学校の階段
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『学校の階段』(がっこうのかいだん)は、
文学 |
ポータル |
各国の文学 記事総覧 |
出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
『学校の階段』(がっこうのかいだん)は櫂末高彰/著、甘福あまね/イラストのライトノベルのシリーズ。ファミ通文庫刊。第7回えんため大賞優秀賞受賞作。
実写による映画化が決定し、2007年のゴールデンウィークに公開予定(監督:佐々木浩久、主演:黒川芽以)。 映画のストーリーは原作1巻がベースだが、主人公が女性になっているなど若干の改変が見られる。
目次 |
[編集] ストーリー
これといった明確な目標も目的も無く、ただ漫然と学校生活を送っていた少年・神庭幸宏はある日、学校の階段にて、突然に背中から風を感じる。振り返った彼の目に飛び込んできたのは、静まりかけた放課後の空気をかき乱し、階段を全力疾走する小柄な女子生徒だった。これが学校における校内を疾走する迷惑集団、「階段部」との出会いとなる。
強引で無茶苦茶な自分論理を展開する、小学生にすら見える小柄な少女・九重ゆうこに、幸宏は半ば無理やり階段部に入部させられる。幸宏はなんとか様子見のための仮入部という形に収め、このまま仮入部期間を流してしまおうと決意する。クラスメイトや他の生徒からの風評のかなり悪い非公認部活動、「階段部」。「こんな部活などには関わらないほうが良い」。そう述懐しつつも、彼の中には何かの違和感が残った。
仮入部期間を終え、普通の学校生活に戻る幸宏。「もうあんな変な集団にかかわることもないだろう」。せいせいして下校しようとしたその時、彼の前に「階段」が現われた。なんの変哲も無い、学校の階段。大きくなる違和感。それが最高調に達しようとした時。
ふいに 背後から 風が吹いた。
駆け去っていく足音、ふたたび静寂が戻る校舎。しかし、彼の心臓はうるさいほど早鐘を打っていた。幸宏は気付いた、自分の中にあった違和感に。瞬間、彼は駆け出した。自分の中で大きくなっていた想い、それは……
「とにかく階段を走りたい!!」
[編集] 階段部
ひたすら「階段を走る」という行為に青春の全てを賭けた者達の集う、天栗浜(てんぐりはま)高校の非公認部活動。他の生徒からは非公認どころか「ただの迷惑集団」と認識され、冷たい向かい風が吹き付けるが、彼らの疾走を阻む事は誰にも出来ない。部の基本活動は、まず謝罪訓練から。廊下で生徒にぶつかりかけた際の対処の予行演習なのだが、1列に並び「すいません!!」と大声で連発する集団は、端から見たら危険なサークルにしか見えない。
次にこのトンチキな部活名の由来にもなっている「階段レース」である。急な山間に建築されため、第一校舎における4階が、第2校舎の1階になっているなどのまるで迷路の如き構造になっている天栗浜高校にて、階段だけでなく廊下・屋上・グラウンド、果ては壁・プール施設の飛び込み台のような危険なショートカットコースから、いまだ誰も実行してはいないが職員室内を全力疾走で突っ切るなどの「学校全体を使った危険ではた迷惑な障害物競走」なのである。「障害物」には当然「人」も含まれ、常時・下校時間・部活動の活動場所・特別行事の際における生徒総量の下調べ等が重要視され、刻々と変化する障害物の状況によって最適なコースを選び出さなければいけないため、「ただ足が速いだけ」では決して勝ち抜けることの出来ない、「体技」と「頭脳」の両方が要求される異種競技である。
彼らがなぜ階段を走るのかは、誰にも説明できない。聞かれれば彼らは皆「走り出したら、止められないから」と答えるだろう。
シンボルマークはハムスター。彼らは檻の中のハムスターのように校内をグルグル回り続け、いつまでたってもたどり着かないゴールを目指して走り続ける。
[編集] 登場人物
