ボールペン
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ボールペン(ballpoint pen)は文字や図形を描くために使用する筆記具。先端に金属又はセラミックスの極小の球(ボール)が填め込まれており、このボールが筆記される面で回転することにより、ボールの裏側にある細い管に収められたインクが送られて、線を描くことができるペンの一種。この一連の機構がユニット化されたものをペン軸の内部に収めて使用する。
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[編集] 筆記具としての特徴
現在では太さ、色、インクの特性(油性、水性など)、ペン先の繰り出し方(キャップ式、ノック式)などにより多くの種類が存在する。
ボールペンの特徴として、独特の構造により弱い力でスムーズな線を描ける事などが挙げられるが、このインクは先端に送られるために重力を必要とするため、仰向けで長く筆記することができない。特に微小重力の空間ではボールペンはまともに動作しないため、宇宙船内などではインクを窒素ガスで強制的に送り出す特殊なペンを使っている。 また、最近では超高粘度インクを利用した消しゴムで消せるボールペンなども市販されている。
また、ボールペンの欠点として、凹凸面があるとボールがうまく回転せず、筆記した線が湾曲してしまう点、長期間の放置に弱い点がある。
ボールペンの場合、万年筆と違い紙面に直角に近い角度で保ち筆記することが求められる。
[編集] ボールペンの歴史
ボールペンを発明するにあたっては、ペン先用極小ボールの高精度な加工・固定技術と、高粘度インクの開発が必要であった。従来の低粘度インクでは、ボールの回転と共に多量のインクがにじみ出してしまい、シャープな線を描くことができなかったのである。
1884年にアメリカ人のジョン・ラウドが着想しているが、インク漏れを防止できず実用にならなかった。
1943年にハンガリー出身のジャーナリスト、ビーロー・ラースローの手で、一応の完成を見る。すぐにレイノルズ社とエバーシャープ社が量産化、戦後アメリカでブームとなったが、インク漏れをほぼ完全に防止でき、安定した製品が市場に出されるのは、1950年代に至ってからである。
日本でも1950年代以降国産化されたが、当初は高価で普及せず、公文書に用いることも認められなかった。しかし、量産効果と改良で品質改善・低価格化が進み、公文書への使用が可能となった。1970年代以降は万年筆やつけペンに代わる、もっとも一般的な筆記具となっている。
ペン先用ボールの太さは 1.0mm、0.7mm、0.5mm のものが主流だが、技術革新により0.4mm、0.3mm、0.25mm、0.18mm といった極細のものも登場している。
[編集] 近年の傾向
- 油性ボールペンは長時間保管するとチューブ内のインクが固まって書き味が鈍ってしまう、水性ボールペンは長期保管後の書き味はある程度保障されるものの、水にぬれるとインクが流れて字が消えてしまう弱点があった。
- これらの弱点を改善するため、インクの固まりを抑えて長時間保管しても書き味が維持できる「低粘油性インク」が開発された。また水性ボールペンにおいてもインク流れの改善されたインクが登場している。
- 最近はインクが固まらず、書き心地が良いゲルインクボールペンの人気が高いようである。油性ボールペンの長所と水性ボールペンの長所を併せ持っている点が特徴。
- 万年筆ほどの種類はないが、ボールペンにも蒔絵や漆塗などを採用した高級品がいくつか存在しており、そのデザインを楽しむ人も多い。
[編集] トピックス
油性ボールペンの場合インクが途中で固まった場合、ライターの火を近づけて温めるとインクが溶けて再び書けるようになることがある。しかし、温め過ぎると今度はインクが固化してしまい書けなくなる恐れがある。