フィラデルフィア・セプタ
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フィラデルフィア・セプタは、アメリカ合衆国・ペンシルバニア州の最大都市であるフィラデルフィア市を中心に、地下鉄・近郊電車・路面電車・ライトレール・バスを展開する公共交通ネットワークである。正式名称は、南ペンシルバニア交通局(Southeastern Pennsylvania Transportation Authority:SEPTA)だが、その略称から、セプタ(SEPTA)と呼ばれている。
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[編集] 地下鉄
セプタは、フィラデルフィア市内に二つの地下鉄路線を展開している。13th Street駅及び11th Street駅とCity Hall駅で乗換が可能となっている。なお、Blue LineとOrange LineのSpring Garden駅とAllegheny駅は同名であるが、別々の場所にあるので、乗換はできない。
- MarKet-Frankford Line (Blue Line)
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- 69th Street Terminal ~ Millbourne ~ 63rd Street ~ 60th Street ~ 56th Street ~ 52nd Street ~ 46th Street ~ 40th Street ~ 34th Street ~ 30th Street ~ 15th Street ~ 13th Street ~ 11th Street ~ 8th Street~ 5th Street ~ 2nd Street ~ Spring Garden ~ Girard ~ Berks ~ York-Douphin ~ Huntington ~ Somerest ~ Allegheny ~ Tioga ~ Erie-Torresdale ~ Church ~ Margaret-Oithodox ~ Frankford Transportation Center
- Broad Street Line (Orange Line)
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- Fern Rock Transportation Center ~ Olney Transportation Center ~ Logan ~ Wyoming ~ Hunting Park ~ Erie ~ Allegheny ~ North Philadelphia ~ Susquehanna-Dauphin ~ Cecil B. Moore ~ Girard ~ Fairmount ~ Spring Garden ~ Race-Vine/Convention Center ~ City Hall ~ Walnut-Locust ~ Lombard-South ~ Ellsworth-Federal ~ Tasker-Morris ~ Snyder ~ Oregon ~ Pattison
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- Broad-Ridge支線-終点の8th Street駅でBlue Lineと乗換
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- Fairmount ~ Chinatown ~ 8th Street
[編集] 近郊電車
フィラデルフィア市の30th Street StationやMarket East Stationを中心に計七つの路線が運営されており、R2、R5およびR7では、アムトラックと路線を共有している。
- R1-Philadelphia International Airport ~ Glenside
- R2-Newark ~ Warminster
- R3-Elwyn ~ West Trenton
- R5-Thorndale ~ Doylestown
- R6-Cynwyd ~ Norristown
- R7-Chestnut Hill East ~ Trenton
- R8-Chestnut Hill West ~ Fox Chaes
[編集] 路面電車およびライトレール
現在、計六つの路面電車と一つのライトレール路線(ルート100)があり、市の中心地では、路線の共通化と地下化がなされている。このうち、ルート100、101および102は、フィラデルフィア市郊外を走っている。
- ルート10-Overbrook ~ Center City
- ルート11-Darby ~ Center City
- ルート11-Yeadon ~ Center City
- ルート34-Angora ~ Center City
- ルート36-Eastwick ~ Center City
- ルート100-69th Street Station ~ Norristown Transportation Center
- ルート101-69th Street Station ~ Media
- ルート102-69th Street Station ~ Sharon Hill
[編集] 歴史
[編集] 公共交通の誕生
フィラデルフィアの都市公共交通の歴史は、1831年の乗り合い馬車路線の設立まで遡ることができる。1858年には馬車鉄道による市街鉄道が開業し、1863年には、馬に代わり小型の蒸気機関車(ダミーエンジン)が用いられるようになった。
鉄道馬車や小型蒸気機関車による市街鉄道運行はコストや信頼性の面で問題があり、新たな技術革新が求められた。1883年にはサンフランシスコで成功を収めていたケーブルカーが導入され、1892年には、電車運行が行われるようになる。電車は線路と架線の敷設だけで運行を行う事ができ、地中に埋設物を必要とするケーブルカーに比べてもその建設・維持費用は安く、爆発的に広まるようになった。
[編集] 公営化以前の公共交通運営企業
[編集] フィラデルフィア・ラピッド・トランジット
