国民年金
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国民年金(こくみんねんきん)制度とは、国民年金法の規定に基づき、「国民年金制度は、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的」として制定された年金制度である。
目次 |
[編集] 憲法の規定
「憲法」の第25条第2項に「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と述べられている。 社会保障の充実である。
[編集] 国民年金法
国民年金法(1959年(昭和34年)4月16日法律第141号)
第1条 (国民年金制度の目的)
- 国民年金制度は、日本国憲法第25条第2項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。
第2条(国民年金の給付)
- 国民年金は、前条の目的を達成するため、国民の老齢、障害又は死亡に関して必要な給付を行うものとする。
第7条(被保険者の資格)
- 第1号被保険者
- 日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者。
- 第2・3号被保険者に該当しない者。
- 第2号被保険者
- 被用者年金各法の被保険者、組合員又は加入者。
- 第3号被保険者
- 2号被保険者の被扶養配偶者である20歳以上60歳未満の者。
[編集] 国民年金の受給条件
[編集] 老齢基礎年金
- 65歳以上の者で保険料納付期間と保険料免除期間が25年以上の者に支給
- 当分の間60歳以上で保険料納付期間と保険料免除期間が25年以上であれば繰上げ受給が可能であるが、年金額は減額される。
- 年額 満額792,100円(2006年度) 保険料納付期間等に応じて減額される
- 付加年金を納付していた者については年額納付していた月に200円を乗じて得た額を加算して支給
[編集] 障害基礎年金
詳細は障害年金に
- 被保険者(20歳~59歳)の者及び日本国内に住所を有し被保険者であった60~65歳以上であった者で政令で定める障害等級に該当する者(ただし初診日前の前々月までの被保険者期間において保険料納付期間と保険料免除期間が被保険者期間の3分の2に満たない場合は支給されない等要件が存在する)
- 1級の者は老齢基礎年金満額の1.25倍 2級の者は老齢基礎年金満額と同額
- さらに18歳になって最初の3月末までの子、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子がある場合は、1人目・2人目 1人につき 年額 227,900円 、3人目から 1人につき 年額 75,900円 を加算
[編集] 遺族基礎年金
詳細は遺族年金に
- 被保険者等が死亡した場合で未婚で生計を同一にする18歳に達する日以後最初の3月31日までの間にある子(障害児を有する場合は20歳未満まで)を有する妻または子(妻がいないとき等のみ)に支給する
- 老齢基礎年金額満額と同額
- さらに妻に支給する場合、1人目・2人目 1人につき 年額 227,900円 、3人目から 1人につき 年額 75,900円 を加算
[編集] その他の給付
国民年金にしか加入していない者のみが対象
- 寡婦年金
- 死亡した日の前日までに、国民年金第1号被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間を合わせて25年以上ある夫が、年金を受けないで死亡した場合に、10年以上婚姻関係があり夫により生計を維持されていた妻に、60歳から65歳までの間老齢基礎年金額の4分の3を支給
- 死亡一時金
- 第1号被保険者として国民年金の保険料を36月以上納付した人が、年金を受けないで死亡した場合に、生計を同じくしていた遺族に保険料納付期間に応じて12万円から32万円(付加年金を36月以上納めたときは8500円加算)して支給
- その他、外国人向けの保険料納付済期間等が25年を満たすことができない者にたいする脱退一時金の制度が存在する
[編集] 国民年金法の改正
八十七条の改正
国民年金の各年度の保険料額(月額)は2005年度分を一万三千五百八十円とし、毎年度二百八十円ずつ引き上げる。2017年度以降は一万六千九百円とする。
附則
2015年6月までの措置として三十歳未満の国民年金加入者で、本人及び配偶者の所得が一定以下の場合は保険料納付を要しない。
2004年に国民年金法が改正された。昨今の老年人口増加に伴った年金支出の増大をカバーするために、国民年金の国庫負担割合を1/3から1/2へ引き上げるとともに、保険料を2017年までに段階的に引き上げること、厚生年金の受給開始時の給付を現役世代の50%を下限とすることなどが決定された。その一方で、障害年金や遺族年金制度、次世代育成支援の拡充など、社会福祉を充実させていくための策も盛り込まれている。
[編集] 保険料の強制徴収
全国各地の社会保険事務所は約500人の未納者に国民年金保険料の督促状を送付している。納付期限を2月27日としている。全国で最も未納率が高い沖縄県の社会保険事務所が全国に先駆けて国民保険料未納者9人の貯金を差し押さえ処分という強制徴収に着手した。以上のことを社会保険庁が発表した。強制的なやり方は、国民の生存権を守ることを目的とした年金制度に反するとの批判も多いが、それほどまでに年金制度に対する不信感が大きいものであるともいえる。
国民年金の保険料未納者の所得情報を市町村に提出することを社会保険庁が命じることができる制度が2004年10月から始まる。この制度の法案は「社会保険庁長官は、必要があると認められるときは、収入の状況に関する書類の提出を命じることができる」としている。もっとも、保険料の強制徴収は国税徴収法により行われるものであるから、規定を設けずとも未納者の所得情報を求めることは可能である。
[編集] 国民年金保険料の推移
改正年月 | 毎月の保険料 | 改正年月 | 毎月の保険料 | 改正年月 | 毎月の保険料 |
---|---|---|---|---|---|
1961年4月~ | 100円/150円 | 1984年4月~ | 6,220円 | 2005年4月~ | 13,580円 |
1967年1月~ | 200円/250円 | 1985年4月~ | 6,740円 | 2006年4月~ | 13,860円 |
1969年1月~ | 250円/300円 | 1986年4月~ | 7,100円 | 2007年4月~ | 14,100円 |
