北海道旧土人保護法
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通称・略称 | なし |
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法令番号 | 明治32年法律第27号 |
効力 | 廃止 |
種類 | 法律 |
主な内容 | アイヌ民族保護策など |
関連法令 | アイヌ文化振興法 |
条文リンク | なし |
北海道旧土人保護法(ほっかいどうきゅうどじんほごほう;1899年(明治32年)3月1日法律第27号)は、廃止された日本の法律である。1997年(平成9年)7月1日、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律(1997年(平成9年)法律第52号、アイヌ文化振興法)の施行に伴い廃止された(附則2条)。同時に、旭川市旧土人保護地処分法(1934年(昭和9年)法律第9号)も廃止された。
目次 |
[編集] 功罪
この法律は、貧困にあえぐ「旧土人」(アイヌ)に対する保護を名目として作られたもので、土地、医薬品、埋葬料、授業料の供与などが定められていた。
しかし、「アイヌ保護」を名目に、
- 農業用地の供与を名目に共有地を奪った。
- 「供与」地も開墾に失敗すると没収された。北海道は農業に適していないので結果として殆どの土地が没収されることになる。
- 狩猟民族であるアイヌを農業に従事させようとした。
- アイヌの文化を「遅れたもの」と看做し同化を強要した。
ものであったとして廃止された現在でも批判が強い。
また、土地の給与による農耕民化・同化の推進、共同的土地所有の近代的土地所有への強制的転化という点で、アメリカ・インディアンに対するドーズ法との類似点が著しい。
[編集] 法文
ウィキソースにも原文はあるが、外字が多く読み難いので、以下に法文を置く。
[編集] 北海道旧土人保護法(明治32年法律第27号)
- 第一条 北海道旧土人ニシテ農業ニ従事スル者又ハ従事セムト欲スル者ニハ一戸ニ付土地一万五千坪以内ヲ限リ無償下付スルコトヲ得
- 第二条 前条ニ依リ下付シタル土地ノ所有権ハ左ノ制限ニ従フヘキモノトス
- 一 相続ニ依ルノ外譲渡スコトヲ得ス
- 二 質権抵当地上権又ハ永小作権ヲ設定スルコトヲ得ス
- 三 北海道庁長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ地役権ヲ設定スルコトヲ得ス
- 四 留置権先取特権ノ目的トナルコトナシ
- 前条ニ依リ下付シタル土地ハ下付ノ年ヨリ起算シテ三十箇年ノ後ニ非サレハ地租及地方税ヲ課セス又登録税ヲ徴収セス
- 旧土人ニ於テ従前ヨリ所有シタル土地ハ北海道庁長官ノ許可ヲ得ルニ非サレハ相続ニ因ルノ外之ヲ譲渡シ又ハ第一項第二及第三ニ掲ケタル物権ヲ設定スルコトヲ得ス
- 第三条 第一条ニ依リ下付シタル土地ニシテ其ノ下付ノ年ヨリ起算シテ十五箇年ヲ経ルモ尚開墾セサル部分ハ之ヲ没収ス
- 第四条 北海道旧土人ニシテ貧困ナル者ニハ農具及種子ヲ給スルコトヲ得
- 第五条 北海道旧土人ニシテ疾病ニ罹リ自費治療スルコト能ハサル者ニハ薬価ヲ給スルコトヲ得
- 第六条 北海道旧土人ニシテ疾病、不具、老衰又ハ幼少ノ為自活スルコト能ハサル者ハ従来ノ成規ニ依リ救助スルノ外仍之ヲ救助シ救助中死亡シタルトキハ埋葬料ヲ給スルコトヲ得
- 第七条 北海道旧土人ノ貧困ナル者ノ子弟ニシテ就学スル者ニハ授業料ヲ給スルコトヲ得
- 第八条 第四条乃至第七条ニ要スル費用ハ北海道旧土人共有財産ノ収益ヲ以テ之ニ充ツ若シ不足アルトキハ国庫ヨリ之ヲ支出ス
- 第九条 北海道旧土人ノ部落ヲ為シタル場所ニハ国庫ノ費用ヲ以テ小学校ヲ設クルコトヲ得
- 第十条 北海道庁長官ハ北海道旧土人共有財産ヲ管理スルコトヲ得
- 北海道庁長官ハ内務大臣ノ認可ヲ経テ共有者ノ利益ノ為ニ共有財産ノ処分ヲ為シ又必要ト認ムルトキハ其ノ分割ヲ拒ムコトヲ得
- 北海道庁長官ノ管理スル共有財産ハ北海道庁長官之ヲ指定ス
- 第十一条 北海道庁長官ハ北海道旧土人保護ニ関シテ警察令ヲ発シ之ニ二円以上二十五円以下ノ罰金若ハ十一日以上二十五日以下ノ禁錮ノ罰則ヲ附スルコトヲ得
- 附 則
- 第十二条 此ノ法律ハ明治三十二年四月一日ヨリ施行ス
- 第十三条 此ノ法律ノ施行ニ関スル細則ハ内務大臣之ヲ定ム
[編集] 旭川市旧土人保護地処分法(昭和9年法律第9号)
- 第一条 北海道庁長官ハ旧土人保護ノ目的ヲ以テ旭川市ニ貸付シタル同市所在ノ土地ヲ内務大臣及大蔵大臣ノ認可ヲ経テ特別ノ縁故アル旧土人ニ単独所有財産又ハ共有財産トシテ無償下付スルコトヲ得
- 第二条 北海道旧土人保護法第二条第一項ノ規定ハ前条ノ規定ニ依リ下付シタル土地ニ付之ヲ準用ス
- 第三条 第一条ノ規定ニ依ル土地所有権ノ取得ニ関シテハ登録税ヲ課セズ又地方税ヲ課スルコトヲ得ズ
- 附 則
- 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム