ミキストリ
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『ミキストリ-太陽の死神-』は、巻来功士による漫画作品。当時月刊誌であったスーパージャンプ平成2年7月号に最初のエピソードが掲載され、平成7年NO.24号で完結した。単行本はジャンプコミックスデラックスから全13巻。
目次 |
[編集] あらすじ
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
アステカ文明研究のため、メキシコへとやって来た江島陽介・恵子夫婦。ティオティワカンの遺跡を目指す彼らだが、不運にも、乗っていたバスが犯罪がらみのトラブルに巻き込まれ、麻薬組織のボス・マストアントニオの襲撃を受ける。その襲撃で陽介は、自身は全身火傷で瀕死の重症を負った上、最愛の恵子をその美貌を見初めたマストアントニオによって連れ去られてしまった。
三年後、火傷の治療のために移植されたアステカ文明の神官の皮膚から、神官が有していた「人体から素手で心臓を引き抜く」という超常的な能力をも受け継いだ陽介は、SS(スーパースター)級の殺し屋・ミキストリ(死神)となっていた。その仕事で得る多額の報酬で大勢の探偵を雇い、恵子を捜し求め続けていた陽介だったが、ある依頼によってついに恵子、そしてマストアントニオに再びめぐりあう。
依頼と同時に復讐もまた果たすものの、マストアントニオの元で脳改造を受け人間兵器に変えられていた恵子を救うためにあえて彼女を脳死状態にする事を選んだ陽介は、今度は恵子の捜索ではなく治療の為にそのまま暗く孤独な殺人者の道を歩み続けて行くのだった。
[編集] 登場人物紹介
- ミキストリ(=江島陽介)
- かつては平凡な若き考古学者だったが、マストアントニオのバス襲撃を皮切りに人生を一変させることとなった。四百年前に滅んだ筈のアステカ文明の神官から皮膚とともに異能を受け継ぎ、殺し屋となる。肉体の器官としての心臓を抜くだけで無く、霊的なものに対してすらも心臓部分と呼ぶべき存在を維持するための中枢を抜き取り、滅ぼす事が出来る。作中で描かれたものが彼の仕事の全てでは無いだろうが、単行本第十二巻に収録のエピソード『黄泉よりの使者』に出て来る警官や後述のテリーナのセリフによれば悪人を標的とした仕事しか引き受けた事がない様子。
- 心臓を引き抜く事が出来るほかに、その心臓を身体に戻して蘇生させる事も出来る。ただしその間は心拍が停止した状態なのでタイムリミットはほんの数分であり、それを過ぎてから戻しても死体が甦るという事はない。
- 江島恵子
- 江島陽介の妻、旧姓は柳町。本人も考古学者であったらしい。誘拐され、無理矢理マストアントニオの愛人にされてしまい自殺未遂を繰り返す。ついには死亡状態にまで陥った彼女だが、マストアントニオはなおも執着を捨てずに、組織で研究中であった眼力念殺人間(キラーサイコアイマー)3号として、脳に手を加え恵子本来の自由意思を奪った形で蘇生させた。
- フランク・ジェームソン
- ニューヨークにあるフランク・ジェームソン記念病院で院長をしている。かつてミキストリ=陽介の火傷にアステカの神官の皮膚を移植した人物であり、その縁で脳死状態の恵子の事もずっと彼が診ている。出番は多くないが重要人物。彼の病院にミキストリは一千万ドル以上の寄付をしており、そのおかげで貧しい人々は彼のもとで無料で治療を受ける事が出来る。
- ダニー・エルフマン
- アメリカ人の小説家。もとは教師で、離婚した妻のもとに幼い娘が一人いる。奇妙な縁でミキストリとしての陽介の友人となる。
- テリーナ・ヤーセン
- デンマーク人の小学校教師(登場時)。過去の体験から頑なに男女の愛を否定するようになっていたが、ミキストリと出会い、幾度も顔をあわせる内に彼を愛するようになる。
- 太陽神の力を宿したミキストリ同様、彼女はヴァルキューレの力を宿しているが、その力をふるう時は同じ巻来功士の作品である『ゴッドサイダー』の登場人物らに似て、光の中から金色の兜や手甲、それに槍といった武装を具現化させる(ただしその際それまで着ていた服は弾け飛んでしまう上、現れる防具は何故だかほとんど下着といった形状でまるで身を守れそうにない)。
