ペン回し
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ペン回し (Pen Spinning) とは、手指を用いてペンを操る芸当のこと。
狭義には、後述する名称でいうところのノーマルやソニックなどの個々の技を指してペン回しと呼ばれることがある。また広義には、ペンを指で弾くなどして飛ばすものや手指以外を用いるアクロバティックな動作も含めてペン回しと呼ばれることがある。
インターネットが普及した90年代末からは愛好者同士の交流が深まり、趣味やジャグリングとしての面が強まっている。
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[編集] 名称
ペン回しの別名には、回す道具を明示した"シャーペン回し" "鉛筆回し" "ボールペン回し"等がある他、「浪人生がよくペン回しをしている」というステレオタイプや「ペン回しにのめり込むと浪人する」というジンクスから「浪人回し」という蔑称が存在する(当然のことながら、ペン回しをする人のすべてが浪人を経験しているわけではない)。
英語圏では"Pen Spinning"という呼び名が一般的。なお、ペン回しをする人のことは "ペンスピナー (Pen Spinner)"、あるいは単に "スピナー" と呼ぶ。
[編集] 遊び方
ペン回しには無意識的に回す遊び方の他、以下の3つの楽しみ方がある。
- 技のレパートリーを増やす、高難度の技に挑む
- スピードや回数を競う
- ウェブサイト「ペン回し道場(現在は閉鎖)」を中心に盛り上がった楽しみ方。
- ある技を一定時間(主に30秒)内に何回できるか、あるいは時間無制限でどこまで続けられるかを競ったりする。
- フリースタイル
- 複数の技を自由に組み合わせて演目のように構築する形態。
- 単発技よりもはるかに多彩な動きが可能であり、技の順番(オーダー)を自分で組合せる面白さもあるため、現在の遊び方の主流となっている。
- もともとは海外で発祥した楽しみ方であり、日本では「ペン回し資料室」での紹介や「神動画(後述)」によって広く知られるようになった。
[編集] 道具
ペン回しには道具としてペン(筆記具)が用いられる。使われるペンは重さや長さなど各人の好みによってさまざまであり、王道のようなものは存在しない。また、愛好者の間では基本的にペン以外のもの(異物)を回すことは避けられる。これは過去のテレビ番組でペン以外の日用品や食料品を回すという企画があり、肝心のペン回しよりも変わったものを回すことばかりが注目されてしまったことに起因する。
過去においては回しやすくするためにペン自体に改造を加える行為も邪道とされていたが、海外の影響を受けた現在では寛容になりつつある。なお、基本的にペンの長さはおよそ20cm程度までとされることが多い。
このように、身近にあるペンで様々な技を楽しめることがペン回しの大きな魅力の一つとなっている。
[編集] 代表的な技
- ノーマル
- 物を書くときの状態から中指でペンを弾き、親指の周りを1回転させてキャッチする技。(個人差はあるが)最も基本的な技であることからノーマルと名づけられた。
- ノーマルの逆回転をリバース、回転数が増えたものをシングルアクセル(1.5回転)、ダブル(2回転)などと呼ぶ。
- ソニック
- ペンを指に対して水平に回しながら中指や薬指の背を移動させる技。ノーマルと共にポピュラーな技の一つであり、ノーマルよりも動きが速いことからソニックと名づけられた。
- ガンマン
- ノーマルと違い、親指以外の指の周りを1回転させる技。中指と薬指でペンを挟み、薬指でペンを弾くものが最もポピュラーなタイプ(3-ガンマンと呼ばれる)。
その他、ペン回しには100種類を超える技が存在すると思われるが、その正確な数は把握されていない。 トリック.コンボのリバース.シメトリカル等全てを合わせると300種類は超す。
[編集] 技の名称と命名規則
日本と海外では命名規則が異なるほか、日本でも命名規則に関する議論が続いている。 以下、日本国内における定義の変遷について述べる。
