加藤三郎
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加藤 三郎(かとう さぶろう)は、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』に登場する、架空の人物。(声:山田俊司、神谷明)
宇宙戦艦ヤマトに搭載されている艦載戦闘機隊の隊長。その死後は弟・加藤四郎がその後を引き継いでいる。
この「加藤三郎」の名前は、第二次大戦で活躍した、「加藤隼戦闘機隊」の加藤建夫・陸軍中佐とゼロ戦撃墜王「大空のサムライ」坂井三郎・海軍中尉の二人の名前に由来するものと後付されているが、松本零士氏のコメントによると、名前をつけるときなかなか決まらなくて、同姓同名の指名手配犯(1977年10月27日の神社本庁爆破事件)の新聞記事が目に留まりそのままいただいたと話しているが、ヤマトの本放送は1974年10月~1975年3月であり、加藤三郎は第1シリーズから登場しているため、この話は時間の前後関係で矛盾している。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] 宇宙戦艦ヤマト
ヤマト護衛を主たる任務とする、コスモ・ゼロより一回り小型の宇宙戦闘攻撃機ブラックタイガーで構成される艦載戦闘機隊・通称ブラックタイガー・チームの隊長。自己紹介は「古代の下で戦闘隊を指揮する」。直属の上官である戦闘班長古代進に勝るとも劣らぬ熱血漢で、彼の性格をもっともよく理解するクルーの一人。
年齢的には、上官である古代よりも、やや上と見られ、そのためか、しばしば古代に対し、対等以上の口をきく事がある(第13話「急げヤマト!!地球は病んでいる!! 」等)。本第一作では、戦闘班長である古代をしばしば「チーフ」と呼んでいる。
一応メインキャラに次ぐサブキャラ待遇で、エースパイロットと言う華やかな職種にも拘らず、第一艦橋任務でないため当初は露出そのものが少なく、声優も持ち回りで演じられていた不遇のキャラであった(野村信次→山田俊司)。ところが当代人気声優を起用して野性味を加味したところ途端に女性ファンの間で人気沸騰、その後は古代と絡むシーンが増えるなど活躍の場を得て、メインキャラに次ぐ人気キャラに成長して行った(らしい)。
[編集] さらば宇宙戦艦ヤマト
ヤマトが司令部を無視して強行出発した際に、月面基地から、多くの部下を引き連れて、ブラックタイガーに代わる新鋭機コスモタイガーIIで駆けつけ、そのままコスモタイガー隊の隊長に就任する。
反乱鎮圧の部隊と勘違いしたヤマトから対空砲撃を受けそうになるが、機体を振って、ヤマトに合図を送り、攻撃の意志の無い事を示し、通信で「こちら、元ブラックタイガー隊長、加藤三郎、着艦許可されたし」とメッセージを送った。その瞬間、ヤマトの第一艦橋は、「加藤の声だ」「あいつが来てくれたんだ」と緊張が一転、歓喜の渦となった。加藤は、なかなか着艦口が開かないため「何をぼやぼやしてる。早く着艦口を開けろ!」と怒鳴り付けたが、これは小説版によれば、ヤマトが強行発進したため、乗員が定数を大きく割り込んでいて、着艦口の操作が遅れたため、となっている。ヤマト格納庫に着艦し、出迎えた古代進と握手しながら「ひどいぞ、俺たちを置いていくなんて。」「月基地でもドエライ騒ぎだったぜ。ヤマトが謀反を起こしたってな。」と笑いながら話し、ガミラス戦以来の堅い友情を示した。
テレザート星での戦闘では、コスモタイガー隊を率いて、テレザート星基地から発進してきた白色彗星帝国側の戦闘機群と空中戦を展開し、数機を失うも、敵編隊を壊滅させ、テレザート星上陸への足がかりを作った。
白色彗星帝国本体との戦闘では、ヤマトの波動砲攻撃で正体を現した都市帝国に向け、コスモタイガー隊で攻撃を加えるが、都市帝国の防御ベルトが回転して起こす乱気流に攻撃を阻まれ、いったん退避する。
