伊集院大介
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伊集院大介(いじゅういんだいすけ)は、小説家、栗本薫の長・短編小説に登場する探偵。
デビューは、栗本薫が第2回吉川英治文学新人賞を受賞した1980年刊行の『絃の聖域(いとのせいいき)』で、当時はまだ職業探偵ではなく、二十代の塾の教師として、教え子が暮らす長唄の名門家元の一家で起きた連続殺人事件の解決におおいに貢献した。
現在(2006年12月)まで二十作を越える長編および短編集が発表されているが、その発表順は作中の時系列に沿ってはおらず、しばしば過去に遡った物語が語られる。いまのところ、彼自身が最も若い時の物語は、長編としては十五作目にあたる『早春の少年』で、当時は長野で暮らす14歳の中学生だった。
性格は温厚で、人間に対する深い愛情を持っている。容貌は、痩せて長身、銀ぶちメガネをかけている。「さだまさしに似ている」「ひょうたんナマズ」などという描写がある。もっとも、さだまさしに似ていると云われたのは若いころのみで、年を重ねるとともに、それほど似ていない、と云われるようになった。
名探偵になるために、いくつもの大学とアルバイトをはしごする青春時代を送り、その間にもいくつもの事件を解決した。 その後探偵事務所を開いて職業探偵となった。
ワトスン役は、第2作目となる『優しい密室』に登場した森カオル(結婚後は松之原カオル)が長らく勤めていたが、『仮面舞踏会』以降アトム君こと滝沢稔に交代した。
宿敵は、『天狼星』で初登場したシリウス。
目次 |
[編集] 登場作品
[編集] 長編
(2006年12月現在)
- 『絃の聖域』
- 『優しい密室』
- 『鬼面の研究』
- 『猫目石』
- 『天狼星』
- 『天狼星 II』
- 『蝶の墓 天狼星III』
- 『新・天狼星 ヴァンパイア』
- 『真・天狼星 ゾディアック』
- 『仮面舞踏会』
- 『魔女のソナタ』
- 『怒りをこめてふりかえれ』
- 『タナトス・ゲーム』
- 『青の時代』
- 『早春の少年』
- 『水曜日のジゴロ』
- 『真夜中のユニコーン』
- 『身も心も』
- 『聖者の行進』
- 『陽気な幽霊』
- 『女郎蜘蛛』
- 『逃げ出した死体』
[編集] 短編
(2006年12月現在)
- 「殺された幽霊」
- 「袋小路の死神」
- 「ガンクラブ・チェックを着た男」
- 「青ひげ荘の殺人」
- 「獅子は死んだ」
- 「鬼の居ぬ間の殺人」
- 「誰かを早死にさせる方法」
(以上、短編集『伊集院大介の冒険』に収録)
- 「伊集院大介の追憶」
- 「伊集院大介の初恋」
- 「伊集院大介の青春」
- 「伊集院大介の一日」
- 「伊集院大介の私生活」
- 「伊集院大介の失敗」
(以上、短編集『伊集院大介の私生活』に収録)
- 「顔のない街」
- 「事実より奇なり」
- 「ごく平凡な殺人」
- 「奇妙な果実」
- 「盗癖のある女」
- 「星のない男」
- 「ピクニック」
(以上、短編集『伊集院大介の新冒険』に収録)
- 「グルメ恐怖症」
- 「食べたい貴方」
- 「芥子沢平吉の情熱」
- 「地上最凶の御馳走」
(以上、短編集『第六の大罪』に収録)
- 「殺怪獣事件」
(アンソロジー『名探偵の挑戦状』に収録)
- 「月光座」
(アンソロジー『金田一耕助に捧ぐ九つの狂騒曲』に収録)
- 「伊集院大介の追跡」
- 「間の悪い男」
(以上、単行本未収録)
[編集] 「怒りをこめてふりかえれ」発刊時の珍抗議
この作品の発刊時、『私の愛読書のタイトル(※ジョン・オズボーン「Look back in anger」の邦題)そのまま』として、『あの作品のタイトル名を知らないということがあるのだろうか』『万一、どなたも御存知なかったとして、一応、著作物のタイトル一覧など照合されなかったのか(注:1996年はインターネットもまだ十分に発達していない時代である。また、世界中の小説および著作物の全タイトルとその邦題を逐一照合する事など物理的に不可能)』と、児童文学作家舟崎克彦により、講談社の文芸部へ抗議のFAXが送られた事がある。 後日舟崎は自著「これでいいのか、子どもの本!!」および季刊誌「ぱろる」1996年12月20日発行号の中で、この経緯を公表、また、後日栗本及び講談社から何も返事が返ってこなかった事に関して、『グレてやる』という捨て台詞を残している。[1]