削除ボーイズ0326
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削除ボーイズ0326(さくじょボーイズゼロサンニーロク)は、方波見大志(かたばみだいし)原作の第一回ポプラ社小説大賞受賞作品であり、2006年10月にポプラ社より刊行された小説である。原題は『3分26秒の削除ボーイズ-ぼくと春とコウモリと-』
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[編集] 概要
- 世の中のどんな事件でも、それが起こることになったきっかけは、数秒に満たない行動だったり些細な思いつきだったりする。例えば、友好国同士が泥沼の争いをしている原因は、普段まじめな大統領が会議でふともらした一言の冗談かもしれないし、後世に残る凶悪な殺人事件でも、そのきっかけになったのは、犯人の朝食のパンに止まった一匹のハエであるかもしれない。それらはだいたい、3分26秒以内のほんの短い出来事に過ぎない。そのとっかかりの出来事さえなければ、世の中は今よりも少し平和になるだろう。主人公である12歳の小学6年生の少年直都は、フリーマーケット会場で謎の男から、過去の出来事を削除できるという削除装置を手渡される。
[編集] 各エピソード
- プロローグ
- 深爪問題とミステリーの犯人
- 八坂ブルドックの夜
- 誰も知らないダンゴ事件
- ある恋の話
- コウモリが飛び立つ日
- 削除装置の正しい使い方
- ぼくと春とコウモリと
- チーター
[編集] 主な登場人物
- 川口直都(グッチ)
今作品の主人公で愛称はグッチ。フリーマーケット会場で高校生に絡まれていたクラスメイトの浮石を助けたことで、売り場にいた謎の男から削除装置を手渡される。車椅子生活になった親友のハルを誰よりも気にかけいつも彼と行動を共にしている。本人曰く、自分は相談を受けやすい体質らしく、クラスでは対人関係のパイプ役を勤めてるらしい。少々怠け癖があるようで、土壇場にならないと中々本当の実力を発揮しないタイプ。
- 篠崎春(ハル)
直都の幼馴染で1番の親友。ある事故で下半身不随になり現在は車椅子生活。 ルックスも良く運動神経抜群で、かつてはクラスをまとめるリーダー格だったが、事故で歩けなくなり車椅子生活になってからは、直都とコタケ以外は彼から離れて行った。人の多い場所では人嫌いのオーラを出す。歩けなくなったことで親友の直都と本気で勝ち負けを競えなくなったことが心残り。ポニーテールの女の子が好み。
- 浮石藍
直都のクラスメイトの女の子。無口で人付き合いが悪く、いつも地味な服装なので名の通りクラスの中でも浮いた存在。以前は他のクラスで不登校だったらしく、6年生になってから直都のクラスに転入してきた。フリーマーケット会場で高校生に絡まれてる所を直都に助けられ、夏休みに入ってからは直都とハルの2人と行動するようになり友達になった。両親は離婚しており現在は看護師の母親と同居中。直都に気があるらしく、物語中盤では髪を切ってイメチェンした。
- 大山和広(コタケ)
直都とハルの友達。小学生だが父親の影響で株をやっている株少年。名字のわりにクラス一背の低いことから、ハルに「小岳で十分だ」と言われ、以来皆からコタケと呼ばれるようになった。落ち着きが無い性格だが変なプライドは持っておらず、ハルが歩けなくなってからも自分から近づいてきて友達でい続けた。
- 川口圭(コウモリ)
直都の4歳上の兄。自分がハルの事故の原因を作ったことがトラウマになり引きこもりに。 直都は兄を〝コウモリ〟と呼ぶが、これは直都のクラスの用語で〝引きこもり〟という意味。 直都の見解では、兄は普通の引きこもりとは違うらしく、ハルから足を奪った事を悔いてあえて自分から自由を奪い贖罪してるらしいので、基本的に他の人が自分の部屋へ入ることは拒まないとのこと。
- 川口マユ
直都の2歳下の妹。性格は好奇心旺盛でおしゃれでおませ。物語の序盤で削除装置を床に落としてしまい少し故障させてしまう。髪の毛のカールにはこだわりがあるらしく、自分の髪型はいつも巻き毛系。兄の圭が引きこもりになってからは避けるようになり絶対に1人では会おうとしないらしい。
- 直都の母両親
母親は駅前で美容室開いている現役ばりばりの美容師兼経営者。しかしそのイメージとは程遠い気の弱い人らしい。父親は約1年前に失踪しており作中には出てこない。
- 浮石桜
浮石藍の3歳上の姉で直都の兄である川口圭の部活の後輩。美人だが性格の方が妹の藍とは対照的に明るく猪突猛進。中学生3年生だが20代にも見えるらしく、それを指摘されるとすごく怒るらしい。両親が離婚した際に弁護士の父親に引き取られ藍とは別居中だが、両親には内緒で時々2人で会っている。おそらく桜は父方の姓を名乗ってると思われるが、作中では浮石という名字を父方か母方かを明確に語っていないので、便宜上ここでは「浮石桜」と表記。
- フリマの男
フリーマーケット会場にいた存在感の薄い謎の男。高校生に絡まれてた浮石を直都が助けたのを見て感激して、直都に削除装置を手渡した。
[編集] 削除装置(KMD)
- 外観
市販のコンパクトデジカメに似た形状だが、電源スイッチやメモリーカードの挿入口などは一切無い。液晶のディスプレイは常時ファインダーからの景色を映している。操作系は上部に手書きで"DELETE"と書かれたボタンと、脇にあるタイマー調節用のダイヤルしかない。
- 仕様
対象者に起きた出来事を削除できる。枠が対象を捉えた状態で、シャッターボタンを押して撮影。タイマーに削除したい時間(西暦何年何月何日何時何分まで)を入力する。画面に対象が映っていることと、削除したい時間が正確かを確認してDELETEボタンを対象者自身が押す。削除できる時間はセットした時間から5分間の出来事。一度削除した時間は二度と戻らない。
- 直都が削除装置を所有後の経緯
直都とマユが削除装置を取り合った際に誤って床に落として若干故障する。その為、削除できる時間が5分から3分26秒に減少(タイトルの0326はここから)、使用者は削除前と削除後の記憶が重複するようになる。削除装置は「KMD」と名付けられ以後はその名で呼ばれる。名前の由来は「コウモリ・命名・デジトカゲ」の頭文字を取ったもので直都が命名。