ビジネスジェット
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ビジネスジェット(business jet, 略してbizjetとも)とは、数人から十数人程度を定員とする小型のジェット飛行機で、企業や個人が(旅客運送ではなく)自分で使用する用途を想定して設計・製造されているものである。
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[編集] コンセプト
[編集] 使用目的
ビジネスジェットは、企業が所有して社員の移動に使用したり(社用機)、個人が所有して家族や友人の移動に使用したり(自家用機)というものが多いが、至急便運送の仕事や要人輸送、また報道機関の取材などに使われている場合もある。
[編集] エンジン
ビジネス機とも言うが、その場合はジェット機だけでなくプロペラ機も含めた言葉となる。ただし、実際にはこの用途に使用されている飛行機は現代ではほとんどジェット機である。
なお個人が趣味で使用する軽飛行機の場合は単発(エンジンが1個)のものもあるが、ビジネス機では安全のため基本的に最低でも双発(エンジン2機)である。大きな空港などでは単発機の離着陸を認めていない所も多い。日本産の民間機としては20年ぶりの開発となったホンダのHondajetも双発機である。
ただ、最近ではさまざまな制限を覚悟の上で安価に運用できる超小型単発機(VLJ - Very Light Plane)の需要もあり、ビジネス機の下位の商品コンセプトとして成長しつつある。
[編集] コミュータ機との違い
ビジネスジェットと似たコンセプトとしてコミューター機やエアタクシーがあるが、コミューター機の場合はローカル線の一般旅客運送を目的としており、またエアタクシーは更にローカルな運用需要が多いため、短い滑走路での離着陸や燃料消費などの効率性が重視されるのに対して、ビジネス機の場合は所有者が快適に空の旅をすることを目的とすることと、しばしばその飛行機自体が所有者のステータスにもなることから、室内が広く取られていたり、より快適なシートを使ったり、中には接待用を意識して豪華な装備が組み込まれているものなどもある。
そういう方向性ではガルフストリーム社の製品などはアメリカの有名タレントが所有したりして、憧れのブランドとなっている。
[編集] 共有システム
なお最近では企業や個人が単独で持つのではなく「フラクショナル・オーナーシップ(fractional ownership - 直訳すれば区分所有)」といって、幾つかの企業、あるいは多数の個人が共同で所有している場合もある。これは車の場合のカーシェアリングに似たシステムで、飛行機とその乗務員および整備スタッフなどを共有している。またアメリカでは、企業や個人の所有の飛行機でも、航空会社が仲介して「帰り便」や「迎え便」に一般の乗客を乗せるケースがある。ジェット機をからっぽで飛ばす(empty leg - 空行程 - からこうてい - 又は dead leg - 死に行程 という)のは燃料だけ考えても、ひじょうにもったいないからである。
[編集] 中古機および未購入機
現在世界のビジネスジェット市場はアメリカが最大規模でヨーロッパがこれに次いでいるが、アジアや中米などでもニーズは高まりつつある。またNARA(National Aircraft Resale Association)などの中古機市場も盛んだが、逆に「未購入機」の取引市場も形成されている。こういう市場が成立するのは一般に飛行機が発注してから納品されるまでに2~3年かかるので、発注したものの資金が足りなくなる人もあれば、急に活動範囲が広がりすぐにも入手したい人がいるからである。