ヒューリスティクス
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ヒューリスティクス(heuristic、Heuristik)とは「必ず正しい答えが導けるわけではないが、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることが出来る方法」。答えの精度は保障されないが、回答に至るまでの時間が少なくてすむ。主に計算機科学と心理学の世界で使われる言葉。どちらの分野での用法も根本的な意味は一緒だが、指示対象が違う。計算機科学ではプログラミングの方法を、心理学では人間の思考方法を指して使われる。
heuristic、Heuristikの直訳は「発見学」である。これは古代ギリシャの数学者アルキメデスが、お風呂に入っていて、有名な定理を発見したときに裸のまま飛び出して、「発見した(heureka:エウレカ)!」と叫んだという故事に由来する。このためヒューリスティクスを「発見的手法」とか「発見的解法」と呼ぶこともある。
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[編集] 計算機科学
計算機科学ではコンピューターに計算やシミュレーションをさせるさい、ヒューリスティクスを用いることがある。大抵の計算は計算結果の正しさが保証されるアルゴリズム、または計算結果が間違っているかもしれないが誤差がある範囲内に収まっていることが保証されている近似アルゴリズムを用いて計算する。しかし、そのような計算方法だと計算時間が爆発的に増加してしまうような場合に、妥協策としてヒューリスティクスを用いる。ヒューリスティクスは精度の保証はないが平均的には近似アルゴリズムより解の精度が高いことが多い。ヒューリスティクスの中でも任意の問題に対応するように設計されたものはメタヒューリスティクスという。
[編集] ヒューリスティクスな仮定
アルゴリズムの近似精度や実行時間を評価したいが、真面目に評価するのが困難な場合、アドホックな仮定(=妥当な仮定に見えるもののその正しさを証明できないその場しのぎの仮定)をおいて評価を行う事が多い。 こうした仮定の事をヒューリスティクスな仮定と呼ぶ。
[編集] 心理学
心理学では、ヒューリスティクスは、人が、複雑な問題解決等のために何らかの意思決定を行う際に、暗黙のうちに用いている簡便な解法や法則のことを指す。判断に至る時間は早いが、必ずしもそれが正しいわけではなく、判断結果に一定の偏り(バイアス)を含んでいることが多い。ヒューリスティクスの使用によって生まれている認識上の偏りを、認知バイアスと言う。
[編集] ヒューリスティクスの例
- 利用可能性ヒューリスティクス(availability heuristic)
- 想起しやすい事柄や事項を優先して評価しやすい意思決定プロセスのことをいう。
- 英語の訳語である検索容易性という言葉の示す通りのヒューリスティックスである。
- 典型的ヒューリスティクス(representative heuristic)
- 特定のカテゴリーに典型的と思われる事項の確率を過大に評価しやすい意思決定プロセスをいう。
- 代表的な例として、「リンダ問題」がある。
[編集] 参考文献
- 中島秀之、高野陽太郎、伊藤正雄 『岩波講座 認知科学8』 10,112ページ 岩波書店 1994年 ISBN 4-00-010618-X
- 鹿取 廣人・杉本 敏夫編, 『心理学(第2版)』 174ページ 東京大学出版会 2004 ISBN 4-13-012041-7
- 市川伸一 『考えることの科学 推論の認知科学への招待』「第六章 第一節 不確かな状況におけるヒューリスティックス」 110-113ページ 中央公論新社<中公新書> 1997年 ISBN 4-12-101345-X
- T. ギロビッチ著、守一雄・守秀子 訳 『人間この信じやすきもの -- 迷信・誤信はどうして生まれるのか』 新曜社 ISBN 4-7885-0448-0