初期の路面電車は複数の事業者により運営されていたが、1902年、これらの会社は統合され、フィラデルフィア・ラピッド・トランジットが成立する。フィラデルフィアの市街電車網はシカゴやニューヨークに次ぐ規模を誇り、最盛期の1911年頃のその軌道延長は1000kmを超え、4000両近い車両が運行されていた。なお、現在でも用いられているルート・ナンバーが用いられ始めたのは1911年の事である。
この会社は、地下鉄の建設、運営も行った。1903年、マーケットストリート線の69th Street~15th Street間が開業、その後、徐々に延伸が行われた。
1920年代、会社はバス事業にも乗り出した。市街電車網が高度の発展を遂げていたアメリカの諸都市のバスの導入は欧州の大都市に比べると遅く、フィラデルフィアにおけるバスの導入も1923年になってからであった。
[編集] フィラデルフィア・トランスポーテーション・カンパニー
1934年、大恐慌の影響によりフィラデルフィア・ラピッド・トランジットは倒産し、フィラデルフィア・トランスポート・カンパニーが生まれた。
この会社は、1955年から1966年までの11年間、ゼネラル・モーターズのバス子会社であるナショナル・シティ・ラインズの支配下にあった。1958年、路面電車路線のうち35路線がバス化され、1000両近い路面電車がゼネラル・モーターズ製のバスに置き換えられた。当時普及が進んでいたディーゼル駆動のバスは路面電車に匹敵する輸送能力と効率性(ガソリンエンジンのバスは小型で効率性も低かった)を持っており、GMを関係を持たない諸都市においても路面電車のバスへの置き換えが進んでいた事から、路面電車の撤去に関してどれだけの恣意性があったかについてははっきりとはしないが、がGMが親会社という立場を利用して自社製のバスを独占的に売り込んだ事実は当時から明白であった。約3分の1の路線は残り、500両のPCCカーが活躍を続けた。
[編集] フィラデルフィア・サブアーバン・トランスポート
フィラデルフィアからは、隣接するペンシルベニア州南西部の諸都市を結ぶ電鉄路線が放射状に延びていた。こうした路線網の多くは、ニューイングランドの農村部の路面電車路線と同様、低規格のもので、1930年代には消滅したが、ノリスタウン~アレンタウン間のリーバレートランジット(1951年廃止)と、この路線に接続して、フィラデルフィアの69thターミナルに向かう1912年に全通した高規格路線のフィラデルフィア・アンド・ウェスタン鉄道、フィラデルフィア~ウエストチェスター間のフィラデルフィア・アンド・ウェストチェスター鉄道は、郊外電車として引き続き多くの乗客を輸送していた。
1936年、フィラデルフィア・アンド・ウエストチェスター鉄道はフィラデルフィア・サブアーバン・トランスポート(Philadelphia Suburban Transportation 略号PST)という会社に再編された。この会社は、フィラデルフィア近郊の電気鉄道会社とバス会社の統合を積極的に押し進めた。
1953年、フィラデルフィア・サブアーバン・トランスポートはフィラデルフィア・ウエスタン鉄道を吸収した。1960年初頭、会社は高規格であったフィラデルフィア・ウエスタン鉄道の路線(ノリスタウン線)を残して他の鉄道路線をバス化した。
[編集] ペンシルベニア鉄道とレディング鉄道の近郊路線
フィラデルフィアの近郊旅客輸送は電気鉄道のみならず、都市間を結ぶ大手鉄道会社によっても行われていた。
この種の輸送の歴史は古く、1832年、フィラデルフィア・ジャーマンタウン・ノリスタウン鉄道(後のレディング)によってはじめられたのが最初である。その後、ペンシルベニア鉄道も近郊旅客輸送に参入したが、両者の路線には一部重複もあり、様々な形で競争が繰り広げられるようになった。
両者のフィラデルフィアの近郊輸送の特徴として、ターミナル駅の整備が挙げられる。1881年、ペンシルベニア鉄道は15th and Market Streetにブロードストリートステーションを建設し、レディング鉄道は1893年に12th & Market Streetsにターミナルを設けた。レディング鉄道のターミナルビルは市場の立ち退き問題をさけるため、市場に併設して設けられ、1階が5000平方メートルにも及ぶ巨大な小売市場、2階が列車ターミナルという構造で、大規模な商業施設を併設した駅としては先駆的な存在であった。1930年代、ペンシルベニア鉄道は路線の近代化に合わせて駅を移設、30番街駅とサブアーバン・ステーションを開設した。また、この時期にレディング鉄道は近郊路線の電化を行っている。
[編集] セプタによる公営化
アメリカの他の都市と同様、フィラデルフィアにおいても、1960年代頃には私企業による公共交通運営が困難になっていった。この問題に対応するために、1960年代前半より連邦政府に都市大量輸送局(UMTA)が設けられ、補助金の支出等をはじめ、様々な施策が行われていた。
1960年代後半以降、連邦政府が推進したのは交通企業の公営化である。それまで私企業に公共交通運営を任せていた多くの都市で地方政府による交通企業の買収、公営化が行われていたが、フィラデルフィア都市圏においてもその流れを受けて1964年、交通事業を行う公社であるセプタ(SEPTA)を設立、交通企業の公営化をはじめた。
セプタが最初に公営化を行ったのは都市交通で、前述のフィラデルフィア・トランスポート・カンパニーが公営化されたのが1968年、フィラデルフィア・サブアーバン・トランスポートが公営化されたのは1969年であった。
郊外鉄道の公営化のケースはこれよりやや複雑である。ペンシルベニア鉄道の後継者のペンセントラル鉄道とレディング鉄道は1970年代初頭には倒産し、国有のコンレールによって再建への道が模索されていた。近郊輸送もこの会社の管轄下にあったのだが、1983年にセプタが運行権を取得、現在のセプタの路線網の原型が確立したのはこのときであった。
公営化は実現したものの、現在に至るまでの道は平坦なものではなく、未だ大きな問題を抱えている。1つにはフィラデルフィアの人口が減少し、十分な税収、交通財源が確保できないという問題がある。セプタは1970年代から80年代にかけて路面電車網の一部を廃止し、残る路線の市内部分に関しては一定の評価を与えつつも主に運営費の問題から1993年以降運行を休止している。トロリーバス路線に関しても2003年より休止を行っていて、今後の展開が注目されている。
[編集] 関連項目
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