古紙
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古紙(こし)とは、一度使われた紙のことである。主に、リサイクルされるための新聞紙、雑誌、板紙(いわゆる段ボール)などをいう。古紙は、リサイクルの優等生ともいわれ、古くから回収、再生利用する業態が成立してきた。1990年代には古紙の価格が暴落し、リサイクルが機能しなくなった時期もあったが、2000年代に入ると中国における紙(特に電気製品の梱包材としての板紙)の需要が急激に高まり、対中輸出されるにようになると一転、価格の上昇が見られ始めた。このため、古紙の奪い合いが自治体等で行う収集システムと、自治体指定外の回収業者との間で生じ、回収場所からの「抜き取り」を行った業者を自治体が占有離脱物横領として告発するケースもある。
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[編集] ちり紙交換
ちり紙交換(ちりがみこうかん)とは、家庭で要らなくなった紙を、ちり紙やトイレットペーパーと交換することを通じて、回収すること。チリ交(ちりこう)とも略される。
ちり紙交換は、回収を行う業者にとっては、集めた紙を売ることによって利益を得ることができ、家庭では不要なものから有用なものを得ることができ、また、回収した紙はリサイクルされるので環境にも良い。ということで理想的な古紙回収方法であった。しかしながら、古紙の回収価格の下落とともにあまり見られなくなった。
実際の回収は、ちり紙交換車と呼ばれる車が、拡声器を使って交換を呼びかけながら、住宅地をゆっくりと廻ることで行われた。住民は、呼びかけを聞くと、業者を呼び止めて、普段から溜めておいた新聞紙や雑誌を差し出した。拡声器で流れる呼びかけは、「まいどーおなじみ、ちり紙交換車でございます。古新聞、古雑誌、ぼろ切れ、ダンボールなどがございましたら・・・」というものであり、良く知られていた。
[編集] 古紙の種類
古紙にはいくつかの種類があるが、国あるいは地域、業界によって呼び名が異なる。国際商取引ではアメリカの古紙基準が用いられることが多いが、日本の古紙はさらに細かく分類されており、日本の基準も国際的に認知度が高い。
- OCC:いわゆる段ボール古紙。Old Corrugated Cartonの略。日本ではさらにN-OCCとO-OCCに分ける。O-OCCは家庭、スーパーなどから回収される古紙で、品質はN-OCCより劣るとされるが、供給量は一番多い。
- ONP:いわゆる新聞古紙。Old News Printの略。日本ではN-ONPとO-ONPに分ける。O-ONPは家庭から回収される新聞古紙で、織り込みチラシなどの夾雑物があるためN-ONPよりも品質が低いとされる。
- MIX:米国基準では無分別の古紙。日本では無分別の古紙が存在しないため、特に雑誌古紙を指す。
[編集] 古紙の取引
古紙は製紙原料として取引される。一般に国際取引ではトン当たりの価格で取引されるが、日本ではキログラムあたりの価格で取引される。 国際取引に際しては、バーゼル条約の規制対象であるため、各国の検疫当局発行の証明書が必要になる。
[編集] 古紙の品質
古紙の品質の良し悪しはパルプ化効率の良し悪しである。米国の紙はバージンパルプの比率が高く、古紙もパルプ化効率が良い。日本の紙は原料の6割が古紙であるため再資源としてのパルプ化効率は低い。このことから日本の古紙は長く国際市場で二級品として扱われ、輸出されることは少なかった。しかし、2000年以降世界的な古紙需要の逼迫から日本古紙も海外で使用される機会が増えた。それまで日本古紙を敬遠していた海外製紙メーカーも、日本古紙は徹底した分別が行われていることを実感し、雑物の混入が極端に少ないことを好感し近年は日本の一大輸出産業となっている。
[編集] 古紙の最大供給源
- 毎日、全国で印刷される新聞の1~2割程度(1,000万部程度)は、新聞販売店のノルマ維持のために刷られる押し紙と呼ばれる新聞であり、実際には販売されずに全量がリサイクルに回される現状にある(新聞販売店の項を参照)。これは日本の新聞紙の回収率が、他国に比べて高い理由の一つにもなっており、手放しで評価できない一因にもなっている。