時うどん
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「時うどん(ときうどん)」は古典落語の演目。上方落語の一つで、江戸落語の「時そば」の原話になったとされるが、噺の内容はかなり異なっており、別の演目とするべきであろう。ただし、「時そば」の方がマスメディアを通じて広く知られるようになったため、関西の若手落語家の中には、「時そば」とほとんど同じ内容で演ずる者もいる。
[編集] あらすじ
知恵の働く兄貴分と少し足りない弟分が、夜道で屋台のうどん屋を見つけ、うどんを食べようとする。代金は16文だが、弟分は8文しか持ち合わせが無く、何だ、それだけか、と怒鳴った兄貴分も7文しか無かった。それでもかまわず兄貴分はうどんを注文し、うどん屋が「うど~んエー、そーばやうど~ん」と歌うのを、やかましいと文句を言ったり、そうこうするうちうどんができると、兄貴分は自分だけうどんを食べ、弟分が後ろから遠慮がちにつついても(うどんをくれ、という合図)、「待て待て」と言うだけ。ようやく、「そんなにこのうどん食いたいか」と渡してくれたどんぶりにはわずかなうどんが残っているだけ。勘定を払う時になると、「銭が細かいから数えながら渡す」と言って、「一、二、・・・七、八、今何時や」。うどん屋が「九つです」と言うと十、十一、・・・十六。歩きながら、1文足りなかったはずなのに、と不思議がる弟分だが、兄貴分からからくりを教えてもらうと大喜びで、「わいも明日やってみよう」。
翌日、早くやってみたくて明るいうちから町に出た弟分は、昨夜とは別の屋台を見つけた。何もかも昨夜と同じにやりたくてたまらないので、うどん屋に、「うど~んエー、そーばやうど~ん」と歌え、と言っておきながら、うどん屋がそのとおりにすると、やかましい、と怒鳴って「そんなら歌わせなさんな」と文句を言われ、うどんを食べながら、「待て待て」とか「そんなにこのうどん食いたいか」と1人言うので、「あんた、何か悪い霊でも付いてまんのか」とうどん屋に気味悪がられたり、最後には、「何や、これだけしか残っとらん」とつぶやいて「あんたが食べなはったんや」とあきれられる。それでも、勘定を払う段になると大喜びで、一、二・・・七、八、今何時や、と聞いて、「四つです」。五、六、七、八、・・・というオチで終わる。