放射線取扱主任者
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放射線取扱主任者(ほうしゃせんとりあつかいしゅにんしゃ)免状は、文部科学大臣が許可する国家資格である。財団法人原子力安全技術センターが試験を行う。
放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(以下、放射線障害防止法)に基づき、放射性同位元素あるいは放射線発生装置を取り扱う場合に、放射線障害の防止について監督を行う者のことである。それによると「使用者、販売業者、賃貸業者及び廃棄業者は、放射線障害の防止について監督を行わせるため、その取扱区分により放射線取扱主任者免状を有する者のうちから放射線取扱主任者として1事業所につき1名以上選任し、届出しなければならない。」と明記されている。
障害防止法でいう放射線とは、電磁波又は粒子線のうち、直接又は間接的に空気を電離する能力をもつもので
- アルファ線、重陽子線、陽子線その他の重荷電粒子線及びベータ線
- 中性子線
- ガンマ線及び特性エックス線(軌道電子捕獲に伴って発生する特性エックス線に限る)
- 1メガ電子ボルト以上のエネルギーを有する電子線及びエックス線
をいう。
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[編集] 区分
- 第1種放射線取扱主任者 - 放射線発生装置、非密封の放射性同位元素、施設・定期検査対象の大量の密封放射性同位元素を扱う許可使用者又は許可廃棄業者。
- 第2種放射線取扱主任者 - 施設・定期検査対象外の密封放射性同位元素のみを扱う許可使用者。
- 第3種放射線取扱主任者 - 文部科学大臣が定める下限数量の1000倍までの量の密封放射性同位元素を扱う届出使用者、届出販売業者又は届出賃貸業者。
[編集] 主務官庁
[編集] 受験資格
- 誰でも受けられる。第1種、第2種とも試験に合格すると合格証が交付される。試験合格のみでは主任者に選任できないので注意が必要。
- 放射線障害防止法の規定により18歳未満の者は放射性同位元素等を取り扱うことが出来ないため、18歳未満の者は試験に合格出来るが指定講習を受講出来ないと推測される。
[編集] 試験
[編集] 試験科目
- 第1種
- 物理学、化学及び生物学のうち放射線に関するもの
- 物理学のうち放射線に関するもの
- 化学のうち放射線に関するもの
- 放射性同位元素及び放射線発生装置による放射線障害の防止に関する管理技術並びに放射線の測定に関する技術
- 生物学のうち放射線に関するもの
- 放射性同位元素及び放射線発生装置による放射線障害の防止に関する法令
- 第2種
- 放射性同位元素による放射線障害の防止に関する管理技術(放射線の測定に関する技術並びに物理学、化学及び生物学のうち、放射線に関するものを含む)
- 放射性同位元素による放射線障害の防止に関する法令
[編集] 講習
- 放射線取扱主任者試験に合格して免状を取得する場合、文部科学大臣の指定する講習を受講し修了試験に合格しなければならない。指定講習は第1種が5日間、第2種は3日間。
- 第3種には放射線取扱主任者試験が無く、講習と修了試験のみで免状の取得が可能。
- 講習終了時に20問の試験があり、これに合格した者が免状の申請ができる。
- 第1種は原子力研究開発機構・日本アイソトープ協会、第2種は原子力安全技術センター、第3種は日本アイソトープ協会・原子力安全技術センターが講習を行っている。
[編集] 講習科目
- 第1種
- 放射線安全管理の基本
- 放射性同位元素の運搬及び保持
- 装備機器及び発生装置の構造と安全取扱い法
- 密封小線源の安全取扱い
- 非密封放射性物質の安全取扱い
- 汚染除去法と放射性廃棄物処理
- 異常時の対策と措置
- 放射線施設の計画及び設計
- 放射線施設の保守管理
- 非密封放射性物質の安全取扱い(実習)
- モニタ類の校正と空間線量率の測定(実習)
- 水中放射性物質濃度の測定(実習)
- 空気中放射性物質濃度の測定(実習)
- 表面汚染密度の測定(実習)
- 修了試験
- 第2種
- 放射線測定
- 放射線測定実習
- 放射線安全管理の基本
- 密封放射性同位元素取扱いの安全管理
- 密封放射性同位元素取扱いの実習
- 事故及び危険時の対策と措置
- 放射線施設の安全管理(解説と演習)
- 実習レポート講評
- 修了試験
- 第3種
- 放射線及び放射性同位元素の概論
- 放射線の基本的な安全管理に関する課目(放射線安全管理の基本、事故及び危険時の対策と措置)
- 放射線の人体に与える影響に関する課目
- 放射線障害の防止に関する法令
- 放射線の量の測定に関する項目
- 放射線の量の測定及びその実務に関する課目
- レポート講評
- 修了試験