印泥
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印泥(いんでい)とは、印を押すときにつける印肉や朱肉のことで、中国での呼び名。
[編集] 特徴
スタンプの朱肉などとは違い、深みがあり、かつ鮮やかな朱色を出す印肉で、書画を楽しむ人々には欠かせない。
原料は水銀であり、これが印泥の朱色を生み出している。水銀は、液体で天然のものも存在するが、多くは、丹砂(たんしゃ)と呼ばれる鉱物を製錬して生産される。この「丹砂」は、細かい粉状のときは朱色、結晶では暗赤色を示す。朱は、水銀と硫黄を焼きしめて作られ、その混ぜ具合、焼き具合によって、出来上がる色に違いがおこる。この朱の色調の違いによって、印泥もさまざまな名が存在する。
印泥は、ほぼ中国で作られているが、中でも中国の西泠印社という老舗や、上海石泉というメーカーが有名。
[編集] 印泥の種類
- 「箭鏃朱砂印泥」 黄色っぽく鮮やか・高級
- 「光明朱砂印泥」 赤みを増したもの
- 「美麗朱砂印泥」 さらに濃い赤
[編集] 保存方法
印泥は冬は固く、夏は軟らかくなりやすく、湿度や乾燥に弱い、ひじょうにデリケートな性質を持っている。このため、湿気や乾燥の気になる場所には、置かないよう保存には注意をはらう必要がある。
また、放っておくと朱と油が分離し、油が上部に浮上してしまい、その状態で印を押すと、紙の裏面に油が染み出てしまうこともあるため、ヘラでよくかき混ぜてから使用する。いつまでも色沢を損ねないように、使った後は必ず木箱に戻し、塵、埃の侵入を防がねばならない。