準用・類推適用
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準用(じゅんよう)とは、法律上の用語、概念であり、ある事柄に対する規定を、別の類似した事柄についても適用し、かつ適用されることを国民に明示するための立法技術をいう。
類推適用(るいすいてきよう)とは、法律上の用語、概念であり、ある事柄に対する規定を、別の類似した事柄について適用することである。そのための解釈技術を類推解釈(るいすいかいしゃく)とよぶ。
両者は異なる性質が多い概念であるが、もたらす効果が類似することもあり、法学上まとめて解説されることが多く、本稿もそれに倣う。
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[編集] 共通点
ある事柄についての規定を別の類似した事柄についても適用し、具体的に妥当な結果をもたらすことができる。
[編集] 相違点
刑事法においては、準用は立法技術なので、その適用が予め国民に明示されているといえるので罪刑法定主義と抵触することはないが、類推適用はそういった事前の明示を欠くので罪刑法定主義に抵触し、許されないとされている(類推適用の禁止)。
[編集] 備考
準用には、法典の条文を節約できる効果があり、手形法の約束手形に関する規定や、刑事訴訟法の捜査に関する規定などは多くは準用によって規定が代用されている。ただし、準用の仕方によっては適用関係が不鮮明になりがちで、実際にかつての商法は条文の準用が多く、読みづらいと会社実務で不評であったため、2005年制定の会社法においては条文の準用は控えめにされたが、その結果条文は膨大な量になった。
[編集] 豆知識
例として、法廷において、当該訴訟が、第三者がからむものや代理などで法律関係が複雑になっている場合、保護すべき者(本人、相手方、又は第三者など)をいかなる法律を以って保護すべきか考えられる場合に、民法第93条(心裡留保)などを類推適用して解すべき判断がなされている。 これは、判例として、なるべく信義則をもって判断することを避けるためである。 民法は作られてから100年ほどたっているわけですが、100年前の人間が現代起こりうる法律関係を把握していたとは考え難い。よって、条文にない訴訟事件も多い。その場合にあまりにも信義則を濫用してしまうと、法秩序が乱れ、安全で自由な取引が制限されてしまう。そこで、裁判所としてはなるべく条文にこぎつけたい意図があるため、この「類推適用」が大変役立っているのである。 ただし、この類推適用は、見方によっては一方を保護するための単なるこじ付けに見えなくもなく、方々からの批判の的にもなりやすいことも事実である。