外部性
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外部性(がいぶせい externality)とは、ある経済主体の意思決定(行為・経済活動)が他の経済主体に経済機構(市場)を通さずに及ぼす影響のことである。一般に経済主体間の関係は合意、特に売買契約によって結ばれているが、こうした合意がなくても発生する影響を指す。
外部性には大きく分けて正の外部性(外部経済)と負の外部性(外部不経済)がある。
正の外部性(外部経済)は他の経済主体にとって有利に働く外部性で、例として庭の花壇がある。花壇に対して対価を払わなくてもその花を(ある種の制限はあるにせよ)愛でること、すなわち便益を得ることが可能である。通例、このような財の生産は過少となる。
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負の外部性(外部不経済)は逆に他の経済主体にとって不利に働く外部性で、公害はその典型である。通常効用を低める財(バッズ Bads:ごみなどが例)は対価をもらわないと受け入れられないが、大気汚染などの公害は対価を受け取ることなしに伝播される。通例、このような財の生産は過剰となる。
[編集] 外部不経済の問題点と内部化
- 外部不経済と内部化
ある漁業者がいて、漁場のそばに工場が建設された場合を例に挙げる。漁業者は工場の廃液により1000万円の被害をこうむり、工場が廃液を浄化する設備は500万円とする。経済全体としては、設備を設置したほうが利益が上がるが、漁業者と工場所有者が別人である場合、そうした配慮は働かない。また、設備を設置しない場合、工場は低コストで商品を生産し低価格で供給できる。経済全体としては工場の供給量は廃液汚染という不経済性を考慮しない過剰供給と言うことになる。これは経済全体の効率性が損なわれた状況である。
そこで、政府が工場から廃液税を500万円取り、浄化設備を設置したとしよう。このときに工場は高コストとなり価格を引き上げざるを得ない。こうして工場の供給量は廃液汚染を考慮した最適な状態となる。これが内部化である。
- 実際の内部化
産業革命以降の産業発展と経済合理性の追求から、環境問題をはじめとする外部不経済は甚大な被害を及ぼすようになった。これらの被害に対して、企業への非難が集まった。こうしたなかで、外部不経済を積極的に内部化しようとする試みが始まった。
地球温暖化の原因と目される二酸化炭素の排出権取引はその代表である。二酸化炭素を排出する企業は、その排出のコストを含めることになるため、全体として最適化が図られる。また、環境税などの取り組みも内部化にあたる。内部化を進めることで経済的に考慮された資源配分と生産がおこなわれるようになる。環境を破壊するほどの力を持つ市場メカニズムや経済合理性を逆に利用するため、外部不経済を道徳や自主規制で解決しようとする試みよりも有力である。
[編集] コースの定理
たとえば加害者である企業の生産活動から発生した公害が周辺住民に被害を与えているとき、加害者に課税して被害者に補償を与えるピグー税に対しては、加害者に権利(所有権)がある場合、被害者側から加害者に補償を与えて生産量を減らすことによっても、外部不経済における過剰生産を避けることができ、少なくとも資源配分 の上では同様の最適が達成されることは、コースの定理といわれる。
[編集] 関連項目