前述のノーマルやソニックなど基本的な技の名称は、「私のペン回しの歴史」のHIDEAKI氏らによって命名されたものが伝統的に用いられてきた。また発展技や連続技については、基本技の名称に1から5までの指番号と特殊な接頭語・接尾語を付加して表す方式を取っている。 ほとんどの動きはこの方法で表現できるが、海外の技や新しい技の中には表記が著しく困難もしくは不可能なものも存在し、これらの分類・整理および合理的類型化が積年の課題とされてきた。
2006年秋頃にaysh氏が「軌道式」の概念を提案し、これに伴って現行定義の瑣末的な部分が見直されたが、これは実際に表記する上での利便性を追求したものであり、定義全体の抜本的な改革には至らなかった。
しかし2006年12月9日、Sunrise氏による「改正定義案」が公開されたことで定義議論は新たな局面を迎える。 この改正により現状で考えうるペンと指の動き全てが一定の規則を持った文字列として表せるようになり、結果的にオーダー表記の自由度が飛躍的に向上することとなった(ただし基本定義の過剰な高度化は初心者層への弊害になるとして警鐘を鳴らす向きもある)。
[編集] 歴史
- 第一世代(ウェブ以前)
- ペン回しの発祥は不明であるが、30年前には既に存在していたと思われる。彼らの多くは学生であり、友人同士のような小さなコミュニティの中で技を教えあっていたと思われる。コミュニティ同士の繋がりはほとんどなかったが、中には独自に技を開発するような人々も存在した。
- 第二世代(ウェブ以降~神動画以前)
- 1997年末、HIDEAKI氏によって世界で最初のペン回しウェブサイト「私のペン回しの歴史」が設立された。HIDEAKI氏は独自に技名を考案してサイト内で紹介すると同時に、掲示板やメールを通じて未知の技を知る者との交流を深めていった。これをきっかけとして、各地に散在していたペン回しに関する情報が一ヶ所に集約され始めた。さらにこのコミュニティから派生する形で複数のペン回しサイトが現れ、以後インターネットを中心としてペン回しが急速に発展していくこととなる。
- またこの流れの中で、日々現れる新しい技に対して1つ1つ個別の名称を与えるのではなく、回転パターンに沿った一定の命名規則を構築すべきだという意見が出た。これが現在の定義および表記法の原型になっており、当時考案された名称の一部は現在でも使われている。
- 第三世代(神動画以降)
- 技名の定義によって回転パターンがほぼ出尽くしたことや、上級者の相次ぐ活動休止が重なり、日本のペン回しは一旦衰退の色を見せる。
- そんな中、2004年初頭にaysh氏が設立したウェブサイト「ペン回し資料室」において、海外で盛んであったフリースタイルの概念が紹介され、それまでとは違ったペン回しの楽しみ方が見出された。また同年春には韓国のペン回しコミュニティPenDolSaによるPV(通称「神動画」)が大きな話題となった。当時の日本人ペンスピナーにとって、ハイテンポな音楽をバックに何人ものペンスピナーが連続してフリースタイルを行うこの動画は大きな衝撃であった。
- これ以降、日本のペン回しにおける価値観は海外の影響を大きく受けることになる。かつて主流であった「手から離れたものはペン回しではない」「真のペン回しは無意識のうちに行われる」「筆記できないペンや改造されたペンを回すことはペン回しの本義に反する」といった考えは古臭いものと見なされ、徐々に消えていった。
- その後、日本人ペンスピナーの間でも数々のPVが作られるようになり、2005年12月25日には日本人の精鋭ペンスピナー11名による最大級のPV「JapEn1st」が完成。翌2006年12月25日には続編「JapEn2nd」が公開され、世界各国で人気を博したが、一方でスタイルの定型化・均一化を批判する声もあり、今後の課題として注目を集めている。
[編集] JEB
JEBとは、おっかー氏によって作成された日本最大のペン回しコミュニティである。ペン回し、ペン改造についての質問だけでなくペンスピナー同士のオフ会なども実施しており、現在約2000名のペンスピナーが会員登録している(登録無料)。