[編集] 階段部部員
- 神庭 幸宏(かんば ゆきひろ)
- 本作の主人公。天栗浜高校1年生。両親を亡くし、伯父夫婦にひきとられたのだが伯父夫婦が海外出張となったため、従姉である神庭姉妹と暮らすことになる。従姉には異様にモテる(ただし外見上は希春以外の3人からはいじめられていると見えなくもない)為、井筒にエロゲ設定と揶揄されたりする。九重からは「缶バッチ」のあだ名で呼ばれる。本人は自覚していないが意外と天然である。しかしながら、その天然のゆえに、無意識に正解を引き当てる、とは刈谷の評。階段部のジャージのハムスターのマークは各個人ごとに絵柄が異なり、所有者をモチーフにしている。彼のジャージの絵柄は「弁当片手に走るハムスター」。希春が彼に持たせる『LOVE弁』を茶化したものである。
- これといって飛びぬけたポテンシャルを持たない代わりに、安定した能力を見せるオールラウンダー。だが、最適ではあるがいささか無謀なコースを選んだり、予知能力にすら見える鋭い「勘」による危機回避を見せたりと、能力的に謎が多い。二つ名はいまだ無い。
- 九重 ゆうこ(ここのえ ゆうこ)
- 階段部の部長であり創部者。天栗浜高校3年生。元陸上部の障害物競走のエース。非常に強引で我侭。アグレッシブな言動に周りは振り回され通しである。状況を見ずに突っ走りすぎてピンチを招くことも多く、部員達からツッコミの集中砲火を浴びる事も。人にニックネームを本人の許可無く付けては、ブーイング。しかしネーミングセンスはあまり無い。背が伸びず、ハードル走の成績が後輩に追い抜かれてしまい、落ち込んでいたところを健吾に、階段を走るという彼女にとって意味不明な行為によって励まされた。結果、彼女は自信を取り戻したものの、陸上部に戻ることは無く、刈谷を引きずり込んで『階段部』という怪しさ全開の非公認部活動を創設する結果になってしまった。刈谷以外の部員は(程度や状況の差はあれ)彼女が強引に引っ張ってきたものである。部のマークのハムスターは彼女のデザイン。ジャージの絵柄は「小柄で元気一杯のハムスター」。
- ハードル走を突き詰めていた陸上時代の経験から、ステップのテンポを活かした短距離での高能率加速と、ハードルまでの距離の見切りをいかした最短歩数での無駄の無い走りを見せ、廊下などの直線コースでは敵無し。そのため、「静かなる弾丸」という二つ名を持つ。
- 刈谷 健吾(かりや けんご)
- 引き締まった肉体と精神の、砂漠の鷹のような鋭い気配を漂わせる青年。しかし、もっぱら暴走しやすいゆうこのツッコミ兼ストッパーになってしまっている。天栗浜高校3年生。階段部の副部長であり、元執行部部員。現在も遊佐の陰謀で頻繁に執行部の手伝いに駆り出されている。「階段を走る」という行為に最初に取り付かれた人物で、執行部時代に放課後の校内の戸締りの役を自ら買って出て、夜な夜な階段を疾走していた。ゆうこが『階段部』を創設したことから、彼自身、「これ以外に自分の進むべき道は無い」と確信するに至る。ジャージの絵柄は「少し尖った感じのハムスター」。口癖は「まだ、先はある」。
- 全体的に高いレベルで能力が安定しており、階段部最強の走り手。階段の踊り場を、高速で鋭角に一歩で曲がりきる走法を得意とする。これは彼自身の「体技」だけでなく、踊り場の歪み・傾き・凹み等を階段ごとに熟知していなければならず、幸宏が1度だけ成功させた事があるものの、実質この技を完全に使用できるのは彼だけである。ゆえに、ゆうこから与えられた二つ名は「必殺Vターン」だが、彼自身はあまり気に入ってないようである。なお未完成ながら、前側を取られてVターンを封じられた場合、踊り場にて相手を追い抜く「全速疾走の状態から、直角にベクトルを流しきる屈折走法」、Lターンを見せた。彼の走りに、まだ果ては見えない。
- 天ヶ崎 泉(あまがさき いずみ)
