屍鬼
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屍鬼(しき)小野不由美作の小説である。単行本(上・下巻)は、1998年に新潮社から出版された。文庫本(全五巻)は、2002年に新潮文庫から出版された。
著者のホラー小説の真骨頂とも言える、どうしようもなく「こちら側」に所属しながらも自らの居場所に違和感を感じ、「あちら側」への恋焦がれるような憧れを持っている者と、「こちら側」とは相容れない本質を持ちながらも「こちら側」に居場所を作らざる得ない立場に置かれた者の心理的交流と葛藤が主軸となっている。その中で「こちら側」と相容れない者が居場所を作ろうとする足掻きと、「あちら側」からの干渉を排除しようとする「こちら側」の世界の反撃が凄惨な悲劇を引き起こしていく。こうした構図は、『魔性の子』や『東亰異聞』といった著者の他のホラー小説とも共通したテーマを扱っているとも言えるが、カタストロフを通じて、「あちら側」に恋焦がれる者が静謐な居場所を見出していく過程をつぶさに描いている点が、この作品の特徴と言えよう。
上下巻合わせて1000ページを超えるボリュームを誇る本作は後の様々なホラー作品(特にSIRENは本作がSIRENの原作と間違えられるほど影響を受けている)に影響を与えた。作者本人が後書きで明かしている通り、本作自身もまた、スティーブン・キングの「呪われた町」へのオマージュである。
また、京極夏彦が本作のパロディとして「脂鬼」を発表している。
[編集] あらすじ
周りから隔絶された集落、外場村。昔から変わることの無いこの村では、今でも土葬の習慣が根強く残っていた。
平和だった村に最初に起こった小さな変化。それはどこからか移築された古い洋館だった。
なかなか越して来ない洋館の住人。ある日壊されていた村中の神像。次々と増える死因不明の死者。一体この村に何が起こったのだろうか。
ひと夏の間に突如村を襲った悲劇の結末は・・・。