減災
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減災(げんさい)とは、災害時において発生し得る被害を最小化するための取り組みである。防災が被害を出さない取り組みであるのに対して、減災とはあらかじめ被害の発生を想定した上で、その被害を低減させていこうとするものである。
[編集] 概要
そもそも、減災とは阪神・淡路大震災後に生まれた概念である。それまでの防災の概念は、被害を出さないための工夫として検討されてきた。しかし、震災後、行政や災害研究者を通じて被害の発生は食い止め難いことがわかった。そこで、ある程度被害の発生を想定した上で、予防を検討していくことが必要であるという問題意識から減災ということが唱えられるようになった。
それまでの防災は、あくまで被害を出さないために万遍なくコストをかける、いわば保険のような発想で行われていた。しかし、いざ災害が発生してみるとその地域の防災力を上回る被害が起こることがあり、被害を完全に防ぐことは不可能であり、また、発生した被害をすべて食い止めようと思えば、いくらコストをかけても間に合わないことが明白となった。
そこで、如何なる対策をとったとしても被害は生ずるという認識のもと、災害時において被害が最も生ずる課題に対して、限られた予算や資源を集中的にかけることで、結果的に被害の最小化を図ろうという発想が生まれたのである。これが減災の発想である。
ただ、災害における地域の弱点を発見し、対策を講ずるとしても行政単独で対策をとるだけでは、減災は達せられない。それは、災害時に最も被害を蒙るのは他でもない、地域に住む市民自身であるからである。それだけに近年は行政と市民が協働で地域の防災力を向上させようという防災まちづくり事業が多くの市町村において取り組まれるようになりつつあり、減災は防災まちづくりにおけるひとつの戦略として浸透しつつある。