フリースクール
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フリースクールの概念はきわめて多義的で、(1)アメリカの授業料無償の公立小学校、(2)アメリカのフリースクール協会(1805年設立)に加入する人道主義に基づく低所得者のための授業料無償の学校、(3)イギリスのサマーヒルのようなデモクラティック・スクール、(4)英米のオープン・エデュケーションを行っている学校、(5)オルタナティブ教育の理念に基づく学校(オルナタティブ・スクール)、(6)不登校の子どもが通う非学校的な施設(日本)などの意味で用いられる。外国では主に(3)または(5)の意味で用いられ、日本では主に(6)の意味で用いられることが多い。(1)(2)での「フリー(free)」は、「自由」ではなく「無料」を意味する。
[編集] 日本のフリースクールにおける特色と問題点
日本のフリースクールは、ニイル流のデモクラティック・スクールのをはじめ、フレネ学校、シュタイナー学校、フォルケホイスコーレなど、ヨーロッパ新教育運動の流れを受け継ぐ学校が一部にあるが、もっぱら、不登校の子どもの受け皿として、その学習権の保障や安心してすごせる居場所を提供する施設、さらに、通信制高校での学習をサポートするサポート校など、不登校の子どもを対象とした、既存の学校とは異なる機関、施設が、フリースクールと総称されている。
こうしたフリースクールの規模や活動内容はきわめて多様であって、民家やマンション、事務所ビルの一室を借り、スタッフや子どもを合わせても10人に満たないような小さなものから、在籍数が100人を超える大きなものまであり、一般の学習塾が不登校の子どもを受け入れてフリースクールと称している例もある。教育(活動)内容は、上記(3)のデモクラティック・スクールのような、子どもの自主性を重んじ、スタッフと子どもが対等な立場で民主的に活動内容を決定するものが主流だが、既存の学校のようなカリキュラムを持ち、スタッフ(教師)が主体となって、「規則正しい生活」や学習をさせる施設もある。また、サポート校では、通信制高校のカリキュラムにしたがって「授業」が行われ、制服や時間割、部活動、各種の学校行事などもあり、一般の学校にきわめて近い。
ほとんどのフリースクールは、学校教育法1条に定める学校の要件に該当せず、私立学校設立のハードルがきわめて高いこともあって、正規の学校としての認可を受けていない。このため、フリースクールを卒業・修了しても、進学や就職、資格取得に必要な学校の卒業資格は得られない。しかし、学習指導要領等の規制の枠にとらわれず、既存の学校にはない、自由で独創的な教育を実現することができるため、既存の学校に合わない子どもにとって、重要な選択肢となっている。当初は、小中学生の年齢の子どもが中心であったが、高校生以上の年齢にも拡大され、フリースクールの精神による大学として、東京シューレを母体に20~30代の若者たちが作るシューレ大学が1999年に設立された。
フリースクールの経営 フリースクールの経営主体は、個人または零細な非営利団体がほとんどで、一部にNPO法人がある。ごく一部の例外を除いて、国や地方公共団体からの公的な支援を受けることができないため、ほとんどのフリースクールが財政的にきわめて困難な状況にあり、一般の学校に比較して、保護者の金銭的負担は重くなる傾向にある。個人が私財を投げ打って設立・運営しているところも多く、ほとんどのスタッフがボランティアで占められ、子どもからの学習ニーズに十分応えられなかったり、財政難やスタッフ不足から、突然閉鎖されてしまったりするなど、多くの困難を抱えている。小中学生については、義務教育を補完する役割を果たしており、国や地方公共団体からの公的支援が求められている。
特区を利用したフリースクール 近年、構造改革特区の制度を利用して、私立学校の認可を受けたフリースクールの設立が可能となった。2005年4月に、いいずな学園グリーンヒルズ小学校が設立されたのに続き、2006年11月には、フリースクール以外にも、フリースクールの理念に沿う形で、不登校経験者などの子ども達が通えるための学校である「学校法人東京シューレ学園」が認可され、2007年4月から東京シューレ葛飾中学校として、東京都葛飾区の旧松南小学校に開校する。
フリースクールのネットワーク 各地に散らばるフリースクールのネットワーク化が2000年頃から進み、2001年にはNPO法人フリースクール全国ネットワークが結成され、フリースクール同士の文化祭や、スポーツイベント、フリースクールスタッフの養成やスキルアップのための研修、フリースクール白書の発行などの調査研究事業のほか、国際交流事業、政策提言事業などを展開している。また、サポート校や不登校の子どもへの学習支援を主目的とする施設のネットワークとして、NPO法人日本フリースクール協会があり、不登校・中退者を対象とした相談・支援活動を行っている。
フリースクールを利用するには 一方、フリースクールを自称している施設の中には、不登校の子どもを持つ親の不安につけこんで、高額な費用を請求したり、暴力的な指導を行ったりするなどの問題を持つものも一部にあり、フリースクールの利用に当たっては、知名度・規模・広告などを鵜呑みにせず、実際に見学したり体験入学したりするなど、様々な角度から慎重に決定するべきである。また、保護者の希望だけで子どもをフリースクールに通わせようとすると、「フリースクールの不登校」になるなどして、より子どもを追い詰めてしまうことになりがちなので、本人の意思を十分尊重する必要がある。
[編集] 関連項目
- フリースペース
- サポート校
- 東京シューレ
- 登校拒否文化医学研究所
- クロンララ・スクール
- 手話での教育を行うフリースクール
- オルタナティブ教育