暖かさの指数
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暖かさの指数(あたたかさのしすう)および寒さの指数(さむさのしすう)とは、植生の変化と気温との相関関係を表すための指標である。生態学者の吉良竜夫が提唱したもので、温量指数とも言われる。
一般的に、植物の生育には月平均気温で摂氏5度以上が必要とされる。このことから、温帯における植生の分布には、それより高温になる期間とその温度の高さがどの程度になるかが大きく影響すると考えられるので、それを定量化することを試みたものである。
具体的には、ある地域の各月の平均気温を取り、月平均気温5度を基準として、各月の平均気温の5度との差を累積する。平均気温が5度より高い月の累積が暖かさの指数であり、5度より低い月の累積が寒さの指数である。(5度以上と5度以下を相殺するのではなく、別々に累積する) たとえば、北海道の旭川の気候データを元に暖かさの指数、寒さの指数を計算すると、この表のようになる。
月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 合計 |
平均気温 | -7.8 | -7.2 | -2.4 | 5.2 | 11.7 | 16.5 | 20.5 | 21.1 | 15.6 | 8.8 | 2.0 | -4.1 | |
暖かさの指数 | 0.2 | 6.7 | 11.5 | 15.5 | 16.1 | 10.6 | 3.8 | 64.4 | |||||
寒さの指数 | 11.8 | 11.2 | 7.4 | 3.0 | 9.1 | 42.5 |
その他、日本の主な地点における暖かさの指数と寒さの指数は以下のとおりとなる。
- 那覇 暖かさの指数212.4・寒さの指数0
- 東京 暖かさの指数131.3・寒さの指数0
- 長野 暖かさの指数95.6・寒さの指数15.7
- 青森 暖かさの指数80.0・寒さの指数19.2
- 根室 暖かさの指数46.1・寒さの指数32.7
- 富士山頂 暖かさの指数1.0・寒さの指数138.0
暖かさの指数の一定の範囲内に、特定の植生が成立することが知られている。一方、寒さの指数は、温暖地の植生には関係があるが、寒冷地の植生とは大きな関連が認められない。
- 熱帯多雨林 暖かさの指数240以上
- 亜熱帯多雨林 暖かさの指数180~240
- 照葉樹林 暖かさの指数180~85かつ寒さの指数10(または15)以下
- 中間温帯林 暖かさの指数は照葉樹林と同じだが寒さの指数は10(または15)以上
- 落葉広葉樹林 暖かさの指数85~45
- 針広混交林(北海道) 暖かさの指数60~45
- 亜高山帯針葉樹林 暖かさの指数45~15
- 高山帯 暖かさの指数15以下
なお、本来は降水量の大小も植生と大きな関係があるはずであるが、日本ではどこでも充分な降水量があるため、条件の差としては意味をもたない。
[編集] 有効性
温量指数は以下のような場合において有効である。
[編集] 暖かさの指数
例) 群集における温度の差による生態的地位の解析
[編集] 寒さの指数
例) 暖地に分布する植物の分布北限や寒冷地に分布する植物の分布南限の解析