社会的入院
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入院は本来、病状が継続的な看護または医学的管理を要するために医療機関に入ることである。しかし、介護を要する老人を自宅で面倒がみられないために入院させたままになっている状態が各地でみられ、社会的入院 (しゃかいてきにゅういん)として問題化している。
社会的入院の問題点はまず、医療費の増大が挙げられる。日本の年間医療費は平成14年度で28.5兆円に達しており、社会の高齢化とともにさらなる増大は避けられないとみられている。社会的入院は健康保険が利用できるため入院者の家族にとって経済的な負担は比較的小さく、あまり抵抗なく利用されがちであるが、総額としての医療費にはそのまま跳ね返る。
また一部の医療機関は、社会的入院者はこれといって手間もかからず入院費収入は確実に見込めることから積極的に受け入れることもあり、抑制されないままでいた。
入院者本人に対する問題もある。ベッドに臥床したままで過ごすことの多い病院では、高齢者は急激に身体機能が低下する。筋力低下、拘縮、痴呆などの合併は寝たきりを確実なものにし、自宅での介護をより困難にしてしまうのである。
こうした事態に対して、傷病の治療は医療機関で、要介護状態の介護は福祉で、という考え方から介護保険制度が施行された。また、医療機関に対しては入院が長期に及ぶと診療報酬を減額することで長期入院の抑制が図られた。介護保険制度は一定の効果を挙げ始めているが、長期入院に関しては関連病院の間で定期的に患者を転院させるなどの抜け穴がつかれている。