ミランダ警告
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ミランダ警告(-けいこく - Miranda warning)とは、アメリカ合衆国憲法修正第5条の自己負罪拒否特権に基づいて米国連邦最高裁が確立した法手続きの一つ。後述する4項目の告知がされていない状態での供述は、公判で証拠として用いる事が出来ない。日本語で権利の告知(読み上げ)、ミランダ・ルール、ミランダ準則、ミランダ法則などと訳されている。日本に対応するルールがないため、法律家(弁護士・法学者)の一部は、同様のルール確立を主張しその実現を模索している。
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[編集] 概要
アリゾナ州で起きた「ミランダ対アリゾナ州事件」について、1966年に連邦最高裁が示した判決(執筆者はアール・ウォーレン)に基づくもので、被告人の名に因む。
[編集] 内容
この判決が確定して以後、法執行官は、拘束下にある被疑者に対して取調べを行う際には、以下の4項目を通告することが必要となった(そのための携帯型カードもあり、ドラマなどでも警官がさも面倒臭そうに読み上げるシーンが見受けられる。もっとも実際には逮捕時に警告をすることは必要とされておらず、警察の取調室においてはじめて警告がなされることも多い。)。これが為されていない場合の供述は、当該事件(case in chief)に関する公判上の証拠として用いる事が出来ない。
- You have the right to remain silent.(あなたには黙秘権がある。)
- Any statement that you make could be used against you in a court of law.(供述は、法廷であなたに不利な証拠として用いられる事がある。)
- You have the right to have an attorney present when being questioned.(あなたは弁護士の立会いを求める権利がある。)
- You have the right to a court appointed attorney if a private attorney is not affordable.(もし自分で弁護士に依頼する経済力がなければ、公選弁護人を付けてもらう権利がある。)
もっとも、大半の事件においてはこれらの権利は被疑者によって放棄される(waiver)ことが通例となっており、ミランダ警告が形骸化しているとの指摘も多い。また、ミランダ判決が出されたウォレンコート以降は、ミランダ原則に例外を設ける判例が出されている(例えば、ミランダ諸権利に違反して取得された供述についても、検察側が反対尋問等において主張することが可能であるなど。)。 また、上記の4警告に定まった様式はなく、各自治体警察機関によって読み上げられる内容はまちまちである。日本のいくつかのウェブサイトでは、さも定まった様式があるように特定の警察機関の警告カードが紹介されているが、それはあくまで一例である。
[編集] 関連項目
- en:Miranda v. Arizona(英語。ミランダ対アリゾナ事件)
- en:Fifth Amendment to the United States Constitution(英語。アメリカ合衆国憲法修正第5条)
[編集] 文献
- 小早川義則 『ミランダと被疑者取調べ』成文堂、1996年2月、ISBN 4792313511
- ミランダの会編著『ミランダの会と弁護活動 被疑者の権利をどう守るのか?』現代人文社、ISBN 4906531296
- ローリー・リン・ドラモンド『あなたに不利な証拠として』(被疑者保護の精神を題材とした短編ミステリ小説集 タイトルはミランダの告知文の一部)早川書房、2006年2月、ISBN 4150017832
- 原著: Laurie Lynn Drummond, Anything You Say Can and Will Be Used Against You: Stories, HarperCollins Publishers, 3rd Feb 2004, ISBN 0060561629
- 渡辺修『被疑者取調べの法的規制』三省堂、1992年6月、ISBN 438531330X、[1]
[編集] 外部リンク
- FindLaw for Legal Professionals: MIRANDA v. ARIZONA, 384 U.S. 436 (1966)(英語。全文)
- Miranda's Miranda v. Arizona, Ernesto Miranda, Miranda Rights and Related Cases(英語)
- From California: Miranda v. Arizona, 384 U.S. 436 (1966)(日本語)
- ミランダの会(日本でミランダルールの確立と実現を目指す弁護士と研究者の任意団体。ページの下部にある内部リンク「ミランダの会とは」に米国の刑事が携帯するミランダカード (Miranda Warning Card - Miranda Admonition) 実物写真を掲示している)
- 松山大学法学部教授・田村譲のホームページ:「日米の刑事事件取り扱いの相違」(「ほどほどに疑う」米国と「疑わしきは罰する」日本の根本的な相違を指摘、日米間では「特に起訴前の容疑者の権利が大きく異なる)
- 日本弁護士連合会「人権擁護大会宣言」: 被疑者の弁護活動強化のための宣言(1991年11月15日)