戦う民主主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
戦う民主主義(たたかうみんしゅしゅぎ、独:Streitbare Demokratie)とは、ドイツなどに見られる民主主義の理念の一つ。一般に、民主主義を否定することを認めない民主主義と考えられている。
目次 |
[編集] 概要
民主主義とは国民の意思決定によって国政を運営する政治体制である。そして、その体制を維持するためには国民に、言論・表現の自由を保障することが不可欠である。
しかし、国民が自ら自由を放擲し、民主主義を廃止する意思決定を民主主義的手続きを経て行った場合はどうなるのか。この場合、「民主主義体制の自殺」ということになり、「独裁政権」などが成立する虞がある。民主主義の理念そのものの中には、これに対する自明の一つの解はなく、民主主義を否定する議論をも認める場合がむしろ一般的である。
しかし、民主主義体制そのものに価値を認めるならば「民主主義体制を覆すほどの自由を制限し、国民に民主主義体制の維持を誓約させる」という安全策をとることが考えられる。このように、民主主義に沿った手続きで民主主義体制を覆そうというものから民主主義体制を守る、という考えが「戦う民主主義」である。
[編集] ドイツにおける例
「戦う民主主義」を標榜している国の代表がドイツ連邦共和国である。ドイツはナチスが民主的手続きで独裁体制を布いた過去の反省から「戦う民主主義」を国是としている。
具体的には、
- 全国民に民主主義体制を謳った憲法への擁護義務を課す(憲法忠誠)
- 憲法忠誠によって、言論、表現、教授、結社の自由を制限すること
などである。
[編集] ドイツ基本法
ドイツ基本法では第5条3項から、第18条、第21条までの「基本権」の項目に「戦う民主主義」の提要である「国民の憲法擁護義務」が規定されている。