内閣総理大臣の異議
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内閣総理大臣の異議(ないかくそうりだいじんのいぎ)とは、行政訴訟における取消訴訟において行政処分の執行停止の命令が出る前または出た後に、内閣総理大臣が停止について異議を裁判所に述べること。行政事件訴訟法第27条に規定がある。
[編集] 概要
この制度は行政事件訴訟特例法に定められたものであり(GHQの指示によって作られたとされる)、現行の行政事件訴訟法27条に引き継がれている。
内閣総理大臣は、取消訴訟における処分の執行停止について異議を裁判所に述べることができる(行政事件訴訟法第27条第1項)。
裁判所は異議を受けた場合、執行停止をすることができず、すでに執行停止の決定をしているときは、これを取り消さなければならない(第27条第4項)。
また、この制度は内閣総理大臣の権限が大きいので、
- 理由を付さねばならず(第2項)、
- 理由には処分の効力を存続し、処分を執行し、又は手続きを続行しなければ公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を示さねばならず(第3項)、
- やむを得ない場合でなければ異議を述べてはならず(第6項前段)、
- 異議を述べた場合は次の常会で国会に報告しなければならない(同後段)。
[編集] 批判
諸外国にも例を見ない特異な制度であり、批判としては例えば以下のものがある。
- 行政権の司法権への介入であり、三権分立の原理に反する。
- 異議の適法性について司法による点検ができない。
学界では違憲説が通説である。ただし、田中二郎説は合憲とする。