- 長い艶やかな黒髪に長身の天栗浜高校2年生。毎年、この高校には3人の美人が入学してくるという「三女神の伝説」により『雷の女神様』に選ばれている。元はテニスにのめりこんでいたが、自分の高貴な「家柄」が、そのままテニスの「実力」になってしまう事を感じ取り、彼女はラケットを捨てる。大富豪の令嬢であるがそれを鼻にもかけず、むしろ自分の家柄を指す「天ヶ崎」の名を嫌い、「いずみ」と部員から名前で呼んでもらうことを望む。ジャージの絵柄は「ヒマワリの種を抱えたハムスター」。
- 能力は、「体技」は平均よりいくらか上程度。「頭脳」も飛びぬけたところは無く、ごくごく普通な走り手だが、廊下全体の状況を把握して、下り階段にて「壁や天窓を蹴って高速で飛び降りる降下走法」を得意とし、Vターンですら追いつけず下り階段では独壇場。飛び降りる際に黒髪が翼の如く広がることから、「黒翼の天使」という二つ名を持つ。本人は「女神」よりもこちらの名の方を気に入っている様子。
- 三枝 宗司(さえぐさ そうじ)
- メガネをかけた、理知的な雰囲気の天栗浜高校2年生。いつも日の当たらないところで、ノートパソコンをカタカタさせている根暗な性格だが、以外に後輩の面倒見がよく、ジョークへのノリもよく、ゆうこのアグレッシブな言動を押しとどめようとする幸宏に、思わぬ方向から援護射撃を突き刺す事も。「サエさん」というあだ名でゆうこに呼ばれ、後に「サエぽん」に昇格(?)する。今では丸くなったが、もともとは自己至上主義的、過剰懐疑的な脳内毒舌家で、自分以外の人間をすべからず見下していた。過去、健吾に階段レースで敗北し、その敗北を返上するために階段部に入った。しかし、徐々に階段部に自分の居場所を見出し始め、自分と他の部員の精神的美醜の落差に苦悩し、階段部からの退部の為に部員全員に挑んだ経緯を持つ。ジャージの絵柄は「ノートPCを手にした、メガネをかけたハムスター」。
- 体技は平均以上でまとまっているが、元々インドアな生活を送っていた為、成長には限界がある。よって彼はクラッカー時代に培った情報処理能力を生かすスタイルを選択し、膨大な校内の情報を収集・記憶する事により、瞬時にリアルタイムでの最適なラインの検索が可能である。それゆえに、ゆうこから授かった二つ名は「天才ラインメーカー」。彼もこの二つ名を変だと評した。
- 井筒 研(いづつ けん)
- 二つ名は無し。天栗浜高校1年生。神庭とは良く張り合うライバルである(彼が一方的に突っかかる事の方が多い)。体力はそこそこだが経験不足は否めない。九重ゆうこにほとんど信仰めいた好意を抱いているが、ジャージの絵柄のせいで告白を「誤爆」してしまい、窮地に陥る事に。性格的にはおおむね単純熱血バカで、特にゆうこが絡むと周りが目に入らずに暴走する傾向がある。
[編集] 神庭姉妹
- 希春(きはる)
- 26歳。幸宏に異常なほどの好意をもっており、その過剰とも言える愛情表現は幸宏に迷惑がられてさえいるが全く気にする様子は無い。彼を「ゆーちゃん」と呼び、隙あらばスキンシップを図ろうとする。恋人ではなく「妻です」と本気で叫んだりする。料理の腕のなかなかのもので幸宏に毎日『LOVE弁』を作っている。体育祭の時は大きな五段重につめた弁当を「全部、ゆーちゃんの」と言って、妹たち(特に千秋)から冷たい視線を浴びていた。
- 一方で嫉妬深い面もあり、幸宏の「浮気」を心配している。小夏の天栗浜高校への赴任が決まった時は取り乱し、嫉妬のあまり生の人参を丸ごと弁当に詰め込んだ(しかし小夏は平然と人参を丸かじりしていた)。
- 小夏(こなつ)
- 数学担当の新米教師で「数学は芸術」と言い切る。2巻で天栗浜高校に産休代行の臨時教師として赴任。学生からの評判はなかなか良い。普段は素っ気ないが本気の時はかなり饒舌になる。ホワイトボードやプラカードを常備しているようで、話す代わりにそれらに書いた文字で返事をすることも多い(悪口を書いて本人の後ろで掲げたりもする)。親父ギャグをいったり、返事もYESかNOかよくわからないものであったり、掴みようがない人物である。かつてはかなり派手にグレており、高校時代は「桔梗院の夜叉姫」と呼ばれ、伝説の不良として恐れられていた。本気の時は当時の長ラン(黄金昇り龍の刺繍入り)を着て木刀を振り回す。キレると一番怖い。
