発煙硫酸
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発煙硫酸(はつえんりゅうさん、Oleum)は濃硫酸に過剰の三酸化硫黄を吸収させたものである。発煙硫酸は三酸化硫黄の蒸気を徐々に放出しており、湿った空気中で白煙と鼻を突く刺激臭を発する。試薬、工業用ともに、三酸化硫黄含有率が30%、60%等の製品がある。一般的には濃硫酸よりも高価である。英語名は、ラテン語で『油』を意味する。
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[編集] 性質
濃硫酸も粘稠な液体であるが、発煙硫酸はそれ以上に粘稠である。高含有率の物はイオン性液体となる為、水あめ状の粘度がある。
発煙硫酸中では次のような平衡が存在している。
また、硫酸と三酸化硫黄とが等モル混合している発煙硫酸(およそ45%w/w)の主成分は二硫酸(ピロ硫酸)H2S2O7であることが知られている。
[編集] 反応
三酸化硫黄の求電子性を利用して、発煙硫酸はスルホン化に使用される。また、三酸化硫黄は系中の水と速やかに反応して硫酸となる為、脱水作用を期待してニトロ化や硝酸エステルの生成に使用する硫硝混酸を作成する際に使用されることもある。
[編集] 製法
硫酸は SO2→SO3→H2SO4 の段階を経て製造される(記事 硫酸に詳しい)が、気体であるSO3の溶媒として硫酸が使用される。したがって、発煙硫酸は硫酸の中間生成物として生産されている。