フリゲート
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
フリゲート(Frigate)は、軍艦の艦種。様々な時代に幾つかの艦種に使用された名称である。
様々な役割と規模があった。帆船時代は戦艦よりも小さく高速で、戦闘よりも哨戒、護衛任務に使用された船をフリゲートと呼称した。現代では他の軍艦や商船を護衛する任務が主な艦であり、揚陸艦隊、補給部隊、商船団を護衛し対潜作戦能力を保有する。しかしながら、フリゲートとして知られる多くの船がその上のクラス、駆逐艦や巡洋艦、あるいは戦艦と艦容が非常によく似ている。前述のような艦種の違いはその時代、戦場での役割、保有する国家の用法によって異なった。
「フリゲート」という言葉があまり一般的でない日本では「艦」を付してフリゲート艦と呼ばれることが多い。
[編集] 帆船時代

「フリゲート」の語源となったのは、「フレガータ」(fregata)と呼ばれる小型のガレー船である。フレガータは地中海で文書の伝達用などに用いられた。17世紀のイギリスでは、この「フレガータ」をもとにした小型高速の軍艦が登場し、「フリゲート」と呼ばれた。
18世紀半ばには、新しいタイプのフリゲートが、イギリスやフランスで現れる。近代帆船の等級艦のうち、5~6等級艦にあたる小型艦である。勅任艦長が指揮を執る。主な任務は、哨戒、連絡、通商破壊。戦列を組むような大きな海戦では、戦列艦の補助を主に行った。初期のフリゲートでは、砲数は28~36門で砲列甲板は単層であったが、やがて大型・重装備化が進み、砲数44~56門、二層の砲列甲板を備えたものが登場した。
大砲の発達により、多数の砲を並べた戦列艦は、防御に致命的な欠陥をさらす事になる。そこでフリゲートに装甲を施す事により、新たに「装甲艦」が登場する。装甲艦は徐々に大型化していき、中にはかつての戦列艦を超える大型艦も現れ、戦艦および装甲巡洋艦へと発展していく。その一方で装甲防御を施さず、装甲艦の補助に回ったフリゲートは「巡航船 "cruising-ships"」と呼ばれるようになり、それは「巡洋艦」となった。第二次世界大戦中は似たような能力と運用法でコルベットが使用されたが、「フリゲート」の用語はほとんど使われず、大戦後から軽駆逐艦に分類された艦が再び「フリゲート」と呼ばれるようになる。
[編集] 現代のフリゲート

第二次世界大戦で船団護衛や対潜戦闘の主力として大量に生産された軽駆逐艦が、戦後「フリゲート」の名称で呼ばれるようになる。
近代に於いてはミサイル搭載艦もあり、駆逐艦との区別は次第に曖昧になってきている。他の艦種と同じように明確な定義はなく各国が独自に分類しているが、一般的には駆逐艦より小さい満載排水量2,000~4,000トン程度のものを指すことが多い。またアメリカ海軍のフリゲートの定義としては、動力装置が1軸機構で低廉化された軍艦を指す。これに似たものにLCS沿岸戦闘艦があるが、フリゲートよりも喫水が浅く、沿岸海域での活動を設計当初から取り入れている違いがある。
アメリカ海軍をはじめとした多くの海軍では大体これに当てはまる形で艦船を分類しているが例外も存在する。例えばイギリス海軍では艦隊防空ミサイルを搭載している水上艦を駆逐艦(ミサイル駆逐艦)に分類し、それ以外をフリゲートと分類しているため駆逐艦より大きいフリゲートも存在する。フランス海軍は巡洋艦や駆逐艦といった艦種を使用せず大型の水上艦をすべてフリゲートと呼称しているが、艦種記号は駆逐艦級のDとフリゲート級のFで区分している。海上自衛隊の護衛艦を艦種記号で見ると大型水上艦には駆逐艦を意味するDD/DDG/DDHを使用し、基準排水量2,000トン以下の水上艦には護衛駆逐艦を意味するDEを使用しており、フリゲートを意味するFFは使用していないが、創設期の貸与艦の一部にPF(パトロールフリゲート)を使用していた。ただいずれの場合にせよ、あくまでその国がそう主張しているだけであり他国では上記の一般的な分類に従い呼ばれることが多い。
またフリゲートの名称を使用しているアメリカ海軍では、戦後一時期自国の巡洋艦と駆逐艦の中間に位置する艦船をフリゲートと分類し、他国海軍でいうフリゲートはパトロールフリゲートと分類していた。その後、従来のフリゲートは巡洋艦に分類し、パトロールフリゲートをフリゲートと分類し、他国海軍と同じ分類に改める格好になった。オリバー・ハザード・ペリー級以降はフリゲートの建造を行っておらず、これから先も行う計画はないためFF/FFGの艦種記号は消滅することになると思われる。アメリカ海軍ではフリゲートに替わる小型艦として沿岸海域での作戦能力を重視した沿海域戦闘艦(LCS:Littoral Combat Ship)と呼ばれる艦を計画しているが、これの艦種記号はLCSになるとしている。
各国における艦種記号はFF:Frigate、FFG:Guided Missile Frigate などが使用される。
[編集] 外部リンク
- Frigates from battleships-cruisers.co.uk - history and pictures of United Kingdom frigates since World War II
- Frigates from Destroyers OnLine - pictures, history, crews of United States frigates since 1963
- "So Uneasy a Ship: The Unfortunate Career of the Frigate Chesapeake" by Joseph C. Mosier