その後、都市帝国を内部から攻撃するために発進してきた、古代進、真田志郎、斎藤始らが搭乗するコスモタイガー第二陣と合流、都市帝国内部への浸入に成功するが、ここで、歴戦の部下、山本明を失う。都市帝国内部に浸入後、滑走路に強行着陸し、古代と真田たちは、動力炉爆破のため、そこから更に内部に浸入、加藤はコスモタイガー隊を指揮し、滑走路に留まって、彗星帝国の兵士たちと壮絶な銃撃戦を展開する。動力炉に真田と斉藤を残し、古代進が滑走路に戻ってきた時には、コスモタイガー隊員はほとんどが銃撃戦で戦死し、機もほとんどが破壊されていたが、ただ一つ、加藤が銃座で射撃を続けている機だけが損傷を受けながら、原型を保っていた。加藤は、銃撃で古代が操縦席に乗るのを援護し、古代は「加藤、無事か、発進するぞ。」と声をかけながら、操縦席に乗り込み、何とか機を発進させる。この時、確かに加藤は生きていたのだが・・・。
そのまま、古代の操縦する戦闘機は、都市帝国を脱出、ヤマトへ着艦。古代は加藤に「着いたよ、加藤。生きて帰ったのはどうやら、俺たちだけのようだな。」と声をかけるが、返事はない。振り向いた古代は、加藤が銃座に伏したまま死んでいるのに気づくのである。恐らく都市帝国を脱出する時、既にかなりの重傷を負っていたものと思われるが、古代をヤマトに帰還させる使命感を支えにして任務を全うした、勇敢な最期であった。
[編集] 宇宙戦艦ヤマト2(テレビ版)
映画「さらば宇宙戦艦ヤマト」のテレビ版である「宇宙戦艦ヤマト2」においても、加藤がヤマトに乗り込むシーンは、ほぼ同じであり、地球を強行発進してきたヤマトに月基地から、コスモタイガーに乗って、合流する。
第11番惑星での戦闘では、ナスカ艦隊の艦載機を次々と撃墜し、惑星上にいた空間騎兵隊を援護した。ここでヤマトに乗り組んでくる空間騎兵隊の斎藤始とは、気風の違いから、しばしば衝突する事になる。ガミラスの放った宇宙ボタル(実は機械を腐食させる宇宙バクテリア)のため、分析ロボットアナライザーが暴れだした時には、(なぜかアナライザーは山口百恵の「プレイバックPART2」を歌っていた)加藤は、艦医の佐渡酒造を呼んで来てしまうが、佐渡から「こりゃ真田君の領分じゃわい。」と言われてしまう、オッチョコチョイな一面も見せる。
白色彗星帝国のバルゼー艦隊と地球艦隊との土星空域海戦では、敵機動部隊奇襲のため、ヤマトは、空母3隻とともに、別行動を取るが、ここでコスモタイガー隊は、加藤隊と山本隊に分かれ、敵機動艦隊の索敵を行った。アナライザーを同乗させた真田機が、衛星フェーベの付近に隠れていた敵機動艦隊を発見すると、いち早く攻撃に向かい、後に古代のコスモゼロに率いられて来援した爆撃機隊とともに、敵空母群を壊滅させる戦果をあげた。また、その直後の地球艦隊主力とバルゼー艦隊との決戦では、バルゼー艦隊を空襲し、地球艦隊を援護している。
都市帝国戦では、映画版とほぼ同じく、加藤は、古代、真田、斎藤らと、内部へ侵入し、滑走路付近で帝国軍の兵士と銃撃戦を行う。テレビ版では、動力炉には斎藤のみが残り、古代が足を負傷した真田とともに、戻ってくるが、加藤は銃撃で援護しながら、古代と真田を後部座席に座らせ、自らの操縦で発進し、都市帝国を脱出する。ただ、発進前「乗ったか?発進するぞ。」と言った時の加藤の表情は、既に重傷を負っていたことを窺わせるものであった。
ヤマトに着いた直後、古代は「よく頑張った。」と声をかけるが、加藤は、操縦席に突っ伏し、微笑を浮かべながら息絶えていたのである。その強い使命感から、重傷をおして操縦桿を握り、古代と真田をヤマトに送り届けた安堵とともに、息を引き取ったものと思われる。映画版と少し設定は違うものの、加藤三郎と言う人物が持つ、強い使命感、勇敢さを示したシーンである。
「新たなる旅立ち」では、「英雄の丘」の沖田の記念像の前に、白色彗星戦で戦死した徳川彦左衛門、斎藤始、山本明と並び、加藤三郎の記念像(レリーフ)も建立されていた。また、映画版「ヤマトよ永遠に」のクロージングで、新しい銀河を背景に、過去の戦没者たちが次々と現われるシーンがあるが、加藤は、その時、斎藤始と肩を組みながら登場してくる。あの世では、彼らは無二の親友になっているのだろう。