温泉権
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温泉権(おんせんけん)とは、土地に存在する温泉の利用権のことをいい、土地の所有権とは別に取引することができる。
温泉権は、慣習による物権的権利であるが、日本は物権法定主義を採っているため、厳密には債権であって、信義則による保護によって物権的性質を示しているとされる。温泉権は、温泉が存在する土地の所有者に対して永年利用を認めさせる債権であるから、土地の所有者がこれを取り除くためには、永年の利用に相当する補償が必要となる。
土地の利用に関する債権は、土地所有者が変われば消滅するのが原則である。しかし、温泉権の存在を知りつつ土地を所有した者が温泉権の消滅を主張することは、温泉権を持つ者に多大な損害を与える反面、土地所有者側が利益を得るものであるから、信義則に反するとして認められない。もっとも、新しい土地所有者が十分な補償を支払えば、信義則による保護は外れるから、温泉権は消滅する。ただし、温泉を汲み上げる装置等の費用が膨大である場合は、温泉権消滅の主張は、権利の乱用として認められない。
温泉権は、明認方法の設置がなかれば善意の第三者に対抗できない。明認方法の設置とは、温泉が存在する土地に立て看板等を設けることで温泉権の存在を示すことである。