- 千秋(ちあき)
- 大学1年生。身も心も体育会系で、幸宏に抱きつい(て首を絞め)たりして、神庭姉妹の中ではスキンシップが一番激しい。天栗浜高校の合宿にバスケ部の臨時コーチとして参加した際は、鬼コーチぶりをいかんなく発揮した為、幸宏が部員たちに逆恨みされる事になった。
- 美冬(みふゆ)
- 天栗浜高校2年生。テニス部所属。非常に仏頂面で突慳貪(つっけんどん)だが、感情を表に出すのが得意ではないだけであり悪意はなく、むしろ心優しい性格である(しかし彼女の幸宏への言動の数々は全て彼を端的に罵倒するものばかりであり、その内心を量るのはほとんど不可能に近い)。「女神委員会」から『氷の女神様』に選ばれている。
[編集] 生徒会
- 遊佐 由宇一(ゆさ ゆういち)
- 天栗浜高校3年生。生徒会長。囲碁部員(部員は彼1人)。飄々としてつかみ所の無い印象だが実は腹黒く、その地位を利用して数々の陰謀を巡らし、階段部を翻弄する。ゆうこを挑発して不利な条件を押し付けるのを得意としている。刈谷を「刈やん」と呼ぶ。彼のギャグは一般生徒に評判が悪い。
- 刈谷いわく「平穏よりも騒乱を好む」「凪いでいる水面に波風を立て、穏やかな空に嵐を起こす。秩序よりも混沌。整然よりも坩堝」「最も生徒会長にしてはいけない男」だが「外面は本当に良い」。
- 中村 ちづる(なかむら ちづる)
- 天栗浜高校3年生。生徒会執行部部長。融通の利かない典型的な「委員長」タイプ。眼鏡着用。刈谷健吾に密かに好意を持っているが、内心ですらもその事を認めようとしない。刈谷を奪った階段部を目の仇としており、特に九重ゆうことは犬猿の仲。しかし、卑怯な陰謀で彼らを陥れる事には抵抗もある様子。
[編集] その他
- 見城 遥(けんじょう はるか)
- 天栗浜高校2年生。女子バスケット部部長。三枝宗司に好意を持っている。「女神委員会」から『炎の女神様』に選ばれている。
- 二ノ宮 京子(にのみや きょうこ)
- 天栗浜高校2年生。女子陸上部部員。通称「ニノ」。陸上部時代のゆうこの後輩で、一番懐いていたが…。
- 三島 真琴(みしま まこと)
- 天栗浜高校1年生。女子陸上部部員。幸宏のクラスメイト。姐御肌で仕切るタイプ。陸上部と階段部の「対決」以来、何かと幸宏に絡んでくる。凪原からは名前の真ん中を取って「ママちゃん」と呼ばれる。
- 凪原 ちえ(なぎはら ちえ)
- 天栗浜高校1年生。映画研究部部員。通称「ナギナギ」。内気なメガネ少女。『雷の女神様』のファンで、ドキュメンタリー映画を撮るという口実で階段部(というより天ヶ崎)を取材していたが…。
- 合田(ごうだ)
- 天栗浜高校3年生。筋肉研究部部長。ゆうこと同じクラスらしい。部員一同、筋肉を鍛え、誇示する事に生き甲斐を見出しており、彼はその筆頭である。彼らに勧誘されかけたところをゆうこに救われた(?)のが、幸宏が階段部に引きずり込まれる事になったそもそものきっかけである。しかし彼らは幸宏を気に入っている模様。基本的にはコミックリリーフだが、レースの最中などにちょくちょく登場して幸宏を手助けする。
[編集] 既刊一覧
- 学校の階段 ISBN 4-7577-2598-1 (発売日:2006年01月30日)
- 学校の階段2 ISBN 4-7577-2802-6 (発売日:2006年05月29日)
- 学校の階段3 ISBN 4-7577-2936-7 (発売日:2006年09月30日)
- 学校の階段4 ISBN 978-4-7577-3331-2 (発売日:2007年01月29日)
[編集] 外部リンク
カテゴリ: 文学関連のスタブ | 映画関連のスタブ項目 | ファミ通文庫 | 学園小説