- シパクトナル(=ディナ・リャン)
- 神話上のアステカ民族最初の女性。ティオティワカン遺跡で同じく神話上の最初の男性ウシュムコと石棺に入り眠っていたが、テスカトリポカの手で魂をディナ・リャンという女性の肉体に移されて現代に甦った。ディナ・リャンはバージニア州シンプソン大学考古学部の学生。ディナ・リャン本来の魂がどうなったかは不明だが、言動からして身体を支配する人格はほぼ完全にシパクトナルのものの様である。
- 連載がかなり終わりに近くなった頃、ほぼテリーナと入れ替わりで登場する。なお戦闘の際の格好はテリーナ以上に露出度が高い。
- ウシュムコ(=キット・オーケン)
- 神話上のアステカ民族最初の男性。シパクトナル同様テスカトリポカの手で魂を大学生キット・オーケンの肉体に移されて甦った。キット・オーケン本来の魂がどうなったかは不明だが、ウシュムコの人格・記憶に加えていくらかキット・オーケンとしての記憶や知識が(シパクトナルの場合よりは)残っているようである。
- 柳町季弘
- 江島恵子の父親。日本最大の電気メーカーの会長をつとめているが、自分の一人娘である恵子が一介の貧乏学者に過ぎない陽介に嫁ぐ事を快く認めた(ちなみに単行本第十三巻に収録のエピソード『鞍馬山の深奥』では彼のとなりに妻と思われる和服の女性がいるが、こちらは作中では名前が出てこず登場するのも数コマだけで、何時の間にか最初からいなかったかのようになってしまっていた)。
[編集] 作品
[編集] 職業意識
特殊な殺害方法ゆえ自分の仕業とすぐ知れるという認識からか、ミキストリは自分の殺人の目撃者の口を封じる事にはこの上なく熱意が無い。それどころかたまたま現場にいあわせ巻き込まれた人間を身を挺して庇ったりもする。
[編集] 「神」-ウイルス-
この作品の特徴として、『ブッダやキリストなどは皆、地球外から隕石等とともに飛来した特異な(それぞれタイプの異なる)ウイルスに感染し、それにより身体になんらかの変化が起こり超常能力を発揮出来るようになったのだ』としている点がある。無論、ミキストリこと陽介もである。
そういった特異なウイルスは作中のセリフでは鉤括弧つきで「神」(こう書いて振り仮名はウイルス)と表記されるが、陽介は神官の皮膚を移植された事で神官の持っていた(=保菌していた)『太陽神の「神」』を得た(=感染した)わけである。なお、作家の卵ダニー・エルフマンはミキストリと出会った事件中、殺人依頼の標的だった生物学者ロキ・スチュアートの手で生物を十倍ほどにも巨大化させる巨人(トロル)という「神」にミキストリともども感染させられるが、体内に入った量が少なかったためか幸い意に染まぬ巨大化は免れ、ごく弱い予知と「神」を持つ者どうしの精神感応の能力を得たにとどまった(『巨人の「神」』に普通に感染し巨大化の症状をあらわした人間が同じような予知能力を有するのかは不明)。
基本的に『世界各地の伝承の神も魔物も全てはこの「神」によるもの』という設定の作品なのだが、それでも霊魂や地獄・あの世といった一般的なオカルトの範疇のものも別口で存在するらしい。
[編集] 物語
男女愛、家族愛と形は様々だが、基本的に愛情に関するエピソードが多い。そうでない場合もあるが、たいていのエピソードでは主人公であるアステカの死神ミキストリと様々な神話の魔物、あるいは神との対決の構図になる。『主人公ミキストリは世界各地の神話に詳しい元考古学者、その友人エルフマンは怪奇小説家』という設定のおかげで、この手のマンガに多い「登場人物の異常なまでの知識の豊富さ」が、この作品では比較的自然なものとなっている。
[編集] 関連作品
- 『Magic Paradise』
- この作品『ミキストリ』の登場人物であるダニー・エルフマンを主人公としたホラー短編集。各話は小説家として大成し、すでに老人となった彼が自分の体験を回想するという形で描かれる。劇中にはダニー及びダニーの妻子を除き『ミキストリ』に登場した人物は出てこず作品としての怪奇現象の扱い方も全く異なっているが、それでも二つの作品のダニー・エルフマンは完全に同一人物である。