被ったダメージ量によっては、HPの減少が0で止まらず、マイナス値にまで低下するゲームもある。このようなシビアなゲームでは、極端に大きなダメージによる死亡は蘇生が事実上不可能な状態となる。
また、蘇生が可能ではあるが確実性は保証されておらず、蘇生に失敗すると再度の蘇生がより困難になったり、場合によっては不可能となるシステムを採用しているゲームもある。
MMORPGでは、死亡後に自動的に復活する機能があるものの、死亡時に経験値やレベルの減少を引き落とし、また、所持していたアイテムやゲーム内の通貨を落としてしまうため、気軽に死亡することができないゲームが多い。
[編集] 死の禁忌
コンピュータRPGの多くでは主人公に名前をつける風習があり、そこにプレイヤー自身が自分の名前を入力した場合には「たろう は死んだ」等の直接的な表現が表示される。この表現が、お茶の間で行われる遊戯としては非常にショッキングな表現として問題視された経緯がある。
また、『ドラゴンクエスト』以降のコンピュータRPGは、あらかじめ作られたストーリー展開を重視したものが多く、主人公や重要人物などのプレイヤー・キャラクターが直接的にストーリーに関係している場合がほとんどである。このようなゲームでプレイヤー・キャラクターが死亡すると、話の進めようがなくなってしまう。そこで、多くのゲームでは、死亡しても魔法などにより蘇生させることができる方式とした。しかし、「死亡者の安易な蘇生に慣れることで、ゲームをプレイする子供たちが現実の命を軽視するようになる恐れがある」として一部の保護者やマスメディアによる批判がなされるようになった。
さらに、ゲーム内の強制イベントにおいて、しばしば「キャラクターが『死亡』して、二度と生き返らない=プレイヤーキャラとして二度と使用できない」というシーンが登場するようになった。単にHPが0になった状態(蘇生可能)を「死亡」としている作品においても上記のようなシーンが頻出し、「なぜ魔法や道具で復活させないのか」という素朴な疑問を投げかけるプレイヤーも多かった。ゲーム内で「プレイヤー・キャラクターは『使命を果たすため神に選ばれた特別な者』であり、特別に蘇生が可能」「凶悪な呪いで殺されると蘇生不可」「運命で定められた死を迎えた者は蘇生できない」などの理由が示される場合もあったが、プレイヤーを納得させるに至る合理的な説明とはならなかった。
こうした問題を解決するために「ヒットポイント0とは、死んだのではないが戦闘への参加は不可能な状態である」という表現を用いた作品が現れ始めた(初出は調査中。「意識不明」の名では『MOTHER』、「戦闘不能」の名では『ファイナルファンタジーIV』で有名に)。コンピュータRPGの人気拡大によるプレイヤー層の拡大もあり、難易度を下げる効果もあったこの方策は広く普及した。また「戦闘不能」とは戦闘が不能なだけであり、行動自体が不可能であるとは限らない。よって戦闘のないイベントシーンなどでは「戦闘不能」の人物を通常通り歩かせたり会話させることができる。戦闘不能を「死亡」としていた作品では要所に不自然な蘇生イベントが挿入されていたり、酷い場合は棺桶が動いて会話することさえあった。
そうした一方で、この方策は旧来のゲームが持つシビアなゲーム性を失うことを意味し(例えば『ウィザードリィ』では、「死亡」、「灰」、「ロスト」のように、甦生に失敗し、さらには恒久的にキャラクターが失われる可能性が常につきまとうが、これはこれで逆に各キャラクターへの感情移入を強める結果ともなっている。)、ゲーム批評を趣味とする熱心なゲーマーたちが問題視している動きもある。
また、そうした議論に付随するHP=0とはどのような状態なのかについての議論もロールプレイングゲーム黎明期から盛んに行われている。
[編集] 関連項目
- マジックポイント(MP) - HPが体力を数値化したのに対応する、魔力や精神力を数値化したもの。
- ライフ (コンピュータゲーム)