ベース (弦楽器)
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この項でのベース (Bass、「バス」とも) は、低音パートを演奏する弦楽器の総称である。
楽器そのものを指す場合とパートを指す場合があるので使用には注意を要する。
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[編集] パートとしてのベース
通常は楽器としてのベースを指すが、声部として一番下の旋律を演奏している楽器群を指すこともある。極端な例では、弦楽合奏において、チェロが高音域で主旋律を担当してビオラやバイオリンがその下で支え、かつ、コントラバスが演奏していないような場合、ビオラやバイオリンのことを指すことすらある。
[編集] 弦楽器としてのベース
一般的に、ベースは、チェロやギターの1オクターブから2オクターブほど音域の低い楽器とされている(構造や演奏法は各項目を参照)。 弦の数は4~5本が主流であるが、もっと少ないものも多いものもあり、アップライトでないものにはギター同様に複弦を持つベースもある。チューニングもさまざまである(下の関連項目を参照)。
概して、ネックはチェロやギターよりも長く、弦はそれらよりも太い。 ただし、弦楽器の音域を決定する要因は弦の長さや太さだけではないため、必ずしもチェロやギターの低音弦より長く太い弦が張られている必要はなく、演奏や運搬などの都合を考えて楽器全体を小さく設計してあるものも存在する。
単にベースと呼んだ場合はコントラバスかエレクトリックベースのどちらかを指すことが多いが、構造は「電気的に増幅することを前提として設計されているか否か(エレクトリックかアコースティックか)」「ネックを垂直に近く構えること(アップライト、ヴァーティカル)を前提として設計されているか否か」の組み合わせで大まかに4つに分けられる。 なお、この項では実在する弦楽器をコントローラーとして使ったシンセベースなどは取り上げない。
- アコースティックかつアップライトであるもの
- 現在広く親しまれている音楽ではそのほとんどがコントラバスであり、単に「アコースティックベース」「アップライトベース」と呼んだ場合もコントラバスを指すことが多い。なお、コントラバスには他にもさまざまな呼び方がある。(呼び方についてはコントラバスを参照。)
- 他にも、ヴィオローネやマンドローネやバスガンバなどが当てはまりうる。
- アコースティックであり、アップライトでないもの
- アコースティック・ベース・ギター等と呼ばれるものが代表的。構造はアコースティックギターとほぼ同じで、エレクトリックベースとほぼ同じ長さや形状のネックを持つ。演奏法はエレクトリックベースとほぼ同じ。
- エレクトリックかつアップライトであるもの
- そのほとんどがいわゆるエレクトリック・アップライト・ベース。ネックや指板の長さ・形状をコントラバスに似せてあるものが多く、演奏法もコントラバスに準ずる。使われる音楽のジャンル上、ピッツィカートで演奏される割合が高いため、それに適する設計になっていることも多い。また、音を電気的に増幅するため、音量に関しては必ずしも共鳴箱を持つ必要がなく、音質の調整に必要な最小限の大きさにとどめてあるものや全く備えていないものが多い。
- サイレントベースの呼称はヤマハの登録商標。
- エレクトリックであり、アップライトでないもの
- そのほとんどがエレクトリックベースギター。略し方・愛称はさまざまで、エレクトリックベース、ベースギター、エレキベース、エレベ、電気ベース、などとも呼ばれる。
- アメリカのフェンダー社から発売されたプレシジョンベースがその草分けで、指板にフレットをつけた("フレッテッド")ことにより正確な音階が出せるという意味でこの名前が付けられた。フレットのないものもあり、単に「フレットレスベース」と呼ぶと「エレクトリックベースギターでフレットのないもの」を指すことが多い。
- なお、エレクトリックであるもののうち、楽器本体内部に共鳴箱を持たせてその振動をも増幅するものは区別して「エレアコ」「セミアコ」等と呼ぶことが多く、単にエレクトリックベースギターと言った場合は楽器本体内部に共鳴箱がないソリッドボディのものを指すことが多い(エレクトリックアコースティックギターを参照)。
奏者に対しては呼び方を楽器で厳密に区別することはあまりなく、単にベーシストと呼ばれることが多い(これが原因で混乱が起こることもある。後述する)。ロックバンド等で使用されるのはほとんどがエレクトリックベースであるが、ジャズ等ではコントラバスが使われることも多く、また両方を使い分ける奏者も少なくない。ただし、ヴィオローネやマンドローネやバスガンバなどは使われるジャンルが限られており、その状況では楽器名で呼んだ方が通りがよいため楽器名で呼ばれることが多く、その状況で「ベース」と呼ぶ場合は上記「パートとしてのベース」と捉えるのが妥当であろう。
なお、強い誇りや厳格な考えを持っている奏者は自分の楽器を「ベース」としてくくられることを嫌うこともあり、その場合はその奏者が考える呼び名で呼ぶほうがよい。
[編集] 「ベース」「バス」という呼称
上記の通り意味が複数あり、それぞれに当てはまりうる楽器の種類も多いため、混乱が起こることがままある。
例を挙げると古典派音楽などの楽曲においてはチェロとコントラバスが同一の「パートとしてのベース」を演奏している場合も多いため、単に「ベース(の音量)が大きい」と言った場合に大きいのはパート全体なのかコントラバスだけなのかわかりにくい。
また、楽器や奏者に関しても、現状では(特に日本では)エレクトリックでないベースの大部分がコントラバスであり、アップライトでないベースの大部分が「エレアコでないエレクトリック」である上、「アップライト」という分類に対しての「ホリゾンタル(水平な)ベース」のような呼称は一般的でないため、アコースティックベースギターやエレクトリック・アップライト・ベースを主に演奏する奏者が無用な誤解を受けることも多い。