文化観光部2000年式
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文化観光部2000年式(국어의 로마자 표기법)は現在、大韓民国で用いられている韓国語(ハングル)のラテン文字転写に関する規則である。2000年7月1日に"국어의 로마자 표기법"として韓国文化観光部(日本の「省」にあたる)長官が告示した。なお、直訳すると「国語のローマ字表記法」である。
2000年の告示以来、韓国では人名などの例外を除き、原則としてこの表記法に従った表記がなされている。なお、北朝鮮ではマッキューン=ライシャワー式が公式に用いられている。
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[編集] この表記法の特徴
韓国では以前からさまざまな転写方式が試みられていたが、この表記法に改められる直前は1987年からマッキューン=ライシャワー式に近い表記法が用いられてきた。この表記法はアルファベットに加え、記号(アポストロフィー等)を用いるため、外国人の学習者・旅行者が戸惑うことが多く、また印刷が煩雑であった。そのため、正確な運用がされず1987年以前に用いられていた表記法と混用されていた。このため1987年以前に用いられていた方式を基に定められたのがこの表記法である。
以前の方式と比べ、単純化されたのが大きな特徴である。また、地名にも徹底して適用することによって「統一」への強い意気込みを示している。第二都市である釜山の表記を"Pusan"から"Busan"へ改めたのはその象徴であろう。
この公示が出される以前に定着していた商標までは改められず、SamsungやHyundaiといったこの表記法を逸脱した運用は解消される見込みはない。また、人名までは徹底されず同じ名前であっても個々人で表記が異なるという問題は解消されていない。
しかし、単純化の副作用として、無気音をG, B, Jのような有声音字で表記されてしまうことや、本来、朝鮮語話者は区別しないが、shi(X-SAMPA:/Si/)と発音される"시"がsiと表記されてしまうことによって外国人が戸惑うといった問題点がある。また、中国語のローマ字表記法においても、ピンイン表記は欧米人に理解できないという批判が長く続いたが、現在では英語でもピンイン表記が採用されている。このような問題は、別言語を転写する場合には必ず起こりうることであって、韓国語のローマ字表記が完全に定着するためにはさらに時日が必要だろう。
[編集] 表記の一覧
基本的に以下の表に従い、ハングル字母をラテン文字に置き換える。
[編集] 母音
ハングル字母 | ラテン文字 |
---|---|
ㅏ | a |
ㅓ | eo |
ㅗ | o |
ㅜ | u |
ㅡ | eu |
ㅣ | i |
ㅐ | ae |
ㅔ | e |
ㅚ | oe |
ㅟ | wi |
ハングル字母 | ラテン文字 |
---|---|
ㅑ | ya |
ㅕ | yeo |
ㅛ | yo |
ㅠ | yu |
ㅒ | yae |
ㅖ | ye |
ㅘ | wa |
ㅙ | wae |
ㅝ | wo |
ㅞ | we |
ㅢ | ui |
[編集] 子音
子音はその働きによってアルファベットが異なる場合がある。
ハングル字母 | ラテン文字 (初声の時/終声で母音が後に続く時) |
ラテン文字 (終声で母音が後に続かない時) |
---|---|---|
ㄱ | g | k |
ㄲ | kk | k |
ㅋ | k | k |
ㄷ | d | t |
ㄸ | tt | - |
ㅌ | t | t |
ㅂ | b | p |
ㅃ | pp | - |
ㅍ | p | p |
ハングル字母 | ラテン文字 (初声の時/終声で母音が後に続く時) |
ラテン文字 (終声で母音が後に続かない時) |
---|---|---|
ㅈ | j | t |
ㅉ | jj | - |
ㅊ | ch | t |
ハングル字母 | ラテン文字 (初声の時/終声で母音が後に続く時) |
ラテン文字 (終声で母音が後に続かない時) |
---|---|---|
ㅅ | s | t |
ㅆ | ss | t |
ㅎ | h | h |
ハングル字母 | ラテン文字 (初音のとき) |
ラテン文字 (終声で母音が後に続く時) |
ラテン文字 (終声で母音が後に続かない時) |
---|---|---|---|
ㄴ | n | n | n |
ㅁ | m | m | m |
ㅇ | (なし) | ng | ng |
ハングル字母 | ラテン文字 (初声の時/終声で母音が後に続く時) |
ラテン文字 (終声で母音が後に続かない時) |
---|---|---|
ㄹ | r | l |
[編集] 音韻変化への対応
この記事では"국어의 로마자 표기법"が大韓民国の著作権法7条に定められた「保護されない著作物」の"憲法・法律・条約・命令・条例及び規則"にあたると見なし、引用している。