星室庁
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星室庁(The Court of Star Chamber)とは、テューダー朝〜ステュアート朝前期のイングランドにおいて、国王大権のもと開かれた裁判所である。イングランド絶対王政の象徴のひとつとなった。国王大権のもと裁かれるため、貴族を牽制したり取り締まることができ、迅速に裁判を処理できた。裁判所の名は、ウェストミンスター宮殿内の「星の間(Star Chamber)」で行われたことに由来する。
「星の間」はエドワード3世時代に作られ、そこで王政庁や枢密院などが置かれて国政を行い、民衆の苦情などを処理していた。行政機構が成長・複雑化するとしだいに行政/司法が分離され、15世紀にはもっぱら刑事裁判を行う場となっていた。1487年、ヘンリー7世が薔薇戦争の戦後処理を行う場として活用し、ヘンリー8世時代には大法官のトマス・ウルジーらが星室庁の権限を強化した。改革の結果、以下のような特徴をもつ裁判所となり、国王の支配を維持する重要な機関となった。
- あらゆる事件を扱うことができた。特にコモン・ロー(一般の法律)では扱えない事件には星室庁が対応した。
- 死刑以外のあらゆる刑(むち打ち、手足切断、投獄、罰金など)を課することができた。
- コモン・ロー裁判所(王座裁判所など)と異なり、陪審は不要であった。
- 貴族の専横などを裁くことができる唯一の裁判所であった。
これらの特徴から星室庁裁判所は人気が高かったが、チャールズ1世親政時代(1628年-1640年、「専制の11年 Eleven Years' Tyrrany」とよばれる)には国王の意にしたがわせる手段として使われた。特にチャールズが星室庁を使って気に入らない報道を規制するという事態に及び、星室庁の人気は地に墜ちた。結果として長期議会によって1641年廃止され、イングランド絶対王政は大きな支柱を失った。現在も"Star Chamber"という言葉は「密室での決定」「恣意的な判断」という意味を含んでいる。