1970年7月~ | 450円 | 1987年4月~ | 7,400円 | 2008年4月~ | 14,420円×改定率 |
1972年7月~ | 550円 | 1988年4月~ | 7,700円 | 2009年4月~ | 14,700円×改定率 |
1974年1月~ | 900円 | 1989年4月~ | 8,000円 | 2010年4月~ | 14,980円×改定率 |
1975年1月~ | 1,100円 | 1990年4月~ | 8,400円 | 2011年4月~ | 15,260円×改定率 |
1976年4月~ | 1,400円 | 1991年4月~ | 9,000円 | 2012年4月~ | 15,540円×改定率 |
1977年4月~ | 2,200円 | 1992年4月~ | 9,700円 | 2013年4月~ | 15,820円×改定率 |
1978年4月~ | 2,730円 | 1993年4月~ | 10,500円 | 2014年4月~ | 16,100円×改定率 |
1979年4月~ | 3,300円 | 1994年4月~ | 11,100円 | 2015年4月~ | 16,380円×改定率 |
1980年4月~ | 3,770円 | 1995年4月~ | 11,700円 | 2016年4月~ | 16,660円×改定率 |
1981年4月~ | 4,500円 | 1996年4月~ | 12,300円 | 2017年4月~ | 16,900円×改定率 |
1982年4月~ | 5,220円 | 1997年4月~ | 12,800円 | ||
1983年4月~ | 5,830円 | 1998年4月~ | 13,300円 |
※改定率=物価や賃金の伸び率。
1999年から2004年までの5年間は、景気の悪さに配慮して、保険料の引き上げが凍結され、それがさらに財政の悪化に拍車をかけてしまった。 2004年改革では、保険料の値上げは2017年の16,900円×改定率で止まり、以後は改定率による変化のみになる、とされている。(以後、改革があれば、この限りではない)
2007年度(2007年4月~)については、14,100円になる模様。(14,140円×改定率0.997≒14,100円)このことにより、2008年度以降の改定(+280円/年)にも影響が出ることが想定されている。
[編集] 老齢年金支給額の推移
制度発足当初の国民年金の給付は、厚生年金と比べて遜色のないものであった。 1973年に年金額が物価に連動する「物価スライド」が導入された。 それまでは厚生年金が給付レベルを上げるのに呼応させて国民年金も同様に給付レベルを上げていたが、財政悪化を受けて1976年からは厚生年金とは無関係に国民年金独自で給付レベルを上げる様に改めた。 財政破綻を受けて、1986年に給付レベルを大幅に下げ、それまで「老後の生活の糧となる年金」だったものが「老後の生活の基礎のための年金」に性格を大きく変える事となった。 1986年大改革以後は、給付に関しては大きな改正がないまま現在に至っている。 2004年改革で「マクロ経済スライド」が導入され、将来は現在よりも給付レベルが少し下がる予定になっている。
改定年月 | 満額の年金額 | 改定年月 | 満額の年金額 |
---|---|---|---|
1961年 | 24,000円 | 1990年4月~ | 681,300円 |
1966年 | 60,000円 | 1991年4月~ | 702,000円 |
1969年 | 96,000円 | 1992年4月~ | 725,300円 |
1973年 | 240,000円 | 1993年4月~ | 737,300円 |
: | : | 1994年4月~ | 747,300円 |
1976年 | 390,000円 | 1994年10月~ | 780,000円 |
: | : | 1995年4月~ | 785,500円 |
1980年 | 504,000円 | 1998年4月~ | 799,500円 |
: | : | 1999年4月~ | 804,200円 |
1986年4月~ | 622,800円 | 2003年4月~ | 797,000円 |
1987年4月~ | 626,500円 | 2004年4月~ | 794,500円 |
1988年4月~ | 627,200円 | 2006年4月~ | 792,100円 |
1989年4月~ | 666,000円 |
2007年度(2007年4月~)については、スライド率+0.3%となる模様である。しかし、前述のとおり、従前からの累積されたかさ上げ1.7%が解消されていないため、給付額としては、改定されないことになる予定。 ただし、「特別障害給付金」については、給付ベースが2005年4月(制度開始時)であるため、+0.3%程度の額改定がある模様。
[編集] 世代による保険料と給付額の比率
厚生労働省が2004年に公表した推計によると、世代別の保険料負担と年金給付額は次の通りとなる。
2005年の年齢 | 保険料(万円) | 給付(万円) | 倍率 |
---|---|---|---|
1935年生まれ | 230 | 1,300 | 5.8 |
1945年生まれ | 390 | 1,300 | 3.4 |
1955年生まれ | 600 | 1,400 | 2.3 |
1965年生まれ | 830 | 1,600 | 1.9 |
1975年生まれ | 1,000 | 1,800 | 1.8 |
1985年生まれ | 1,200 | 2,100 | 1.7 |
1995年生まれ | 1,400 | 2,300 | 1.7 |
2005年生まれ | 1,600 | 2,600 | 1.7 |
[編集] 年金種類・年金積立金等
確定拠出年金 | 農業者年金 | 確定拠出年金 | 確定拠出年金 | 確定拠出年金 | 確定拠出年金 | 石炭鉱業年金基金 | 確定拠出年金 | 職域加算 | ||||||
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厚生年金基金 | 確定給付企業年金 | |||||||||||||
国民年金基金 | 厚生年金 | 私学共済年金 | 共済年金 | |||||||||||
国民年金(基礎年金) |
上記に含まれない公的年金として、恩給・老齢福祉年金が存在する。
年度 | 加入者数 | 受給者数 | 年金積立金 |
---|---|---|---|
1992年度末 | 5兆8521億円 | ||
1993年度末 | 3077万7000人 | 841万5000人 | |
2000年度末 | 10兆5454億円 | ||
2001年度末 | 889万4500人 | 9兆7348億円 | |
2002年度末 |